荒船部屋
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イブは結局、哲次の家にお邪魔した。混む前にケーキを買おうと帰る前に寄ったが、結局どこのケーキ屋も混んでいて、恥ずかしがりながら2人で並んだ。ショーケースを前にすると選べなくて、
「ね、ねぇどれがいい? どれが美味しいかな?」
と聞けば、真っ赤な顔して
「なんでもいいから早く選べ!」
と大きい声で言われるのでこっちも頬が熱かった。クリスマスプレゼントを買ってなかったこともあったので、ケーキは私からご馳走させてもらった。ケーキを受け取ると、
「お前絶対ひっくり返すから」
と箱を持ってくれた。けど、わりと哲次もふらふらしてるというか、腕を振るので、心配だった。
「哲次、ケーキ、危ない」
「ん、ああ」
忘れるくらいなら私持つのに。そう言っても渡してはくれなかった。ディナーはなにか作って欲しいというので、
「パスタとスープくらいしか私作れないよ?」
と言った。それでも、
「それでいい。それがいい」
と言われたので、好きではないが料理することになった。材料も一緒に買って。最後にTSUTAYAに寄りDVD選んで、結局哲次の家にもうあるそうなので、そのまま店を出た。街はイルミネーションが点灯し始めて、カップルや家路を急ぐ親御さんで溢れてきた。
「イルミネーション、見てから帰る?」
「……いや。早く帰る」
手を繋がれて、哲次の家へ引っ張られる。そのまま従って連れていかれた。
「お邪魔しまーす」
「……ただいまでいいだろ」
聞こえないフリをして、そのまま部屋に上がる。ケーキと材料を冷蔵庫に締まってひと息吐く。
「よし。映画見る?」
「その前にちょっと」
こっち来い、と手招きされる。傍に行けば、ぐいっと力強く手を引かれた。
「わっ」
「…………」
まるで私の存在を確かめるように、身体を撫で回す。身じろぎするが、抱きしめられているので離れられない。
「哲次、苦しい」
少し力が緩めば、今度は口を塞がれた。じっとり舐め回すようなキスで酸欠を起こす。ぐっと肩口を押せばようやくやめてくれた。
「急に、びっくり、する」
「……これでも外では我慢したからな」
熱い視線に耐えきれなくなって、胸に顔をうずめた。お構いなしに哲次は私の髪を弄り、首元に顔を埋め匂いを嗅ぐ。
「ん、やあ」
「本当に嫌か?」
「…………いや!」
意地を張ればくつくつと笑われる。頭を撫でられ、
「そうか、悪かった!」
と額にキスを落とした。
「もう! もう!」
「悪かったって。もうちょい我慢するから」
哲次は無意識なのか舌舐めずりをした。それを見てしまって、どうしたって体温は上がる。
「……早く映画見よう」
「そうだな? 俺が我慢できてるうちにな?」
からかうので思いっきり背中をはたいた。恥ずかしくて恥ずかしくて。哲次はこの上なく楽しそうに笑う。DVDをセットすると、当然のように私を膝に乗せた。私の頭の上に顎を乗せて、背中にぴったりとくっついて。
「重い、暑い」
「こんくらい我慢しろ」
手もしっかりと包み込まれて、上機嫌な哲次の鼻唄が聞こえる。こうなってくると、私は恥ずかしくなって素直に甘えられない。幸せなのには、違いないけれど。
映画を見終わった。途中涙してしまって目をこすれば、ぽんぽんとあやすように頭を撫でられた。何度見ても、この映画は切なくていい。
「…………」
「なんだよ?」
後ろを見上げれば、哲次と目が合う。そのまま、体勢を変えて哲次にぎゅっと抱きついた。胸に擦りよれば、閉じ込めるように抱きしめ返される。しばらく、黙ってそうしていた。
「…………お腹すいた」
「くくっ、そうだな」
笑を噛み殺されて、ぱっと解放される。
「パスタ作ってくれんだろ? 待ってる」
「うん、作る」
立ち上がり、キッチンに向かい合う。トマトペーストの缶詰を使った簡単なパスタ。アサリを酒蒸しにして、トマトペーストとセロリとマッシュルームを放り込んで、味を整えて。それと同時進行でパスタ麺を茹で、カボチャのスープも作る。
「おい、ちょっとそのままこっち向け」
「??」
振り向けば、パシャッとスマホのカメラのシャッター音がする。
「!? 何撮ってんの!?」
「別にー。珍しいから記念写真」
「恥ずかしいから消してよ!」
「嫌なこった。ほら、麺伸びるぞ?」
ニヤニヤ笑われて、キッチンから離れるわけもいかずにあたふたした。それを後ろから覗き込まれて、思わずフライパンをひっくり返しそうになる。
「っぶね!」
「もー! だから離れててよ! 邪魔しないで!」
「ごめん、悪かった」
頭を撫でられて、てっぺんにキスされる。勘弁してほしい。元から料理慣れてないんだから。火傷でもしたらどうしてくれるんだ。
「思ったより要領よくやんだな」
「まあ、食べられるものは作れるし……」
「流石。お見事」
「食べてから言って」
お皿によそって、配膳する。スプーンとフォーク、グラスには一応買ったシャンメリー。乾杯となると、またお互いに照れて。控えめにグラスをくっつけた。
「「メリークリスマス」」
シャンメリーに口をつけて、冷めないうちにパスタを口に運ぶ。一口食べると、哲次はペースをあげてがっついた。
「どう? 美味しい?」
「ん、美味い!」
ぐっと突き出された親指にほっとする。
「え、美味い。美味くね? すっげえ美味いけど」
「そんな? よかった!」
「想像以上だな、うん」
それからは黙々と食べるので、私も黙って口を動かした。失敗しなくてよかったーと安心していたら。
「あのさ、その」
「??」
話しかけられて顔を見れば、ふっと視線を逸らされる。
「俺、お前が作る飯なら毎日食べたいんだけど、考えてみねぇ?」
「え、え」
急なキラーフレーズに頭がショートする。いつだって君は極端でカッコつけだ。
「あ、いや、俺も作る。作るけど。あきが飯、俺だけのために作ってくんねぇかなって」
「……検討する」
「え、っと」
「検討する!!」
照れ隠しにぐっとシャンメリーを飲み干したら、むせた。咳き込む私の背中を、とんとんと優しく叩かれる。
「おい、大丈夫か?」
「ゴホッ、検討、する……」
もう一度そう告げれば、
「……おう、頼むわ」
とそれきり無言になってしまった。綺麗に食べられた空の食器を片付けて、その間に哲次がシャワー浴びて。入れ替わりで私もシャワー入って。上がれば、哲次はニュース番組を見ていた。
「寒いんだ、明日」
「みてぇだな」
自然に傍に寄り添って、肩にもたれていることに急に恥ずかしくなる。バッと離れようとすると、腕を掴まれた。
「哲次、」
「悪い、もういいよな?」
バチンっとテレビの電源が落とされて、あっという間にお姫様抱っこをされてしまう。ジタバタ暴れてもみるが、ちゅ、ちゅ、とキスを落とされる度に大人しくしてしまった。そのまま、そっと布団の上に降ろされる。
「ごめんな、愛してる」
余裕なく、ギラギラした瞳でそう告げられては、なにも抵抗は出来なかった。
結局、そのまま哲次の腕の中で眠りこけて、昼前まで目が覚めなかった。哲次は先に起きていて、枕元で本を読んでいた。
「てつじ、おはよう」
「ん、おはよう」
枕元にあるのが、ご本人だったので、
「哲次がプレゼント?」
と少し昨日の仕返しのつもりで聞いた。
「それでもいいぜ、俺は」
それなのに、平然とそんなことを言われるから、また黙ってしまった。くつくつとまた笑われる。
「笑わないでよお」
「笑ってんじゃない、可愛くてにやけてる」
「余計やめて」
くるりと背中を向けると、もう一度哲次は布団に入ってきた。抱きすくめられて、うなじにキス。
「こしょばい」
「なあ、プレゼントだけどさ」
2人で迎えた朝は、とびきりに哲次は機嫌がいい。ワクワクしている子供の声で、私に話しかける。
「俺、車の免許取った」
「え、いつ!?」
「お前が知らないうちに」
甘えるように、哲次はぐりぐりと頭をぶつける。本当に、哲次のやることは予想がつかない。
「だから、2人でどっか行こうな」
哲次とならどこでも行くと言ったのを思い出した。今度からは、哲次とどこにでも行けるんだ。
「絶対一番最初にあきを乗せるんだ。で、あきの好きなとこ連れてく」
「うん、哲次?」
「ん?」
「ありがとう、幸せ」
これ以上幸せなクリスマスを、私は知らないし知らなくていい。哲次といるのが私にとっては一番だ。
「ね、ねぇどれがいい? どれが美味しいかな?」
と聞けば、真っ赤な顔して
「なんでもいいから早く選べ!」
と大きい声で言われるのでこっちも頬が熱かった。クリスマスプレゼントを買ってなかったこともあったので、ケーキは私からご馳走させてもらった。ケーキを受け取ると、
「お前絶対ひっくり返すから」
と箱を持ってくれた。けど、わりと哲次もふらふらしてるというか、腕を振るので、心配だった。
「哲次、ケーキ、危ない」
「ん、ああ」
忘れるくらいなら私持つのに。そう言っても渡してはくれなかった。ディナーはなにか作って欲しいというので、
「パスタとスープくらいしか私作れないよ?」
と言った。それでも、
「それでいい。それがいい」
と言われたので、好きではないが料理することになった。材料も一緒に買って。最後にTSUTAYAに寄りDVD選んで、結局哲次の家にもうあるそうなので、そのまま店を出た。街はイルミネーションが点灯し始めて、カップルや家路を急ぐ親御さんで溢れてきた。
「イルミネーション、見てから帰る?」
「……いや。早く帰る」
手を繋がれて、哲次の家へ引っ張られる。そのまま従って連れていかれた。
「お邪魔しまーす」
「……ただいまでいいだろ」
聞こえないフリをして、そのまま部屋に上がる。ケーキと材料を冷蔵庫に締まってひと息吐く。
「よし。映画見る?」
「その前にちょっと」
こっち来い、と手招きされる。傍に行けば、ぐいっと力強く手を引かれた。
「わっ」
「…………」
まるで私の存在を確かめるように、身体を撫で回す。身じろぎするが、抱きしめられているので離れられない。
「哲次、苦しい」
少し力が緩めば、今度は口を塞がれた。じっとり舐め回すようなキスで酸欠を起こす。ぐっと肩口を押せばようやくやめてくれた。
「急に、びっくり、する」
「……これでも外では我慢したからな」
熱い視線に耐えきれなくなって、胸に顔をうずめた。お構いなしに哲次は私の髪を弄り、首元に顔を埋め匂いを嗅ぐ。
「ん、やあ」
「本当に嫌か?」
「…………いや!」
意地を張ればくつくつと笑われる。頭を撫でられ、
「そうか、悪かった!」
と額にキスを落とした。
「もう! もう!」
「悪かったって。もうちょい我慢するから」
哲次は無意識なのか舌舐めずりをした。それを見てしまって、どうしたって体温は上がる。
「……早く映画見よう」
「そうだな? 俺が我慢できてるうちにな?」
からかうので思いっきり背中をはたいた。恥ずかしくて恥ずかしくて。哲次はこの上なく楽しそうに笑う。DVDをセットすると、当然のように私を膝に乗せた。私の頭の上に顎を乗せて、背中にぴったりとくっついて。
「重い、暑い」
「こんくらい我慢しろ」
手もしっかりと包み込まれて、上機嫌な哲次の鼻唄が聞こえる。こうなってくると、私は恥ずかしくなって素直に甘えられない。幸せなのには、違いないけれど。
映画を見終わった。途中涙してしまって目をこすれば、ぽんぽんとあやすように頭を撫でられた。何度見ても、この映画は切なくていい。
「…………」
「なんだよ?」
後ろを見上げれば、哲次と目が合う。そのまま、体勢を変えて哲次にぎゅっと抱きついた。胸に擦りよれば、閉じ込めるように抱きしめ返される。しばらく、黙ってそうしていた。
「…………お腹すいた」
「くくっ、そうだな」
笑を噛み殺されて、ぱっと解放される。
「パスタ作ってくれんだろ? 待ってる」
「うん、作る」
立ち上がり、キッチンに向かい合う。トマトペーストの缶詰を使った簡単なパスタ。アサリを酒蒸しにして、トマトペーストとセロリとマッシュルームを放り込んで、味を整えて。それと同時進行でパスタ麺を茹で、カボチャのスープも作る。
「おい、ちょっとそのままこっち向け」
「??」
振り向けば、パシャッとスマホのカメラのシャッター音がする。
「!? 何撮ってんの!?」
「別にー。珍しいから記念写真」
「恥ずかしいから消してよ!」
「嫌なこった。ほら、麺伸びるぞ?」
ニヤニヤ笑われて、キッチンから離れるわけもいかずにあたふたした。それを後ろから覗き込まれて、思わずフライパンをひっくり返しそうになる。
「っぶね!」
「もー! だから離れててよ! 邪魔しないで!」
「ごめん、悪かった」
頭を撫でられて、てっぺんにキスされる。勘弁してほしい。元から料理慣れてないんだから。火傷でもしたらどうしてくれるんだ。
「思ったより要領よくやんだな」
「まあ、食べられるものは作れるし……」
「流石。お見事」
「食べてから言って」
お皿によそって、配膳する。スプーンとフォーク、グラスには一応買ったシャンメリー。乾杯となると、またお互いに照れて。控えめにグラスをくっつけた。
「「メリークリスマス」」
シャンメリーに口をつけて、冷めないうちにパスタを口に運ぶ。一口食べると、哲次はペースをあげてがっついた。
「どう? 美味しい?」
「ん、美味い!」
ぐっと突き出された親指にほっとする。
「え、美味い。美味くね? すっげえ美味いけど」
「そんな? よかった!」
「想像以上だな、うん」
それからは黙々と食べるので、私も黙って口を動かした。失敗しなくてよかったーと安心していたら。
「あのさ、その」
「??」
話しかけられて顔を見れば、ふっと視線を逸らされる。
「俺、お前が作る飯なら毎日食べたいんだけど、考えてみねぇ?」
「え、え」
急なキラーフレーズに頭がショートする。いつだって君は極端でカッコつけだ。
「あ、いや、俺も作る。作るけど。あきが飯、俺だけのために作ってくんねぇかなって」
「……検討する」
「え、っと」
「検討する!!」
照れ隠しにぐっとシャンメリーを飲み干したら、むせた。咳き込む私の背中を、とんとんと優しく叩かれる。
「おい、大丈夫か?」
「ゴホッ、検討、する……」
もう一度そう告げれば、
「……おう、頼むわ」
とそれきり無言になってしまった。綺麗に食べられた空の食器を片付けて、その間に哲次がシャワー浴びて。入れ替わりで私もシャワー入って。上がれば、哲次はニュース番組を見ていた。
「寒いんだ、明日」
「みてぇだな」
自然に傍に寄り添って、肩にもたれていることに急に恥ずかしくなる。バッと離れようとすると、腕を掴まれた。
「哲次、」
「悪い、もういいよな?」
バチンっとテレビの電源が落とされて、あっという間にお姫様抱っこをされてしまう。ジタバタ暴れてもみるが、ちゅ、ちゅ、とキスを落とされる度に大人しくしてしまった。そのまま、そっと布団の上に降ろされる。
「ごめんな、愛してる」
余裕なく、ギラギラした瞳でそう告げられては、なにも抵抗は出来なかった。
結局、そのまま哲次の腕の中で眠りこけて、昼前まで目が覚めなかった。哲次は先に起きていて、枕元で本を読んでいた。
「てつじ、おはよう」
「ん、おはよう」
枕元にあるのが、ご本人だったので、
「哲次がプレゼント?」
と少し昨日の仕返しのつもりで聞いた。
「それでもいいぜ、俺は」
それなのに、平然とそんなことを言われるから、また黙ってしまった。くつくつとまた笑われる。
「笑わないでよお」
「笑ってんじゃない、可愛くてにやけてる」
「余計やめて」
くるりと背中を向けると、もう一度哲次は布団に入ってきた。抱きすくめられて、うなじにキス。
「こしょばい」
「なあ、プレゼントだけどさ」
2人で迎えた朝は、とびきりに哲次は機嫌がいい。ワクワクしている子供の声で、私に話しかける。
「俺、車の免許取った」
「え、いつ!?」
「お前が知らないうちに」
甘えるように、哲次はぐりぐりと頭をぶつける。本当に、哲次のやることは予想がつかない。
「だから、2人でどっか行こうな」
哲次とならどこでも行くと言ったのを思い出した。今度からは、哲次とどこにでも行けるんだ。
「絶対一番最初にあきを乗せるんだ。で、あきの好きなとこ連れてく」
「うん、哲次?」
「ん?」
「ありがとう、幸せ」
これ以上幸せなクリスマスを、私は知らないし知らなくていい。哲次といるのが私にとっては一番だ。