荒船部屋
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ボーダーのお仕事以外にやるべき学業を放棄している私は、日中は基本暇をしている。何かしなければ、と焦っては、気分を悪くして具合が悪くなることがしょっちゅう。そんな時も傍にいてくれて、叱ったり慰めてくれる哲次は、私にとって本当に大事で大切な存在だ。そんな哲次の帰りを、哲次の家で一人待つことが増えた。引っ越しを手伝った時に投げて寄越された合鍵。
「たまには家事手伝いに来いよ」
なんて、素直じゃないけど哲次らしい言葉も一緒に。私は哲次の言うことをいつだって素直に聞く。それが嬉しくて大好きだから。だから今日も洗濯を回してみたり、食器を洗ってみたりしたのだが、哲次はしっかり者で計画的だから、洗濯物も食器も溜まってなんていなかった。すぐに終わってしまって、天井を見上げながらぼーっとしていた。それにも飽きて、身体を起こす。すると、テレビの乗せられたカラーボックスが目に入る。その棚にはびっしりとDVDが詰まっていた。奥の方は手前の物を取り出さないと見えないくらいに。どんな作品があるのか気になって私は手を伸ばした。とびきり好きな作品は正規品で買っている様で、しっかりパッケージに入っている。大体が海外の作品だ。お気に入りを全部出すと、その奥には薄いケースに入っているだけのDVDが出てきた。どうやら自分でコピーして焼いているようだ。それらのタイトルもカタカナの物が多くて、本当に好きなんだなと笑みがこぼれる。一枚一枚見ていくと、途中でタイトルが和名になった。続けて出していくと、明らかに変な、エッチなタイトルになっていった。あ、こんなとこにAV隠してるんだ。嫌悪より驚きが大きかった。哲次はあまり、そういう話や素振りを見せないから。その、エッチなことされることはあるけど。男友達がエッチな話題で盛り上がっていても、私がいる時は輪に入らないし、エロ本やAVなんて見かけたことがなかった。それにしても、すごいタイトルだなと思いながら全部取り出して眺めた。最後に、奥の方に紙の束があるのに気がついた。
「??」
それも引っ張り出して見てみると、どうやら手紙のようだった。可愛らしい封筒が開封されて読まれている。なんとなく、ラブレターだと察した。哲次はモテると思っていたが、こんなに手紙まで貰ってるとは思わなかった。これにも驚きだ。読んでは悪いとは思ったが、どんな子に告白されているのか気になって、中身を見てしまった。色々な書き文字、文章で哲次への愛が綴られていて、素直にすごいなと思った。中には何通も同じ人から送られている手紙もあった。
『早乙女さんが好きじゃないなら付き合って欲しい』
『荒船君が早乙女さんに構う必要ないと思う』
『早乙女さんとばかりじゃなくて、私ともお昼食べてほしい』
私の名前がところどころに見られるのが気になった。付き合う前から、学校にいれば哲次と一緒にいた。やっぱり、周りから見れば私は哲次に不釣り合いだと思われてるんだな。当然だと思う。これを貰って私にも、彼女たちにも応えなかった哲次は何を思っていたのだろう。考えても答えなんて出るはずがないので、見なかったことにして全てしまい直した。
ガチャリ、と鍵の開く音がする。
「おかえりなさい!」
嬉しくて駆け寄ると、哲次は手で口元を抑えて俯いた。
「哲次?」
「うん、うん……ただいま」
そのまま抱き寄せられて肩口に顔を埋められる。なんだか気持ちまでこそばゆい。哲次は鞄を放り出すと、手早く部屋着に着替えた。そして、当たり前のように私にこっちに来いと合図した。素直に引き寄せられて、哲次の足の間に収まって甘える。しばらく、黙っていちゃついていた。そのうち、ふっと哲次がカラーボックスの方を見た。
「お前、なんかあの辺いじった?」
「うん。なんの映画があるのかなって」
哲次は私から離れてカラーボックスを整理し直し始めた。どうやら、並べる順番があったらしい。どんどんDVDが出されていき、段々と哲次が焦り始めた。
「お前、これどこまで見た!?」
「全部」
「全部!?」
哲次は真っ青になって頭を抱えた。傍に寄れば両手で肩を掴まれて、
「怒らねぇから正直に言えよ。何を見た?」
「DVDとAVと、あとラブレター」
「ラブレター……? あ、」
哲次が手を奥に突っ込み、また手紙が取り出された。
「これか?」
「うん」
「……読んだ?」
「ごめん」
「マジか……。ごめんな、お前が嫌な思いしたんなら捨てるから」
パラパラと確認しながら、哲次は申し訳なさそうな顔になった。
「いいよ捨てないで。捨てられないんでしょ? 哲次優しいから。大事にしなよ。読んじゃってごめんなさい」
それは素直な気持ちだった。手紙を書いた彼女たちも、きっと真剣に哲次のことが好きだったはずだから。無下には出来ないと思った。複雑な顔で片付けをする哲次に、気になってしまったことを訊いてみた。
「ねえ、それなんて返事してたの?」
「返事?」
「『早乙女さんのこと好きじゃないなら付き合ってほしい』とか。そういうの」
「あー、確かあきのことは好きじゃないけど、あきと友達やめろって言うなら付き合えないって言った」
「それでもいいって人いなかったの?」
「いた気がするけど、それもなんだかんだで断った」
恋人ではなかったけど、その頃から私は哲次の特別だったのだと優越感を覚えると供に安心した。嬉しくて片付けをする背中に覆いかぶさる。
「重い」
「ふふふふ」
「ったく」
哲次は私を退かしながら、思い出したように、
「今考えれば、早くお前と付き合っちゃえばよかったな」
とあっけらかんと言った。
「でも、哲次私のこと好きじゃなかったでしょ?」
「いや、好きだったけど。多分。ただ俺の中で、あきはいい友達っていう思いが強かったし、周りに好きじゃない、付き合ってないって言った手前、今更撤回する気になれなかったんだよ。」
ああ、哲次って周りの言うこと気にしないけど、自分が言ったこと変えることが苦手なのだと思った。そんな頑固なとこも大好きなんて、大概。片付け終わって、また当然の様に抱っこされて、
「勝手にあんまり触るんじゃねぇよ。恥ずかしいだろ」
「ごめん」
哲次に触れているのは心地いい。ずっと、一緒にいたいと幸せな頭は願う。
「ねえ、恋人である前に友達だよ」
「うん?」
「哲次は、いい友達」
恋人である前に、大切な友達でいたかった。そしたらきっと、ずっと離れずにいられるから。いつだって、哲次の1番の理解者でいたいのだ。
「お前たまに変なこと言うよな」
哲次はよく分からないといった様子だった。けど、説明はしなかった。そのまま黙ってまた甘えあって、しばらくしてはたと哲次は動きを止めた。
「??」
「やっぱ捨てよう」
言い出してまた全部DVDを引っ張り出す。
「いいって別に。気にしないよ」
「……お前嘘吐くし。最近知ったけど」
「?? 嘘じゃないよ本当に気にしてない」
「いいから捨てる。誰だかよく覚えてない女より、あきのが数百倍大事だし」
そう言って紙束をひっつかむと、ぼすんとゴミ箱に投げ入れた。拾おうとしたら、
「だーかーら、捨てる!」
って抱きつかれて止められてしまった。
「もったいない……」
「なにがだよ」
呆れた様に哲次は笑うと、柔らかく私にキスを落とした。
「たまには家事手伝いに来いよ」
なんて、素直じゃないけど哲次らしい言葉も一緒に。私は哲次の言うことをいつだって素直に聞く。それが嬉しくて大好きだから。だから今日も洗濯を回してみたり、食器を洗ってみたりしたのだが、哲次はしっかり者で計画的だから、洗濯物も食器も溜まってなんていなかった。すぐに終わってしまって、天井を見上げながらぼーっとしていた。それにも飽きて、身体を起こす。すると、テレビの乗せられたカラーボックスが目に入る。その棚にはびっしりとDVDが詰まっていた。奥の方は手前の物を取り出さないと見えないくらいに。どんな作品があるのか気になって私は手を伸ばした。とびきり好きな作品は正規品で買っている様で、しっかりパッケージに入っている。大体が海外の作品だ。お気に入りを全部出すと、その奥には薄いケースに入っているだけのDVDが出てきた。どうやら自分でコピーして焼いているようだ。それらのタイトルもカタカナの物が多くて、本当に好きなんだなと笑みがこぼれる。一枚一枚見ていくと、途中でタイトルが和名になった。続けて出していくと、明らかに変な、エッチなタイトルになっていった。あ、こんなとこにAV隠してるんだ。嫌悪より驚きが大きかった。哲次はあまり、そういう話や素振りを見せないから。その、エッチなことされることはあるけど。男友達がエッチな話題で盛り上がっていても、私がいる時は輪に入らないし、エロ本やAVなんて見かけたことがなかった。それにしても、すごいタイトルだなと思いながら全部取り出して眺めた。最後に、奥の方に紙の束があるのに気がついた。
「??」
それも引っ張り出して見てみると、どうやら手紙のようだった。可愛らしい封筒が開封されて読まれている。なんとなく、ラブレターだと察した。哲次はモテると思っていたが、こんなに手紙まで貰ってるとは思わなかった。これにも驚きだ。読んでは悪いとは思ったが、どんな子に告白されているのか気になって、中身を見てしまった。色々な書き文字、文章で哲次への愛が綴られていて、素直にすごいなと思った。中には何通も同じ人から送られている手紙もあった。
『早乙女さんが好きじゃないなら付き合って欲しい』
『荒船君が早乙女さんに構う必要ないと思う』
『早乙女さんとばかりじゃなくて、私ともお昼食べてほしい』
私の名前がところどころに見られるのが気になった。付き合う前から、学校にいれば哲次と一緒にいた。やっぱり、周りから見れば私は哲次に不釣り合いだと思われてるんだな。当然だと思う。これを貰って私にも、彼女たちにも応えなかった哲次は何を思っていたのだろう。考えても答えなんて出るはずがないので、見なかったことにして全てしまい直した。
ガチャリ、と鍵の開く音がする。
「おかえりなさい!」
嬉しくて駆け寄ると、哲次は手で口元を抑えて俯いた。
「哲次?」
「うん、うん……ただいま」
そのまま抱き寄せられて肩口に顔を埋められる。なんだか気持ちまでこそばゆい。哲次は鞄を放り出すと、手早く部屋着に着替えた。そして、当たり前のように私にこっちに来いと合図した。素直に引き寄せられて、哲次の足の間に収まって甘える。しばらく、黙っていちゃついていた。そのうち、ふっと哲次がカラーボックスの方を見た。
「お前、なんかあの辺いじった?」
「うん。なんの映画があるのかなって」
哲次は私から離れてカラーボックスを整理し直し始めた。どうやら、並べる順番があったらしい。どんどんDVDが出されていき、段々と哲次が焦り始めた。
「お前、これどこまで見た!?」
「全部」
「全部!?」
哲次は真っ青になって頭を抱えた。傍に寄れば両手で肩を掴まれて、
「怒らねぇから正直に言えよ。何を見た?」
「DVDとAVと、あとラブレター」
「ラブレター……? あ、」
哲次が手を奥に突っ込み、また手紙が取り出された。
「これか?」
「うん」
「……読んだ?」
「ごめん」
「マジか……。ごめんな、お前が嫌な思いしたんなら捨てるから」
パラパラと確認しながら、哲次は申し訳なさそうな顔になった。
「いいよ捨てないで。捨てられないんでしょ? 哲次優しいから。大事にしなよ。読んじゃってごめんなさい」
それは素直な気持ちだった。手紙を書いた彼女たちも、きっと真剣に哲次のことが好きだったはずだから。無下には出来ないと思った。複雑な顔で片付けをする哲次に、気になってしまったことを訊いてみた。
「ねえ、それなんて返事してたの?」
「返事?」
「『早乙女さんのこと好きじゃないなら付き合ってほしい』とか。そういうの」
「あー、確かあきのことは好きじゃないけど、あきと友達やめろって言うなら付き合えないって言った」
「それでもいいって人いなかったの?」
「いた気がするけど、それもなんだかんだで断った」
恋人ではなかったけど、その頃から私は哲次の特別だったのだと優越感を覚えると供に安心した。嬉しくて片付けをする背中に覆いかぶさる。
「重い」
「ふふふふ」
「ったく」
哲次は私を退かしながら、思い出したように、
「今考えれば、早くお前と付き合っちゃえばよかったな」
とあっけらかんと言った。
「でも、哲次私のこと好きじゃなかったでしょ?」
「いや、好きだったけど。多分。ただ俺の中で、あきはいい友達っていう思いが強かったし、周りに好きじゃない、付き合ってないって言った手前、今更撤回する気になれなかったんだよ。」
ああ、哲次って周りの言うこと気にしないけど、自分が言ったこと変えることが苦手なのだと思った。そんな頑固なとこも大好きなんて、大概。片付け終わって、また当然の様に抱っこされて、
「勝手にあんまり触るんじゃねぇよ。恥ずかしいだろ」
「ごめん」
哲次に触れているのは心地いい。ずっと、一緒にいたいと幸せな頭は願う。
「ねえ、恋人である前に友達だよ」
「うん?」
「哲次は、いい友達」
恋人である前に、大切な友達でいたかった。そしたらきっと、ずっと離れずにいられるから。いつだって、哲次の1番の理解者でいたいのだ。
「お前たまに変なこと言うよな」
哲次はよく分からないといった様子だった。けど、説明はしなかった。そのまま黙ってまた甘えあって、しばらくしてはたと哲次は動きを止めた。
「??」
「やっぱ捨てよう」
言い出してまた全部DVDを引っ張り出す。
「いいって別に。気にしないよ」
「……お前嘘吐くし。最近知ったけど」
「?? 嘘じゃないよ本当に気にしてない」
「いいから捨てる。誰だかよく覚えてない女より、あきのが数百倍大事だし」
そう言って紙束をひっつかむと、ぼすんとゴミ箱に投げ入れた。拾おうとしたら、
「だーかーら、捨てる!」
って抱きつかれて止められてしまった。
「もったいない……」
「なにがだよ」
呆れた様に哲次は笑うと、柔らかく私にキスを落とした。