荒船部屋
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哲次って束縛強いんだ。そう気付いたのは友達に話してからだった。「束縛強いね?」と言われて、強いかな? と聞き返してしまった。けど、よくよく考えれば哲次は私の行動を把握したがるな、と思い直した。用もないのに傍に置きたがるし、出かける時は逐一報告を求める。堂々と命令口調なので、女々しさとかは感じないけれど。しかし、何か心配なのだろうか? 出会ってから、なんだかんだ私が哲次の傍を離れたことなどないのに。思ったことはなんでも話せる関係でいたいから、聞いてしまいたいけど、今哲次は集中して勉強しているので邪魔は出来ない。まあ、じゃあなんで家に呼んだんだって周りは思うのだろう。私は哲次が同じ空間にいるだけで安心出来るので、呼ばれれば飛んで行くのだが。そうは言っても。
「………………哲次」
寂しくて、思わずこぼれてしまった。小さな声だったのに、ちゃんと哲次の耳には届いたみたいで。こっちに振り向いてくれた。嫌な顔するかと思ったら、困った様に笑顔になった。
「ダメだな。お前いると構いたくなる」
「えっじゃあ私、外出ていようか?」
そう伝えれば苦虫を潰したような顔になる。なんで。
「だーめ。お前どうせ鋼とかカゲんとこに行くんだろ? 絶対だめ」
まあ確かに、他に友人というと鋼君かカゲか穂刈辺りにはなるけれど。私は女の子はコンプレックスなのだ、堪忍して欲しい。そう目で訴えたが、そっと手招きをされた。言われるがまま歩み寄れば、手を引かれて哲次の膝の上に招かれた。
「哲次の邪魔、したくないよ」
哲次の心音を聞く。心なしか、徐々に早くなっている気がする。哲次は少し考えると、
「じゃあ、一緒に勉強しようか?」
と提案してきた。今度は私が苦い顔をする番だ。
「…………勉強嫌い」
言えば、哲次は優しく笑った。私の心拍も早くなる。
「俺が教えてやるから、分かんなかったら分かんないとこ言え」
「分かんないよ」
「大丈夫だってお前そこそこ頭いいんだから。数学と英語はしないからさ。やろうぜ」
数学と英語。その言葉に、付き合う前の思い出が蘇った。
中学2年生の時だ。私は授業中よく眠気に襲われていた。机に突っ伏す私を、哲次は毎度起こしてくれた。それでも眠くて、寝続けることが多かった。なので、成績はいつも哲次の方が良かった。けど、私は得意な科目に関しては、テスト1週間前に教科書を読み込めば覚えることが出来た。現国、生物、倫理。音楽に家庭科。ここら辺は稀に哲次に勝てることがあった。その度に、哲次は舐めるように私の答案を見て悔しがった。恥ずかしいから、そんなに人の答案をじろじろ見ないで欲しかったけど。私は点数なんて気にしてなかったけど、哲次はなんにしろ私に負けたくなかったようだ。
そんな私は、高校生になるといよいよ学校に行くことが辛くなっていった。登校出来ても、教室にいることが困難で、よく保健室に行っていた。受けられた授業が減って、テスト で点数を出さなければ単位が危なくなった。それが分かっていても、教室にいることはしんどかった。そんな私を見兼ねて、哲次は私に勉強を教えようとしてくれた。家に招き、哲次の部屋で苦手な数学と英語を教わる。
「生物と現国があんだけ出来るやつが、やって出来ないわけはない」
哲次はそう言い切った。哲次の教え方はスパルタ方式で、とにかくガンガン問題を解かされた。哲次の説明は丁寧で、分かり易かったから数学は少し解けるようになったが、英語は単語を覚えてないから難しかった。集中力も続かなくてよく怒られた。それだけしてもらったのに、私は結果を残せなかった。少しは伸びたけど、それは出席日数を埋め合わせるには足りなかったし、そもそもテスト自体受けられずに家にこもっていた日もあった。結局、私は高校を卒業出来なくなったのだ。
哲次は人にものを教えるのが好きなんだと思う。鋼君にもそうしたように、自分のやり方を他人がやっても結果が出せる、ということに喜びを感じるらしい。うきうきと表情を輝かせて、
「ほら、教えてやるから。ノート見ろ」
渋々頷いて、哲次のノートを見た。相変わらず、綺麗にまとめられている。社会科のノートだった。字も読みやすいし、大事なポイントが色分けして書いてある。
「まず、今やってんのは……」
哲次との近い距離に、本当は勉強なんて中断して甘えたいしデートがしたい。けれど、嬉しそうな声で私に教える哲次を止めるなんて出来ないし、学ぶことは楽しいので黙って聞いていた。時折、頭を撫でたりぎゅっと抱き締めてくれて、哲次といるのは幸せだなぁと思った。不満だってないわけじゃないけど、それを含めて私は彼が好きなのだ。哲次もそうだといいな。
「哲次、」
「なんだ? どっか分かんなかったか?」
「ううん。大好き」
思ったことを告げれば、鉛筆を放り出して私を抱き締めた。
「そーいうの、今言うなよ。本気で勉強する気なくす」
「だって、好きだもん」
「知ってるっつーの」
向かい合わせにされて、哲次の顔を見ればほんのり染まっていた。返事の代わりにキスをされる。何度しても、哲次とのキスは電流が走るようだ。
「やめた。今日はもう勉強はしねぇ」
私を軽々と抱き上げて、お布団に連れていかれる。そのまま、布団の上でじゃれあって、たくさん愛情を注がれる。勉強が心配だったけど、
「俺以外のこと、考えてんじゃねーよ」
といつも通り、哲次に支配された。結局、どんなわがままや気まぐれでも、哲次なら許せてしまうのだ。
「哲次、大好き」
「……俺も、好きだぜ」
ああ、その笑顔は私だけのものなんだね。
「………………哲次」
寂しくて、思わずこぼれてしまった。小さな声だったのに、ちゃんと哲次の耳には届いたみたいで。こっちに振り向いてくれた。嫌な顔するかと思ったら、困った様に笑顔になった。
「ダメだな。お前いると構いたくなる」
「えっじゃあ私、外出ていようか?」
そう伝えれば苦虫を潰したような顔になる。なんで。
「だーめ。お前どうせ鋼とかカゲんとこに行くんだろ? 絶対だめ」
まあ確かに、他に友人というと鋼君かカゲか穂刈辺りにはなるけれど。私は女の子はコンプレックスなのだ、堪忍して欲しい。そう目で訴えたが、そっと手招きをされた。言われるがまま歩み寄れば、手を引かれて哲次の膝の上に招かれた。
「哲次の邪魔、したくないよ」
哲次の心音を聞く。心なしか、徐々に早くなっている気がする。哲次は少し考えると、
「じゃあ、一緒に勉強しようか?」
と提案してきた。今度は私が苦い顔をする番だ。
「…………勉強嫌い」
言えば、哲次は優しく笑った。私の心拍も早くなる。
「俺が教えてやるから、分かんなかったら分かんないとこ言え」
「分かんないよ」
「大丈夫だってお前そこそこ頭いいんだから。数学と英語はしないからさ。やろうぜ」
数学と英語。その言葉に、付き合う前の思い出が蘇った。
中学2年生の時だ。私は授業中よく眠気に襲われていた。机に突っ伏す私を、哲次は毎度起こしてくれた。それでも眠くて、寝続けることが多かった。なので、成績はいつも哲次の方が良かった。けど、私は得意な科目に関しては、テスト1週間前に教科書を読み込めば覚えることが出来た。現国、生物、倫理。音楽に家庭科。ここら辺は稀に哲次に勝てることがあった。その度に、哲次は舐めるように私の答案を見て悔しがった。恥ずかしいから、そんなに人の答案をじろじろ見ないで欲しかったけど。私は点数なんて気にしてなかったけど、哲次はなんにしろ私に負けたくなかったようだ。
そんな私は、高校生になるといよいよ学校に行くことが辛くなっていった。登校出来ても、教室にいることが困難で、よく保健室に行っていた。受けられた授業が減って、テスト で点数を出さなければ単位が危なくなった。それが分かっていても、教室にいることはしんどかった。そんな私を見兼ねて、哲次は私に勉強を教えようとしてくれた。家に招き、哲次の部屋で苦手な数学と英語を教わる。
「生物と現国があんだけ出来るやつが、やって出来ないわけはない」
哲次はそう言い切った。哲次の教え方はスパルタ方式で、とにかくガンガン問題を解かされた。哲次の説明は丁寧で、分かり易かったから数学は少し解けるようになったが、英語は単語を覚えてないから難しかった。集中力も続かなくてよく怒られた。それだけしてもらったのに、私は結果を残せなかった。少しは伸びたけど、それは出席日数を埋め合わせるには足りなかったし、そもそもテスト自体受けられずに家にこもっていた日もあった。結局、私は高校を卒業出来なくなったのだ。
哲次は人にものを教えるのが好きなんだと思う。鋼君にもそうしたように、自分のやり方を他人がやっても結果が出せる、ということに喜びを感じるらしい。うきうきと表情を輝かせて、
「ほら、教えてやるから。ノート見ろ」
渋々頷いて、哲次のノートを見た。相変わらず、綺麗にまとめられている。社会科のノートだった。字も読みやすいし、大事なポイントが色分けして書いてある。
「まず、今やってんのは……」
哲次との近い距離に、本当は勉強なんて中断して甘えたいしデートがしたい。けれど、嬉しそうな声で私に教える哲次を止めるなんて出来ないし、学ぶことは楽しいので黙って聞いていた。時折、頭を撫でたりぎゅっと抱き締めてくれて、哲次といるのは幸せだなぁと思った。不満だってないわけじゃないけど、それを含めて私は彼が好きなのだ。哲次もそうだといいな。
「哲次、」
「なんだ? どっか分かんなかったか?」
「ううん。大好き」
思ったことを告げれば、鉛筆を放り出して私を抱き締めた。
「そーいうの、今言うなよ。本気で勉強する気なくす」
「だって、好きだもん」
「知ってるっつーの」
向かい合わせにされて、哲次の顔を見ればほんのり染まっていた。返事の代わりにキスをされる。何度しても、哲次とのキスは電流が走るようだ。
「やめた。今日はもう勉強はしねぇ」
私を軽々と抱き上げて、お布団に連れていかれる。そのまま、布団の上でじゃれあって、たくさん愛情を注がれる。勉強が心配だったけど、
「俺以外のこと、考えてんじゃねーよ」
といつも通り、哲次に支配された。結局、どんなわがままや気まぐれでも、哲次なら許せてしまうのだ。
「哲次、大好き」
「……俺も、好きだぜ」
ああ、その笑顔は私だけのものなんだね。