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夏休みも残り10日。少し早くなった日の入り、風はもう秋の気配を感じさせる。夕暮れの河原は虫の鳴き声が響きはじめ、遊んでいた子供はカラスと共に家に帰る。佐鳥はその様子を少し羨ましそうに見ながら、夕日の見える場所に腰かけた。防衛任務に広報活動、その合間に学校の宿題。夏休みとは名ばかりで、むしろ忙しい日々を送っていた佐鳥は、勉強が嫌になって気分転換に散歩に来たのだ。
(あーあ、俺もちょっとは遊びたいなぁ……)
口を尖らせ、足を軽くバタつかせて、佐鳥は不満を表現する。
(あきちゃんにも、全然会えてないし……)
思い人の事を考えて、佐鳥は甘く胸を焦がす。広報のイベントで女の子にはたくさん会ったし、ちやほやもされたが、やっぱり足りないなにか。満たしてくれるあの子に、早く会いたい。いっそ学校なんて早く始まってしまえと佐鳥は思う。そうすれば、毎日一度は会えるのに。
(あー……恋してるなぁ)
締め付けられる胸の痛みに幸福感を覚えながら、佐鳥は苦笑した。女の子相手なら誰にでも恋に落ちるような自分が、一途に片想いを半年近く続けているのが可笑しくて、感心もしていた。今、この夕日を一緒に見たいのは、ただ一人。
「好きだなぁ……」
思わずこぼれた気持ちの欠片。それを後ろから拾った少女。
「なにが好きなの?」
「!!? うえっ、えっ!? あきちゃん!?」
意中の人物の登場に佐鳥は大きく取り乱す。その慌てように早乙女も驚いてしまい、
「わっ、ごめん、急に話しかけて……近付いたら佐鳥くんだったから……」
と謝った。佐鳥は夢でもみているのかと目をこする。目の前の彼女はジャージ姿なのだが、それでも佐鳥には天使に見えた。
「あきちゃんだあぁ……本物だぁ……! 久しぶり~!!」
「?? うん、久しぶりだね佐鳥くん」
今度は大袈裟に喜ぶ佐鳥を早乙女は不思議そうに見つめる。その仕草、表情のひとつひとつが、佐鳥の心を揺らして離さない。早乙女は佐鳥の横にちょこんと座った。手を伸ばせば届く距離。
「どうしてこんなとこに?」
「えっとね、菊地原くんに基礎体力つけろって言われてね、ランニングしたらって言われたから、朝か夕方に走るようにしてるんだ」
「へーそうなんだ。エライね! あきちゃん」
(菊地原ずるいずるいずるい羨ましい俺と代われ)
佐鳥は笑顔を崩さないが、早乙女の口から出る別の男の名前に、本当は舌打ちしたいほど嫉妬した。そんなこと、早乙女はちっとも気づかない。
「そんなことないよ、全部私の実力がないからで……」
「そんなことないって! 強くなるために頑張るあきちゃん、す、すごいと思うし」
弱気な彼女が愛しくて、好きという言葉が喉まで出かける。けれど、あと一歩踏み出せずに引っ込んだ。
「頑張るくらいしか出来ないから。足りないなら、頑張るしかないもん」
「……あきちゃん夏休みはどっか行った? 練習ばっかり?」
「え、うーん、夏休みの初めにうちと荒船隊と那須隊のみんなで夏祭り行って、」
(おい聞いてないぞ半崎!)
「8月に三輪隊と香取隊で海水浴行って、」
(古寺ー!! 聞いてないぞー!!)
「あとは、毎週菊地原くんに稽古つけてもらってたよ」
(…………もうやだ)
「……いいなぁー」
しばらく会わないうちに思い出を作られていて、佐鳥は胃が沈み込むような気分で落ち込んだ。取り繕う元気もなくなってしまいうなだれる。早乙女は、もしかして佐鳥くんは夏休み遊べてないんじゃないかと少し惜しい答えに辿り着く。
「佐鳥くん、遊びに行ってないの?」
「うん、広報の仕事と防衛任務ばっかり……」
「そっか、そうなんだ。……じゃあさ、今度のお休み、どっか行こっか?」
「え?」
「佐鳥くんの行きたいところ、一緒に行こう。」
斜陽に照らされて、早乙女はにっこり微笑んだ。佐鳥は息を飲み、しばしその笑顔に見惚れた。
「……嫌?」
「……ううん!! まさか!! 本当に? 一緒に行ってくれるの?」
「うん、夏休みは終わっちゃうかもしれないけど、必ず行こう」
最悪の気分から一転、今度はこみ上げる嬉しさで胸が苦しくなる。一緒に、どこかへ。佐鳥は、早乙女がいれば場所なんてどこでもいいし、どこまでだって行けると思った。
「誰誘おうか? やっぱり時枝くんとかが予定合わせやすいかな? あとは奥寺くんとか……」
「い!? いや、待って!」
「???」
「ふ、ふたり! 2人で行きたいな!」
「え、私と? つまらなくない?」
「つまらなくない! 俺は、」
スローモーション、時間が止まったかのように佐鳥には感じられた。真っ直ぐ大好きな瞳を見つめ、早鐘を打つ心臓を抑えて。
「あきちゃんと、ふたりだけがいいんだ」
佐鳥の言葉に、早乙女は嬉しそうに頷く。熱を持った頬は、夕焼けで隠された。
(あーあ、俺もちょっとは遊びたいなぁ……)
口を尖らせ、足を軽くバタつかせて、佐鳥は不満を表現する。
(あきちゃんにも、全然会えてないし……)
思い人の事を考えて、佐鳥は甘く胸を焦がす。広報のイベントで女の子にはたくさん会ったし、ちやほやもされたが、やっぱり足りないなにか。満たしてくれるあの子に、早く会いたい。いっそ学校なんて早く始まってしまえと佐鳥は思う。そうすれば、毎日一度は会えるのに。
(あー……恋してるなぁ)
締め付けられる胸の痛みに幸福感を覚えながら、佐鳥は苦笑した。女の子相手なら誰にでも恋に落ちるような自分が、一途に片想いを半年近く続けているのが可笑しくて、感心もしていた。今、この夕日を一緒に見たいのは、ただ一人。
「好きだなぁ……」
思わずこぼれた気持ちの欠片。それを後ろから拾った少女。
「なにが好きなの?」
「!!? うえっ、えっ!? あきちゃん!?」
意中の人物の登場に佐鳥は大きく取り乱す。その慌てように早乙女も驚いてしまい、
「わっ、ごめん、急に話しかけて……近付いたら佐鳥くんだったから……」
と謝った。佐鳥は夢でもみているのかと目をこする。目の前の彼女はジャージ姿なのだが、それでも佐鳥には天使に見えた。
「あきちゃんだあぁ……本物だぁ……! 久しぶり~!!」
「?? うん、久しぶりだね佐鳥くん」
今度は大袈裟に喜ぶ佐鳥を早乙女は不思議そうに見つめる。その仕草、表情のひとつひとつが、佐鳥の心を揺らして離さない。早乙女は佐鳥の横にちょこんと座った。手を伸ばせば届く距離。
「どうしてこんなとこに?」
「えっとね、菊地原くんに基礎体力つけろって言われてね、ランニングしたらって言われたから、朝か夕方に走るようにしてるんだ」
「へーそうなんだ。エライね! あきちゃん」
(菊地原ずるいずるいずるい羨ましい俺と代われ)
佐鳥は笑顔を崩さないが、早乙女の口から出る別の男の名前に、本当は舌打ちしたいほど嫉妬した。そんなこと、早乙女はちっとも気づかない。
「そんなことないよ、全部私の実力がないからで……」
「そんなことないって! 強くなるために頑張るあきちゃん、す、すごいと思うし」
弱気な彼女が愛しくて、好きという言葉が喉まで出かける。けれど、あと一歩踏み出せずに引っ込んだ。
「頑張るくらいしか出来ないから。足りないなら、頑張るしかないもん」
「……あきちゃん夏休みはどっか行った? 練習ばっかり?」
「え、うーん、夏休みの初めにうちと荒船隊と那須隊のみんなで夏祭り行って、」
(おい聞いてないぞ半崎!)
「8月に三輪隊と香取隊で海水浴行って、」
(古寺ー!! 聞いてないぞー!!)
「あとは、毎週菊地原くんに稽古つけてもらってたよ」
(…………もうやだ)
「……いいなぁー」
しばらく会わないうちに思い出を作られていて、佐鳥は胃が沈み込むような気分で落ち込んだ。取り繕う元気もなくなってしまいうなだれる。早乙女は、もしかして佐鳥くんは夏休み遊べてないんじゃないかと少し惜しい答えに辿り着く。
「佐鳥くん、遊びに行ってないの?」
「うん、広報の仕事と防衛任務ばっかり……」
「そっか、そうなんだ。……じゃあさ、今度のお休み、どっか行こっか?」
「え?」
「佐鳥くんの行きたいところ、一緒に行こう。」
斜陽に照らされて、早乙女はにっこり微笑んだ。佐鳥は息を飲み、しばしその笑顔に見惚れた。
「……嫌?」
「……ううん!! まさか!! 本当に? 一緒に行ってくれるの?」
「うん、夏休みは終わっちゃうかもしれないけど、必ず行こう」
最悪の気分から一転、今度はこみ上げる嬉しさで胸が苦しくなる。一緒に、どこかへ。佐鳥は、早乙女がいれば場所なんてどこでもいいし、どこまでだって行けると思った。
「誰誘おうか? やっぱり時枝くんとかが予定合わせやすいかな? あとは奥寺くんとか……」
「い!? いや、待って!」
「???」
「ふ、ふたり! 2人で行きたいな!」
「え、私と? つまらなくない?」
「つまらなくない! 俺は、」
スローモーション、時間が止まったかのように佐鳥には感じられた。真っ直ぐ大好きな瞳を見つめ、早鐘を打つ心臓を抑えて。
「あきちゃんと、ふたりだけがいいんだ」
佐鳥の言葉に、早乙女は嬉しそうに頷く。熱を持った頬は、夕焼けで隠された。