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外を歩くと汗ばむ季節。私は無事に夏休みを迎えた。夏休みに入ってからも、週一ペースで風間隊の作戦室にお邪魔している。今日は風間さんや歌川くんはお休みみたいで、菊地原くんと2人で作戦室を使っていた。菊地原くんもお休みのはずなのに、私のために本部まで来てくれた。菊地原くんは、本当に優しい。
「もっと体勢低くして」
「はい!」
訓練室に入ったら、菊地原くんがずっと相手をしてくれる。菊地原くんの指導は的確で端的だ。言われた通り、体勢を低く構え直す。スコーピオンを突き立てまっすぐ突っ込むと、ひらりと横にかわされ足を引っ掛けられた。躓いて床とおでこがごっつんこする。かっこ悪い。
「鈍臭すぎだし、動きが素直すぎ。あと、膝曲げらんないわけ? もっと体勢低くできるでしょ」
「……はい!」
「ほら、さっさと立って。もう一回やるよ」
立ち上がってもう一度向かい合う。今度は菊地原くんから踏み込んでくる。菊地原くんの攻撃を刃で受け止めて押し返す。そのまま、振りかぶってスコーピオンを振り下ろそうとしたら、菊地原くんの2本目にバッサリと横薙ぎにされた。トリオンが漏れ出してダウンの判定が出る。
「意識がひとつの攻撃に集中しすぎ。逆に、攻撃は意識が曖昧すぎて明確じゃない」
「えっと……? ごめんなさい、もう少し分かりやすく教えて」
「だから、僕の動きにいちいち釣られすぎなんだよ。攻撃手段は一つじゃないんだから、一つ防いだら次の別の攻撃を警戒しないとダメでしょ」
「そっか」
「で、早乙女の攻撃は、どこを狙ってるのか分かんないだよ、悪い意味で。とりあえず振り下ろしました、相手に当たるかは分かりませんって感じ。鋭さが足りない」
「なるほど……」
菊地原くんとの勝負は、ワンセット凌ぎきれないことの方が多い。立っては負かされ、突っ込んでは負かされの繰り返し。けれど、菊地原くんは何回でも相手をしてくれるし、気づいたことを話してくれる。
「はい、もう一回。そろそろ僕に一太刀くらい当てられるようになってよね」
「はい、頑張ります!」
どれくらい訓練室に篭っていただろうか? 集中力が切れたと判断されて、今日の指導はお終いになった。トリオン体から生身に戻ると、身体が重くなったように感じる。
「わっ……!」
身体がふらついてしまい、その場にへたれこんでしまった。立ち上がろうとするけど、うまく力がいらない。
「ちょっと、大丈夫?」
「うん、平気……ちょっとふらついただけだから」
菊地原くんの手に引っ張り起こされる。勢い余って、菊地原くんに飛びつくような格好になってしまう。
「ご、ごめんなさい! すぐ離れるから!」
ぱっと離れたら、今度はその反動で尻餅をついてしまった。菊地原くんが呆れた顔で見下ろしている。すごく恥ずかしい。
「なに遊んでんのさ」
「ごめん……」
もう一度、今度はゆっくり手を引かれる。そのまま、菊地原くんはソファーに向かって私を引っ張っていく。
「あの……」
「ちょっと横になっていったら? 待っててあげるから」
そう言って、菊地原くんはソファーの端に座る。ぼんやり立っていたら、
「ほら、横になる!」
と、自分の横をバシバシ叩いた。恐る恐るソファーの上に乗り、菊地原くんに頭を向ける。
「ごめん……ありがとう」
「…………ちょっとやり過ぎた、ごめん」
「??」
「…………無理させ過ぎたって言ってんの。早乙女のが体力ないの、忘れてた」
「そんな、すごく勉強になったよ。ありがとう、菊地原くん」
「…………」
菊地原くんは立ち上がると、給湯室に向かった。これくらいでへばってしまうなんて、情けないなあ。今日もたくさんアドバイスをもらった。忘れないうちに、ノートに書かないとな。しばらくして、菊地原くんがマグカップを二つもって戻ってきた。
「早乙女、ココア飲む?」
「あ、ありがとう。いただきます」
マグカップを両手で受け取り、口をつける。程よい甘さでとても美味しい。菊地原くんは、ブラックのコーヒーを飲んでいた。すごく大人だなあ。私はお子様舌なので、コーヒー牛乳くらいが限界だ。
「早乙女さ、」
「うん、なに?」
菊地原くんは、躊躇ってコーヒーをひと口飲む。ふぅーと息を吐き出すと、
「僕のこと、酷いって思わないの?」
と、私に尋ねた。酷い? なんのことだろうか。
「僕、手加減とか出来ないし。優しい言い方とか知らないし。正直、上手く教えられてる自信ないんだけど」
「そうなの? すごく上手だと思うけど……」
「訓練中ボッコボコじゃん。つまらなくないの?」
「そりゃ、もう少しちゃんと戦えたら、って思うよ。思うけど、ボコボコにされるのは私が弱いからだし……菊地原くんの言ってることは正しいと思うし、言われて当然のことだと思ってるよ」
そう答えると、驚いた顔で私を見た。それから、コーヒーをまたひと口飲むと、
「…………変な奴。マゾなんじゃないの」
そうこぼした。別にマゾじゃないんだけどな。
「もっとたくさん、菊地原くんに教わりたいなぁ」
「…………じゃあまず基礎体力つけなよ。毎回こうやってへばられたら迷惑。ランニングとか始めたら?」
「うん、そうだね。そうするよ」
基礎体力かあ。朝か夕方に時間見つけてランニングしよう。ココアを飲みながら、自分の特訓スケジュールを考えた。
「もっと体勢低くして」
「はい!」
訓練室に入ったら、菊地原くんがずっと相手をしてくれる。菊地原くんの指導は的確で端的だ。言われた通り、体勢を低く構え直す。スコーピオンを突き立てまっすぐ突っ込むと、ひらりと横にかわされ足を引っ掛けられた。躓いて床とおでこがごっつんこする。かっこ悪い。
「鈍臭すぎだし、動きが素直すぎ。あと、膝曲げらんないわけ? もっと体勢低くできるでしょ」
「……はい!」
「ほら、さっさと立って。もう一回やるよ」
立ち上がってもう一度向かい合う。今度は菊地原くんから踏み込んでくる。菊地原くんの攻撃を刃で受け止めて押し返す。そのまま、振りかぶってスコーピオンを振り下ろそうとしたら、菊地原くんの2本目にバッサリと横薙ぎにされた。トリオンが漏れ出してダウンの判定が出る。
「意識がひとつの攻撃に集中しすぎ。逆に、攻撃は意識が曖昧すぎて明確じゃない」
「えっと……? ごめんなさい、もう少し分かりやすく教えて」
「だから、僕の動きにいちいち釣られすぎなんだよ。攻撃手段は一つじゃないんだから、一つ防いだら次の別の攻撃を警戒しないとダメでしょ」
「そっか」
「で、早乙女の攻撃は、どこを狙ってるのか分かんないだよ、悪い意味で。とりあえず振り下ろしました、相手に当たるかは分かりませんって感じ。鋭さが足りない」
「なるほど……」
菊地原くんとの勝負は、ワンセット凌ぎきれないことの方が多い。立っては負かされ、突っ込んでは負かされの繰り返し。けれど、菊地原くんは何回でも相手をしてくれるし、気づいたことを話してくれる。
「はい、もう一回。そろそろ僕に一太刀くらい当てられるようになってよね」
「はい、頑張ります!」
どれくらい訓練室に篭っていただろうか? 集中力が切れたと判断されて、今日の指導はお終いになった。トリオン体から生身に戻ると、身体が重くなったように感じる。
「わっ……!」
身体がふらついてしまい、その場にへたれこんでしまった。立ち上がろうとするけど、うまく力がいらない。
「ちょっと、大丈夫?」
「うん、平気……ちょっとふらついただけだから」
菊地原くんの手に引っ張り起こされる。勢い余って、菊地原くんに飛びつくような格好になってしまう。
「ご、ごめんなさい! すぐ離れるから!」
ぱっと離れたら、今度はその反動で尻餅をついてしまった。菊地原くんが呆れた顔で見下ろしている。すごく恥ずかしい。
「なに遊んでんのさ」
「ごめん……」
もう一度、今度はゆっくり手を引かれる。そのまま、菊地原くんはソファーに向かって私を引っ張っていく。
「あの……」
「ちょっと横になっていったら? 待っててあげるから」
そう言って、菊地原くんはソファーの端に座る。ぼんやり立っていたら、
「ほら、横になる!」
と、自分の横をバシバシ叩いた。恐る恐るソファーの上に乗り、菊地原くんに頭を向ける。
「ごめん……ありがとう」
「…………ちょっとやり過ぎた、ごめん」
「??」
「…………無理させ過ぎたって言ってんの。早乙女のが体力ないの、忘れてた」
「そんな、すごく勉強になったよ。ありがとう、菊地原くん」
「…………」
菊地原くんは立ち上がると、給湯室に向かった。これくらいでへばってしまうなんて、情けないなあ。今日もたくさんアドバイスをもらった。忘れないうちに、ノートに書かないとな。しばらくして、菊地原くんがマグカップを二つもって戻ってきた。
「早乙女、ココア飲む?」
「あ、ありがとう。いただきます」
マグカップを両手で受け取り、口をつける。程よい甘さでとても美味しい。菊地原くんは、ブラックのコーヒーを飲んでいた。すごく大人だなあ。私はお子様舌なので、コーヒー牛乳くらいが限界だ。
「早乙女さ、」
「うん、なに?」
菊地原くんは、躊躇ってコーヒーをひと口飲む。ふぅーと息を吐き出すと、
「僕のこと、酷いって思わないの?」
と、私に尋ねた。酷い? なんのことだろうか。
「僕、手加減とか出来ないし。優しい言い方とか知らないし。正直、上手く教えられてる自信ないんだけど」
「そうなの? すごく上手だと思うけど……」
「訓練中ボッコボコじゃん。つまらなくないの?」
「そりゃ、もう少しちゃんと戦えたら、って思うよ。思うけど、ボコボコにされるのは私が弱いからだし……菊地原くんの言ってることは正しいと思うし、言われて当然のことだと思ってるよ」
そう答えると、驚いた顔で私を見た。それから、コーヒーをまたひと口飲むと、
「…………変な奴。マゾなんじゃないの」
そうこぼした。別にマゾじゃないんだけどな。
「もっとたくさん、菊地原くんに教わりたいなぁ」
「…………じゃあまず基礎体力つけなよ。毎回こうやってへばられたら迷惑。ランニングとか始めたら?」
「うん、そうだね。そうするよ」
基礎体力かあ。朝か夕方に時間見つけてランニングしよう。ココアを飲みながら、自分の特訓スケジュールを考えた。