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え、米屋なんて言ったの。
「……早乙女が好きだから」
私達以外誰もいない教室に、その声はよく響いた。聞き間違えるわけもないが、内容は理解しがたい。どういうこと?
「ちょっと待って、落ち着け、落ち着け私」
つまり、米屋は私のことが好き。いや、それはそうでしょ、嫌いなら毎日一緒にいないし。そうじゃない、そういうことじゃなくて。米屋が言った好きっていうのは、その、恋愛対象として、好き、ってことで。合ってるよね? そこから不安だわ。
「あの、彼氏彼女で付き合うってことで合ってる?」
「なんかループしてねぇ?」
クスクスと米屋は笑う。いつもの米屋だ。彼氏になったら、彼女になったら、この当たり前は変わってしまうんだろうか。そう考えたら、胸が詰まるように苦しくなった。
「米屋が、米屋じゃなくなったらやだ」
絞り出すようにそう答えたら、米屋は目を丸くして首をかしげた。
「どゆこと? 俺は俺だろ」
「うん、米屋は米屋、なんだけど、」
なんて伝えたらいいだろう。適切な言葉が見つからない。多分、この関係が変わることに、私は恐怖しているのだと思う。私が知らない米屋になってしまうんじゃないか、って怯えているのだ。
「米屋と友達じゃなくなるのが嫌っていうか、怖い」
「あれ、俺フラれてる?」
想定外、というように米屋は苦笑した。
「違う、いや、えっと、」
その顔を見て、反射的に否定の言葉が出る。けど、歯切れは悪い。なんだか、自分まで知らない自分になるみたいで。どうしたらいいのか、分からないよ。
「……分かんない。分かんないよ、米屋」
素直に気持ちをぶつけるしか、もう出来なかった。頭がぐちゃぐちゃで、目頭が熱くなる。嫌だ、本当、らしくない。
「……うわ、悪い、頼むから泣くなよ」
米屋は私の目尻を親指で撫ぜた。その行為に、余計に混乱してしまって、涙が流れ出る。米屋はものすごく慌てた、困り果てた表情になった。知らない、そんな顔は知らない。
「ごめん、悪かった。忘れて」
遂には視線が合わなくなった。米屋といて、こんな気まずいのは初めてだ。斜陽が差し込む教室で時間だけが過ぎていく。それは、永遠のように長く感じた。がた、と米屋は椅子から立ち上がると、プリントを持って黙ったまま出て行った。1人、取り残されたまま、私は身じろぎひとつ出来なくなった。
「……早乙女が好きだから」
私達以外誰もいない教室に、その声はよく響いた。聞き間違えるわけもないが、内容は理解しがたい。どういうこと?
「ちょっと待って、落ち着け、落ち着け私」
つまり、米屋は私のことが好き。いや、それはそうでしょ、嫌いなら毎日一緒にいないし。そうじゃない、そういうことじゃなくて。米屋が言った好きっていうのは、その、恋愛対象として、好き、ってことで。合ってるよね? そこから不安だわ。
「あの、彼氏彼女で付き合うってことで合ってる?」
「なんかループしてねぇ?」
クスクスと米屋は笑う。いつもの米屋だ。彼氏になったら、彼女になったら、この当たり前は変わってしまうんだろうか。そう考えたら、胸が詰まるように苦しくなった。
「米屋が、米屋じゃなくなったらやだ」
絞り出すようにそう答えたら、米屋は目を丸くして首をかしげた。
「どゆこと? 俺は俺だろ」
「うん、米屋は米屋、なんだけど、」
なんて伝えたらいいだろう。適切な言葉が見つからない。多分、この関係が変わることに、私は恐怖しているのだと思う。私が知らない米屋になってしまうんじゃないか、って怯えているのだ。
「米屋と友達じゃなくなるのが嫌っていうか、怖い」
「あれ、俺フラれてる?」
想定外、というように米屋は苦笑した。
「違う、いや、えっと、」
その顔を見て、反射的に否定の言葉が出る。けど、歯切れは悪い。なんだか、自分まで知らない自分になるみたいで。どうしたらいいのか、分からないよ。
「……分かんない。分かんないよ、米屋」
素直に気持ちをぶつけるしか、もう出来なかった。頭がぐちゃぐちゃで、目頭が熱くなる。嫌だ、本当、らしくない。
「……うわ、悪い、頼むから泣くなよ」
米屋は私の目尻を親指で撫ぜた。その行為に、余計に混乱してしまって、涙が流れ出る。米屋はものすごく慌てた、困り果てた表情になった。知らない、そんな顔は知らない。
「ごめん、悪かった。忘れて」
遂には視線が合わなくなった。米屋といて、こんな気まずいのは初めてだ。斜陽が差し込む教室で時間だけが過ぎていく。それは、永遠のように長く感じた。がた、と米屋は椅子から立ち上がると、プリントを持って黙ったまま出て行った。1人、取り残されたまま、私は身じろぎひとつ出来なくなった。