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ある日、突然。原因も分からないけど、急に気分が落ち込むことはないだろうか。私はある。そんな時は、何を見ても、何を聴いても、心が高揚しなくて、しなびた花のようにふさぎこんでしまう。かすかな頭痛と、全身を包む倦怠感。家に帰ることすら億劫で、1人夕暮れの街をふらふらと歩く。人混みを避けるうちに、気づいたら近所の公園に行き着いていた。日が暮れて、誰もいなくなった公園に足を踏み入れ、ベンチに腰掛けた。ぼんやりと、公園を通り過ぎていく人々を見つめる。
「…………」
足早に帰路につく人、大きな話し声で楽しそうに歩く女子高生、いちゃつきながら歩くカップル……。それらを無感情に眺める。ひとつの人影が、こちらを振り向くと、私の方へ近づいてきた。私の目の前で止まった人物の、靴のつま先を見つめる。
「……まぁたなんか落ち込んでやがんのか」
「カゲには関係ないでしょ」
「はいはい」
どさっとカゲは私の隣に座った。
「ほらよ、やる」
差し出されたのは、スチール缶のコーンスープ。黙って受け取ると、カゲは自分の分の缶コーヒーを飲み出した。私も、プルタブに指をかけ、コーンスープに口をつける。温かい。
「…………」
「…………」
お互いに黙ったまま、時間だけが過ぎていく。もし、隣にいるのがカゲじゃなかったら、私は無理に笑顔を作り、何か話題を探していただろう。
「……寒くねぇか?」
「……ちょっと寒い」
「じゃあこれ巻いてろ」
がさつに、カゲは自分のしていたマフラーを私の首に巻いた。昔からよく知っている、カゲの匂いが鼻をくすぐる。それが染み渡り、心に火を灯す。
「おばさん心配してたぞ、連絡取れねぇって」
「知ってる。無視してた」
「いや、電話くらい出ろよ」
だって、面倒臭かったんだもの。無言で訴えると、はあーっと長いため息が聞こえた。
「……帰んぞ」
カゲが立ち上がり、手を差し伸べる。その手を握り、私も立ち上がった。引っ張るように、カゲは歩き出す。その背中に、ありがとう、と念じた。痒そうに彼は頭を掻く。言葉にしなくても、伝わる。どんなにつれなくしても、受け止めてくれる。そんな彼に、昔から甘えてばかりだ。君の前でだけ、私は私のままでいれるんだ。
「あー、痒い。何考えてんだお前」
「別に」
自分でさえ持て余す私を、どうかこれからもよろしくね、カゲ。
「…………」
足早に帰路につく人、大きな話し声で楽しそうに歩く女子高生、いちゃつきながら歩くカップル……。それらを無感情に眺める。ひとつの人影が、こちらを振り向くと、私の方へ近づいてきた。私の目の前で止まった人物の、靴のつま先を見つめる。
「……まぁたなんか落ち込んでやがんのか」
「カゲには関係ないでしょ」
「はいはい」
どさっとカゲは私の隣に座った。
「ほらよ、やる」
差し出されたのは、スチール缶のコーンスープ。黙って受け取ると、カゲは自分の分の缶コーヒーを飲み出した。私も、プルタブに指をかけ、コーンスープに口をつける。温かい。
「…………」
「…………」
お互いに黙ったまま、時間だけが過ぎていく。もし、隣にいるのがカゲじゃなかったら、私は無理に笑顔を作り、何か話題を探していただろう。
「……寒くねぇか?」
「……ちょっと寒い」
「じゃあこれ巻いてろ」
がさつに、カゲは自分のしていたマフラーを私の首に巻いた。昔からよく知っている、カゲの匂いが鼻をくすぐる。それが染み渡り、心に火を灯す。
「おばさん心配してたぞ、連絡取れねぇって」
「知ってる。無視してた」
「いや、電話くらい出ろよ」
だって、面倒臭かったんだもの。無言で訴えると、はあーっと長いため息が聞こえた。
「……帰んぞ」
カゲが立ち上がり、手を差し伸べる。その手を握り、私も立ち上がった。引っ張るように、カゲは歩き出す。その背中に、ありがとう、と念じた。痒そうに彼は頭を掻く。言葉にしなくても、伝わる。どんなにつれなくしても、受け止めてくれる。そんな彼に、昔から甘えてばかりだ。君の前でだけ、私は私のままでいれるんだ。
「あー、痒い。何考えてんだお前」
「別に」
自分でさえ持て余す私を、どうかこれからもよろしくね、カゲ。