longseries-1-
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
早乙女あきがボーダーに入隊したのは、村上鋼と同じ時期だ。というより、鋼と一緒にスカウトされてきた。最初、鋼の後ろをついて歩いて、喋らないでキョロキョロしている様子がリスみたいな奴だなあと思ったのを覚えている。鋼と揃えるように早乙女も攻撃手を志願したので、まとめて面倒をみることにした。早乙女は控えめだけど素直で、俺の言ったことをすぐに実践してくれて、鋼ほどでないにしろめきめきと上達した。今思えば、俺の言葉にコクコクと頷く早乙女はものすごく可愛かった。その時はまだ、早乙女を意識してなかったんだが。いい弟子を取ったな、ぐらいにしか思ってなかった。
心境に変化が現れたのは、俺が狙撃手に転向した後だった。その頃には、俺が稽古をつけることも少なくなっていた。
『荒船君! 私6000点オーバーしたよ!』
「マジか。おめでとう」
それはもう嬉しそうに報告に来た早乙女を見て、自分のことのように俺も嬉しかった。けど。
(…………?)
同時に、心を隙間風が通ったように、ひどく寂しい気持ちになった。鋼が俺の点を抜いた時には感じなかった思い。ああ、俺が教えることもうないんだなって思ったら、大事にしていた小鳥が逃げてしまったみたいな喪失感があった。
『それでね、自分の隊をね、作ろうと思うんだ』
キラキラと意思を宿した瞳を見たら、そんな寂しさを見せるわけにはいかなくて。
「いいんじゃねーか? お前向いてそうだ」
『本当!?』
俺の一言にバンザイして喜ぶ早乙女がどうにも……愛おしく感じた。
「ああ。なんかあったら、俺を頼れよ」
気付いたらそんなことを口にしていた。とにかく、早乙女にもっと関わっていたい、協力してやりたいと思ったのだ。
そのあと、宣言通り早乙女は自分の隊を作った。俺の目論見は当たって、隊長の業務だとかB級ランク戦のやり方だとか、教えるのに一緒にいることが多くなった。この頃、早乙女がよく笑う奴なことに気付いた。俺の中で、早乙女の存在は確かに大きくなっていたが、それを恋だと確信するまでには至ってなかった。
俺が完全に落ちてしまったのは、隊長会議の帰り道だった。時刻は夕刻、夕日を背に2人肩を並べて帰宅していた。
「隊長の仕事慣れたか?」
『おかげさまで。荒船君のおかげだよ』
「そうか、そりゃよかった、っ!」
「??」
前方を見て俺は固まった。時刻は夕刻。俺の大嫌いな、犬の散歩の時間だった。前からやって来たのは、3匹の小型犬に引っ張られる飼い主。その手からリードが離れて、こっち来て噛み付いてくるんじゃないのかって、考えただけで冷や汗が流れた。足が止まった俺の視線を辿り、早乙女が俺と犬を交互に見る。
『犬、苦手なの?』
「いや、だいじょ」
「ワンワン!」
急に吠えられてビクッと体が震える。気になっている女子の前でなんて醜態だ。今すぐ犬からも早乙女の前からも消えてしまいたかった。
「!!」
不意に手に温もりが触れた。横を見ると、早乙女が俺の右手を両手で握ってくれていた。
(大丈夫だよ)
早乙女の口がそっと動いて、にっこりと弧を描いた。その笑顔に吸い込まれて目を離せなくなった。ギュッと握られた手から電流が流れたと思うくらい心臓が激しく波打って、呼吸も浅くなって、苦しい。苦しいのに、ずっとこのままでいたいと思ってしまうほど、幸せで。犬のことなど一瞬で忘れてしまっていた。気がついた時には俺たちを通り過ぎて小さくなっていた。握られていた手が離れていく。
「あ、」
『もう大丈夫だよ。荒船君にも苦手なものあるんだね』
「あ、ああ……悪い」
首を横に振ってまた微笑む。直視出来なくて、明後日の方向を見た。嫌でも俺は早乙女あきが好きだと自覚した。
早乙女が、……あきが、いつもの笑顔で、「好きだよ」と言ってくれたなら。その体を抱き寄せて、唇を塞いでしまいたい。ゆっくり服を脱がせて、全てを俺のものに……。
ジリリリリリ!
けたたましい目覚ましにギュッと目を瞑ってからゆっくり開く。どうやら朝らしい。眠る前に早乙女の声を聞いたからか、とてもいい夢を見れた気がする。目覚めもいつもよりスッキリしている。目覚ましを止め、ゆっくり起き上がる。
「! あー……」
夢見が良すぎたらしい。濡れた下着を履き替え、朝食を摂るために部屋を出た。今日の予定を頭で確認しながら、早乙女に会えるタイミングがないか探していた。
心境に変化が現れたのは、俺が狙撃手に転向した後だった。その頃には、俺が稽古をつけることも少なくなっていた。
『荒船君! 私6000点オーバーしたよ!』
「マジか。おめでとう」
それはもう嬉しそうに報告に来た早乙女を見て、自分のことのように俺も嬉しかった。けど。
(…………?)
同時に、心を隙間風が通ったように、ひどく寂しい気持ちになった。鋼が俺の点を抜いた時には感じなかった思い。ああ、俺が教えることもうないんだなって思ったら、大事にしていた小鳥が逃げてしまったみたいな喪失感があった。
『それでね、自分の隊をね、作ろうと思うんだ』
キラキラと意思を宿した瞳を見たら、そんな寂しさを見せるわけにはいかなくて。
「いいんじゃねーか? お前向いてそうだ」
『本当!?』
俺の一言にバンザイして喜ぶ早乙女がどうにも……愛おしく感じた。
「ああ。なんかあったら、俺を頼れよ」
気付いたらそんなことを口にしていた。とにかく、早乙女にもっと関わっていたい、協力してやりたいと思ったのだ。
そのあと、宣言通り早乙女は自分の隊を作った。俺の目論見は当たって、隊長の業務だとかB級ランク戦のやり方だとか、教えるのに一緒にいることが多くなった。この頃、早乙女がよく笑う奴なことに気付いた。俺の中で、早乙女の存在は確かに大きくなっていたが、それを恋だと確信するまでには至ってなかった。
俺が完全に落ちてしまったのは、隊長会議の帰り道だった。時刻は夕刻、夕日を背に2人肩を並べて帰宅していた。
「隊長の仕事慣れたか?」
『おかげさまで。荒船君のおかげだよ』
「そうか、そりゃよかった、っ!」
「??」
前方を見て俺は固まった。時刻は夕刻。俺の大嫌いな、犬の散歩の時間だった。前からやって来たのは、3匹の小型犬に引っ張られる飼い主。その手からリードが離れて、こっち来て噛み付いてくるんじゃないのかって、考えただけで冷や汗が流れた。足が止まった俺の視線を辿り、早乙女が俺と犬を交互に見る。
『犬、苦手なの?』
「いや、だいじょ」
「ワンワン!」
急に吠えられてビクッと体が震える。気になっている女子の前でなんて醜態だ。今すぐ犬からも早乙女の前からも消えてしまいたかった。
「!!」
不意に手に温もりが触れた。横を見ると、早乙女が俺の右手を両手で握ってくれていた。
(大丈夫だよ)
早乙女の口がそっと動いて、にっこりと弧を描いた。その笑顔に吸い込まれて目を離せなくなった。ギュッと握られた手から電流が流れたと思うくらい心臓が激しく波打って、呼吸も浅くなって、苦しい。苦しいのに、ずっとこのままでいたいと思ってしまうほど、幸せで。犬のことなど一瞬で忘れてしまっていた。気がついた時には俺たちを通り過ぎて小さくなっていた。握られていた手が離れていく。
「あ、」
『もう大丈夫だよ。荒船君にも苦手なものあるんだね』
「あ、ああ……悪い」
首を横に振ってまた微笑む。直視出来なくて、明後日の方向を見た。嫌でも俺は早乙女あきが好きだと自覚した。
早乙女が、……あきが、いつもの笑顔で、「好きだよ」と言ってくれたなら。その体を抱き寄せて、唇を塞いでしまいたい。ゆっくり服を脱がせて、全てを俺のものに……。
ジリリリリリ!
けたたましい目覚ましにギュッと目を瞑ってからゆっくり開く。どうやら朝らしい。眠る前に早乙女の声を聞いたからか、とてもいい夢を見れた気がする。目覚めもいつもよりスッキリしている。目覚ましを止め、ゆっくり起き上がる。
「! あー……」
夢見が良すぎたらしい。濡れた下着を履き替え、朝食を摂るために部屋を出た。今日の予定を頭で確認しながら、早乙女に会えるタイミングがないか探していた。