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夢のような夏祭りから10日。夏の暑さは本番に入り、我々学生は夏休みとなった。あれから特にイベントはなく、家でだらだらするのと防衛任務、ランク戦をして過ごしていた。
「…………ひややっこ元気ー?」
夏祭りで貰った金魚は、元気に金魚鉢を泳いでいる。ガラスをつつくと、口をぱくぱくさせて寄ってくる。ひややっこという名前は、その日の夕飯に出たのでそう命名した。ひややっこを見る度に、浴衣の荒船君を思い出して、にまにましてしまう。……荒船君、会いたいな。なんだかんだ、最近会えていない気がする。今日は特にすることもない。
「…………」
私は立ち上がり、外に行く支度を始めた。
……荒船君に会いたいからって、荒船君が通う学校付近をうろつくってどうなの私。しかも、気合い入れて普段しないメイクして、普段は履かないヒールある靴履いて、かなりおめかししている。思い立ったら行動に移すのは、昔からの性分だ。それにしたって、これはやりすぎではないだろうか。会える確率低くない? 夏休みだよ? 連絡でも取っていればいいのだろうが、何もないのに会いたいだなんて言ったら、うっとおしいことこの上ない。いや、ここにいることも充分イタい子な気もしてきた。ジリジリ夏の日差しに焦がされて、思考がふやけていく。帰ろうかな。
「……早乙女?」
「!!」
嘘でしょ。前方には学生服を着た荒船君がいる。こちらに気づいて駆け寄ってくれた。シャツのボタンを二つほど外していて、覗く首筋には汗が流れている。
「こんな所でどうした? オシャレして、どっか行くのか?」
えっと、どうしよう。まさか現実になるとは。こうなると、お洒落してきたのが気恥かしい。ジャージ姿で会うよりはマシだけどね。
『友達と待ち合わせしてたんだけど、来ないからフラフラしてたの。荒船君は?』
「俺は補講の帰りだけど。友達、道にでも迷ってんのか?」
『いや、なんか今日は来れなくなっちゃったみたい』
「ふーん。それは残念だな。」
スマホの文面を、荒船君は信じてくれた。ちょっと、胸が痛い。
「……俺これから昼飯だけど、一緒に食うか?」
「!!」
またとない申し出に、
『是非お願いします!』
と、二つ返事でOKした。
荒船君に連れてこられたのは、お好み焼き屋さんだった。のれんをくぐると、ソースの匂いが鼻をくすぐる。
「ここのお好み焼き美味いんだよ」
荒船君は上機嫌でそう語る。靴を脱いで、お座敷に上がり、座布団に腰を下ろした。メニューを広げ、2人で覗き込む。
「どれがいい?」
『海鮮食べたいかな』
「おし。じゃあ、豚そばと海鮮ミックスにするか」
荒船君が店員を呼び止め、注文してくれた。鉄板の電源が入り、温まり始める。
『荒船君、よくこの店来るの?』
「そうだな。お好み焼き好きなんだよ、俺」
『そうなんだ! 他に好きな食べ物は?」
「ん? んー冷奴かな。」
『冷奴! こないだの金魚の名前、ひややっこにしたの」
「はは、なんだよそれ。金魚の名前じゃねーだろ」
荒船君と笑いあっていると、最初の一枚が運ばれてきた。荒船君は手早くソースとおかかをかけ、等分に切り分けてくれた。
「ほら、皿出せよ」
取り皿を差し出して、一切れ乗っけてもらう。両手を合わせお辞儀をして、いただくことにする。熱々で口の中を火傷したけど、ふわふわでとても美味しい。
『美味しい!』
「そりゃよかった」
荒船君も顔をほころばせながら、お好み焼きにかぶりついた。その顔見てるだけで、胸はいっぱいになる。思えば、ちゃんとした食事を一緒に食べるのは初めてだ。食事をするだけで、こんなに幸せだなんて大発見だと思う。2人で2枚のお好み焼きを綺麗にたいらげ、荒船君は足りなかったのかもう1枚頼んで食べた。
『いい食べっぷりだね』
「食べようと思ったら、もう一枚くらいはイケる」
ぺろっと舌を出して口の端を舐める仕草にドキッとした。
「? どうした?」
『なんでもないですよーだ』
一挙一動に振り回されているのが悔しくて、べーと私も舌を出した。荒船君は少し驚いた顔をして、
「え、俺なんかしたか?」
と困っている。そうだ、荒船君も少しくらい私に振り回されたらいいんだ、なんて。
『本当になんでもないよ。そろそろ出る?』
「あ、ああ。そうすっか」
立ち上がり、レジまで伝票を持っていく。財布を取り出すと、荒船君に静止されてしまった。
「いい、俺が出す」
いやいやいや、ダメだよそれは。首を横に振って荒船君の手首を掴むが、やんわり振り払われてしまう。
「こういう時は男が払うもんだろ」
にっとちょっと得意気な顔。またドキドキしちゃってるうちに、会計を済まされてしまった。
『ごめん、ごちそうさまです!』
「おう。また来ような」
また、という言葉に舞い上がってしまう自分は、本当にどうしようもないと思う。もう、降参です。
「…………ひややっこ元気ー?」
夏祭りで貰った金魚は、元気に金魚鉢を泳いでいる。ガラスをつつくと、口をぱくぱくさせて寄ってくる。ひややっこという名前は、その日の夕飯に出たのでそう命名した。ひややっこを見る度に、浴衣の荒船君を思い出して、にまにましてしまう。……荒船君、会いたいな。なんだかんだ、最近会えていない気がする。今日は特にすることもない。
「…………」
私は立ち上がり、外に行く支度を始めた。
……荒船君に会いたいからって、荒船君が通う学校付近をうろつくってどうなの私。しかも、気合い入れて普段しないメイクして、普段は履かないヒールある靴履いて、かなりおめかししている。思い立ったら行動に移すのは、昔からの性分だ。それにしたって、これはやりすぎではないだろうか。会える確率低くない? 夏休みだよ? 連絡でも取っていればいいのだろうが、何もないのに会いたいだなんて言ったら、うっとおしいことこの上ない。いや、ここにいることも充分イタい子な気もしてきた。ジリジリ夏の日差しに焦がされて、思考がふやけていく。帰ろうかな。
「……早乙女?」
「!!」
嘘でしょ。前方には学生服を着た荒船君がいる。こちらに気づいて駆け寄ってくれた。シャツのボタンを二つほど外していて、覗く首筋には汗が流れている。
「こんな所でどうした? オシャレして、どっか行くのか?」
えっと、どうしよう。まさか現実になるとは。こうなると、お洒落してきたのが気恥かしい。ジャージ姿で会うよりはマシだけどね。
『友達と待ち合わせしてたんだけど、来ないからフラフラしてたの。荒船君は?』
「俺は補講の帰りだけど。友達、道にでも迷ってんのか?」
『いや、なんか今日は来れなくなっちゃったみたい』
「ふーん。それは残念だな。」
スマホの文面を、荒船君は信じてくれた。ちょっと、胸が痛い。
「……俺これから昼飯だけど、一緒に食うか?」
「!!」
またとない申し出に、
『是非お願いします!』
と、二つ返事でOKした。
荒船君に連れてこられたのは、お好み焼き屋さんだった。のれんをくぐると、ソースの匂いが鼻をくすぐる。
「ここのお好み焼き美味いんだよ」
荒船君は上機嫌でそう語る。靴を脱いで、お座敷に上がり、座布団に腰を下ろした。メニューを広げ、2人で覗き込む。
「どれがいい?」
『海鮮食べたいかな』
「おし。じゃあ、豚そばと海鮮ミックスにするか」
荒船君が店員を呼び止め、注文してくれた。鉄板の電源が入り、温まり始める。
『荒船君、よくこの店来るの?』
「そうだな。お好み焼き好きなんだよ、俺」
『そうなんだ! 他に好きな食べ物は?」
「ん? んー冷奴かな。」
『冷奴! こないだの金魚の名前、ひややっこにしたの」
「はは、なんだよそれ。金魚の名前じゃねーだろ」
荒船君と笑いあっていると、最初の一枚が運ばれてきた。荒船君は手早くソースとおかかをかけ、等分に切り分けてくれた。
「ほら、皿出せよ」
取り皿を差し出して、一切れ乗っけてもらう。両手を合わせお辞儀をして、いただくことにする。熱々で口の中を火傷したけど、ふわふわでとても美味しい。
『美味しい!』
「そりゃよかった」
荒船君も顔をほころばせながら、お好み焼きにかぶりついた。その顔見てるだけで、胸はいっぱいになる。思えば、ちゃんとした食事を一緒に食べるのは初めてだ。食事をするだけで、こんなに幸せだなんて大発見だと思う。2人で2枚のお好み焼きを綺麗にたいらげ、荒船君は足りなかったのかもう1枚頼んで食べた。
『いい食べっぷりだね』
「食べようと思ったら、もう一枚くらいはイケる」
ぺろっと舌を出して口の端を舐める仕草にドキッとした。
「? どうした?」
『なんでもないですよーだ』
一挙一動に振り回されているのが悔しくて、べーと私も舌を出した。荒船君は少し驚いた顔をして、
「え、俺なんかしたか?」
と困っている。そうだ、荒船君も少しくらい私に振り回されたらいいんだ、なんて。
『本当になんでもないよ。そろそろ出る?』
「あ、ああ。そうすっか」
立ち上がり、レジまで伝票を持っていく。財布を取り出すと、荒船君に静止されてしまった。
「いい、俺が出す」
いやいやいや、ダメだよそれは。首を横に振って荒船君の手首を掴むが、やんわり振り払われてしまう。
「こういう時は男が払うもんだろ」
にっとちょっと得意気な顔。またドキドキしちゃってるうちに、会計を済まされてしまった。
『ごめん、ごちそうさまです!』
「おう。また来ような」
また、という言葉に舞い上がってしまう自分は、本当にどうしようもないと思う。もう、降参です。