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お昼時。大学の食堂はごった返している。今日は焼き魚定食にしようか。食券を買い、食堂のおばちゃんに挨拶して、お昼ご飯を受け取る。人が多いのは苦手なので、食堂の一番奥、端っこの席に陣取った。
いただきます、と手を合わせ食べだそうとすると、きゃーきゃーと黄色い声が耳についた。入り口側を見やると、女の子たちが一人の男を取り囲んでいる。特徴のある黒髪が覗き見えて、ああ、准か。と1人納得する。視線を戻し、黙々と食事を再開すると、あろうことか准は私の前の席までやってきて、お盆を置いた。女の子たちの注目が痛い。
「あきちゃん、前の席いいか?」
「……どうぞ」
満面の笑みで言われては、断ることが出来ない。しかし、よくこんな奥の席に座る私を見つけたものだ。准はいただきますをすると、大根おろしの乗ったハンバーグを美味しそうに食べ出した。
「こうやってあきちゃんとご飯食べるの、久々だな」
「そうだね。副ちゃんと佐補ちゃん元気?」
「ああ、2人とも学校でいろいろ頑張っているみたいだ」
私と准は、年の離れた幼馴染というやつで、ふたつお姉さんの私がよく手を引いて遊んでいた。いつも弟妹に気を使う准を、お姉さん面して甘やかすのが大好きだった。頭を撫でて褒めてあげたり、おやつを分けてあげたり、お箸の使い方を教えたり。とても懐かしい話だ。小学校の高学年に上がる頃には、お互い違う友人を持って、それぞれの生活が忙しくなったから、あまり遊ぶことも無くなってしまった。けれど、こうして会えば、准は私を昔と同じ呼び方で呼んでくれる。それは、帰る場所がある様な安心感を私にくれるのだった。
「あきちゃんは相変わらず、お箸の使い方が上手いな」
綺麗に骨だけになった魚を見て、准は言う。
「まあね。准にお箸の使い方を教えたのは、私だもの」
「そうだった、そうだった。得意げに教えるあきちゃん可愛かったなぁ」
「え、そんな風に思ってたの」
「うん。嬉しそうに俺に構ってくれて、なんでも教えてくれるあきちゃんが大好きだった」
さらり、とそんなことを言われると、とても照れくさい。家族愛とか、そんなのに近い愛情なんだろうけど。
「そうだ、またあきちゃんの作る卵焼きが食べたい」
「卵焼き?」
「私料理出来るようになったの、って自慢げに作ってくれたろ」
「……あー、そんなこともあったねぇ」
お母さんから初めて教わった料理が卵焼きだった。覚えた次の日に、わざわざ准の家に行って作ったっけ。
「いいよ、でも卵焼きだけじゃ流石にあれだから、他にもなんか作ったげる」
「本当か? じゃあ、ハンバーグが食べたい」
「ふふ、今もハンバーグ食べたじゃん」
「あきちゃんのハンバーグが食べたいんだよ」
「分かった、腕によりをかけて作るよ」
「やった! 約束だぞ?」
「うん、約束」
小指を差し出し、指切りをする。准の指は私より大きく、ごつごつになっていたけど、約束の暖かさは変わらない。昔と変わらない笑顔で料理を食べてくれる准を想像して、自然と笑顔になった。
「じゃあ、俺、次の授業があるから」
「あ、ちょっと待って、准」
「?」
身を乗り出して、准の口の端っこを親指で撫ぜる。
「ご飯粒、ついてる」
准は目を見開き、ぼっと耳まで真っ赤になった。その光景を見て、自分のしでかしたことの恥ずかしさに気づく。
「あっ、ごめん! その、昔の癖で」
「……うん、ありがとう、あきちゃん」
「…………」
いやだ、恥ずかしい。しばらく、お互い目線を合わせずに赤い顔を付き合わせていた。
いただきます、と手を合わせ食べだそうとすると、きゃーきゃーと黄色い声が耳についた。入り口側を見やると、女の子たちが一人の男を取り囲んでいる。特徴のある黒髪が覗き見えて、ああ、准か。と1人納得する。視線を戻し、黙々と食事を再開すると、あろうことか准は私の前の席までやってきて、お盆を置いた。女の子たちの注目が痛い。
「あきちゃん、前の席いいか?」
「……どうぞ」
満面の笑みで言われては、断ることが出来ない。しかし、よくこんな奥の席に座る私を見つけたものだ。准はいただきますをすると、大根おろしの乗ったハンバーグを美味しそうに食べ出した。
「こうやってあきちゃんとご飯食べるの、久々だな」
「そうだね。副ちゃんと佐補ちゃん元気?」
「ああ、2人とも学校でいろいろ頑張っているみたいだ」
私と准は、年の離れた幼馴染というやつで、ふたつお姉さんの私がよく手を引いて遊んでいた。いつも弟妹に気を使う准を、お姉さん面して甘やかすのが大好きだった。頭を撫でて褒めてあげたり、おやつを分けてあげたり、お箸の使い方を教えたり。とても懐かしい話だ。小学校の高学年に上がる頃には、お互い違う友人を持って、それぞれの生活が忙しくなったから、あまり遊ぶことも無くなってしまった。けれど、こうして会えば、准は私を昔と同じ呼び方で呼んでくれる。それは、帰る場所がある様な安心感を私にくれるのだった。
「あきちゃんは相変わらず、お箸の使い方が上手いな」
綺麗に骨だけになった魚を見て、准は言う。
「まあね。准にお箸の使い方を教えたのは、私だもの」
「そうだった、そうだった。得意げに教えるあきちゃん可愛かったなぁ」
「え、そんな風に思ってたの」
「うん。嬉しそうに俺に構ってくれて、なんでも教えてくれるあきちゃんが大好きだった」
さらり、とそんなことを言われると、とても照れくさい。家族愛とか、そんなのに近い愛情なんだろうけど。
「そうだ、またあきちゃんの作る卵焼きが食べたい」
「卵焼き?」
「私料理出来るようになったの、って自慢げに作ってくれたろ」
「……あー、そんなこともあったねぇ」
お母さんから初めて教わった料理が卵焼きだった。覚えた次の日に、わざわざ准の家に行って作ったっけ。
「いいよ、でも卵焼きだけじゃ流石にあれだから、他にもなんか作ったげる」
「本当か? じゃあ、ハンバーグが食べたい」
「ふふ、今もハンバーグ食べたじゃん」
「あきちゃんのハンバーグが食べたいんだよ」
「分かった、腕によりをかけて作るよ」
「やった! 約束だぞ?」
「うん、約束」
小指を差し出し、指切りをする。准の指は私より大きく、ごつごつになっていたけど、約束の暖かさは変わらない。昔と変わらない笑顔で料理を食べてくれる准を想像して、自然と笑顔になった。
「じゃあ、俺、次の授業があるから」
「あ、ちょっと待って、准」
「?」
身を乗り出して、准の口の端っこを親指で撫ぜる。
「ご飯粒、ついてる」
准は目を見開き、ぼっと耳まで真っ赤になった。その光景を見て、自分のしでかしたことの恥ずかしさに気づく。
「あっ、ごめん! その、昔の癖で」
「……うん、ありがとう、あきちゃん」
「…………」
いやだ、恥ずかしい。しばらく、お互い目線を合わせずに赤い顔を付き合わせていた。