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迅が俺の部屋に泊まりにくるのは珍しいことではない。六畳半のボロアパートに、ジュースやらお菓子を買い込んで、一晩中バカ騒ぎをする。大抵、俺の知り合いの女の子とかもいるんだけど、みーんな日付が変わる前に帰っちまう。送ろうとすると、決まって迅が、
「送らなくても大丈夫だよ。オレのサイドエフェクトがそう言ってる」
なんて、カッコつけて言う。女の子はバカにして笑うけど、俺はその、「サイドエフェクト」とやらの精度を知ってるから、ふざけて、
「じゃあ、めんどいから送んなーい!」
って女の子を追い出す。それからは、迅とエロい話とかエロい話とか、諸々して電源が落ちるように眠り込む。狭いからなのか、俺が起きる前に大抵迅は起きている。日が昇ってすぐの明け方だ。多分、星が輝いているうちから、ベランダに出て向こう側をずっと見てるんだ。迅が窓を開け放ったせいで、朝の冷たい風で目が覚めた。
「……さみぃ」
俺の呟きに、迅は少しだけ後ろを気にしたけど、また真っ直ぐに視線を戻した。俺ん家のベランダは、いわゆる警戒区域に面していて、鉄条網の向こう側は瓦礫の山になっている。見ていて面白いもんでもない。こちら側に生えている一本の桜が、枯れ木も山の賑わいっつーのか、やけに寂しく映る。
「お前はさ、」
「うん? なあに迅ちゃん」
「明日世界が終わるとしたら、何してる?」
「えーんなダッセェこと聞いちゃう?」
俺からしたら、面白みも旨味もなんもない質問だった。だっていつも考えるのはひとつだけ。
「そんなん、いつもどーりの日を過ごすに決まってんじゃん。あ! 最期にヤるならいい女がいーな」
そりゃいつかは来るだろうけど、そんなこと考えて一日終わるなんてナンセンスだ。だから、いつも俺は一分一秒、俺なりに大事に生きているつもりだ。会いたい奴にしか会わないし、ヒーローになるつもりもない。
「なに、迅ちゃんまたなんか見ちゃった?」
「…………いや」
「だーいじょうぶだって! そうそう悪いことなんか起きねーよ」
根拠はないけど、そんなもんじゃないだろうか。根っからの悪人なんて、俺はこの方会ったことがない。みんなが幸せを願うなら、いつだって世界はハッピーだ。
「……あきと会ってると、ぜーんぶバカバカしくなるよ」
「褒めてるー?」
「褒めてない。けど、」
風が部屋に桜を迷い込ませる。桜に気を取られて、迅の言葉を聞いてなかった。
「え、ごめん。もっかい」
「……そーいうとこが、あきだよねぇ」
迅は笑った。昨日よりも生きた笑顔で。それが見れれば、俺は満足だった。俺の部屋に来る時は決まって、死んだような目で空を見てっから。
「朝メシ、カップ麺しかないけど、食う?」
「じゃあ、いただこうかな」
迅がようやく部屋に戻ってきた。散乱した空き缶を蹴飛ばしながら、俺はヤカンに火をつけた。
「送らなくても大丈夫だよ。オレのサイドエフェクトがそう言ってる」
なんて、カッコつけて言う。女の子はバカにして笑うけど、俺はその、「サイドエフェクト」とやらの精度を知ってるから、ふざけて、
「じゃあ、めんどいから送んなーい!」
って女の子を追い出す。それからは、迅とエロい話とかエロい話とか、諸々して電源が落ちるように眠り込む。狭いからなのか、俺が起きる前に大抵迅は起きている。日が昇ってすぐの明け方だ。多分、星が輝いているうちから、ベランダに出て向こう側をずっと見てるんだ。迅が窓を開け放ったせいで、朝の冷たい風で目が覚めた。
「……さみぃ」
俺の呟きに、迅は少しだけ後ろを気にしたけど、また真っ直ぐに視線を戻した。俺ん家のベランダは、いわゆる警戒区域に面していて、鉄条網の向こう側は瓦礫の山になっている。見ていて面白いもんでもない。こちら側に生えている一本の桜が、枯れ木も山の賑わいっつーのか、やけに寂しく映る。
「お前はさ、」
「うん? なあに迅ちゃん」
「明日世界が終わるとしたら、何してる?」
「えーんなダッセェこと聞いちゃう?」
俺からしたら、面白みも旨味もなんもない質問だった。だっていつも考えるのはひとつだけ。
「そんなん、いつもどーりの日を過ごすに決まってんじゃん。あ! 最期にヤるならいい女がいーな」
そりゃいつかは来るだろうけど、そんなこと考えて一日終わるなんてナンセンスだ。だから、いつも俺は一分一秒、俺なりに大事に生きているつもりだ。会いたい奴にしか会わないし、ヒーローになるつもりもない。
「なに、迅ちゃんまたなんか見ちゃった?」
「…………いや」
「だーいじょうぶだって! そうそう悪いことなんか起きねーよ」
根拠はないけど、そんなもんじゃないだろうか。根っからの悪人なんて、俺はこの方会ったことがない。みんなが幸せを願うなら、いつだって世界はハッピーだ。
「……あきと会ってると、ぜーんぶバカバカしくなるよ」
「褒めてるー?」
「褒めてない。けど、」
風が部屋に桜を迷い込ませる。桜に気を取られて、迅の言葉を聞いてなかった。
「え、ごめん。もっかい」
「……そーいうとこが、あきだよねぇ」
迅は笑った。昨日よりも生きた笑顔で。それが見れれば、俺は満足だった。俺の部屋に来る時は決まって、死んだような目で空を見てっから。
「朝メシ、カップ麺しかないけど、食う?」
「じゃあ、いただこうかな」
迅がようやく部屋に戻ってきた。散乱した空き缶を蹴飛ばしながら、俺はヤカンに火をつけた。