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「それでね、迅さんがねーー」
花が咲いたような笑顔で、彼女は俺に話しかける。俺は曖昧に笑い返すだけ。好物のみかんを剥きながら、聞きたくもない彼女の話に相づちを打つ。
好きになった女の子は、迅さんの信者だった。なんでも、大規模侵攻の時に迅さんに助けられたらしい。それに関しては別に珍しい話でもない。現にボーダーでも緑川なんかはそうだし。彼女にとって、迅さんという人は光かなにかなんだろう。それを理解していても、口を開けば出るその名前に、耳を塞ぎたくなるのは仕方のないことだと思う。だって、俺は彼女を好いている。
「私の前に立って、大丈夫かって声をかけてくれたのよ」
「……そうなんだ」
告白したのは俺からだった。彼女が迅さんに特別な思いを寄せているのは知っていた。だからこそ、玉砕は覚悟していた。それなのに、彼女は俺を受け入れてくれた。それが悪夢の始まりだったかもしれない。二人でいる時間は増えたのに、俺の心は乾くばかりで。もし、助けていたのが俺だったら。なんて、非合理的な考えに及んでしまう。口に運んだみかんが酸っぱい。
「その後ね、」
「なあ、」
「?? なあに」
「……お前にとって、迅さんってなんなの」
あれ、おかしいな。彼女にとって俺はなんなのかを訊きたかったのに。
「……太陽みたいな人よ!」
曇りなき視線は、俺に向けられている。けれど、そこからジリジリと焼けていくようで辛い。彼女の背に迅さんがいるからだろうか。彼女の背後に気を取られていたら、逆光で彼女の顔が黒く見える気がして。彼女を見つめ返すのが怖くて。
「……そっか」
そうとしか返せなかった。剥いたみかんは乾き始めている。俺は彼女に見えない位置で手を組んだ。それは、祈る時の姿に似ていた。
花が咲いたような笑顔で、彼女は俺に話しかける。俺は曖昧に笑い返すだけ。好物のみかんを剥きながら、聞きたくもない彼女の話に相づちを打つ。
好きになった女の子は、迅さんの信者だった。なんでも、大規模侵攻の時に迅さんに助けられたらしい。それに関しては別に珍しい話でもない。現にボーダーでも緑川なんかはそうだし。彼女にとって、迅さんという人は光かなにかなんだろう。それを理解していても、口を開けば出るその名前に、耳を塞ぎたくなるのは仕方のないことだと思う。だって、俺は彼女を好いている。
「私の前に立って、大丈夫かって声をかけてくれたのよ」
「……そうなんだ」
告白したのは俺からだった。彼女が迅さんに特別な思いを寄せているのは知っていた。だからこそ、玉砕は覚悟していた。それなのに、彼女は俺を受け入れてくれた。それが悪夢の始まりだったかもしれない。二人でいる時間は増えたのに、俺の心は乾くばかりで。もし、助けていたのが俺だったら。なんて、非合理的な考えに及んでしまう。口に運んだみかんが酸っぱい。
「その後ね、」
「なあ、」
「?? なあに」
「……お前にとって、迅さんってなんなの」
あれ、おかしいな。彼女にとって俺はなんなのかを訊きたかったのに。
「……太陽みたいな人よ!」
曇りなき視線は、俺に向けられている。けれど、そこからジリジリと焼けていくようで辛い。彼女の背に迅さんがいるからだろうか。彼女の背後に気を取られていたら、逆光で彼女の顔が黒く見える気がして。彼女を見つめ返すのが怖くて。
「……そっか」
そうとしか返せなかった。剥いたみかんは乾き始めている。俺は彼女に見えない位置で手を組んだ。それは、祈る時の姿に似ていた。