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影が月を喰らう新月。街の明かりからも離れたこの場所では、星だけが多く輝いて見える。戦闘で荒れ果てた土地のど真ん中、更地のそこにあったものに思いを馳せる。もう思い出せもしないそこにあったものは、確かに存在したはずなのに、今では砂となり舞い上がって、塵となり消えたのだろう。そのうち、人々の記憶の欠片からも消えてなくなる。そうしたものたちは何処へ行くのか。何処へ去っていったのか。遥か頭上の星々は、四年前の光を今届けているのだろうか。
「お、早乙女センパイ。こんなところで寝転んでなにしてんの?」
「ユーマ。お前こそ今日非番だろう?」
「面白いこと言うね。それはセンパイも同じだよ」
ユーマは私の横に並ぶと、同じように寝転んだ。流れ星がひとつ流れたが、お互いに手を合わせることもなく。風が吹けば埃が舞う。ここはさながら捨てられた土地だ。
「ここにいると、全てのものから忘れられて、捨てられたような気分になる」
「ふむ」
「もし、本当にそうなったら、ユーマはどうする?」
「うーむ。また拾ってもらうまで待つかな」
「なるほどね」
「生きていればひとつくらい、いいことあるだろ」
それはここに来てそう思えたのだろうか。そうであるのなら嬉しいが。ユーマの横顔を見れば、その顔は確かに明日を向いていた。私の郷愁など、ちっぽけで意味を成さないかのように。
「死んだら、星になれるかね」
「……珍しくつまんない嘘吐くね、センパイ」
「そうだな」
天空に広がる煌びやかな星たちは、何光年も先で過去より光っているのだ。たとえどんな英雄であろうと、所詮は人に過ぎない我らはきっと、星になれはしないだろう。それでも。
「人はなんで夜空の星に願うのかねえ」
そこには忘れられていく人も物も、いない。それでも、空を仰いで人は誰かを思い出す。
「それを一緒に見た、誰かが恋しいからじゃないかな」
「そうか……そうかもな」
人は死んでも星には届かない。けれども。思いはそこに残るから。残ってしまうから。今日も人は夜空に手を伸ばす。指の隙間から漏れる光は、柔く、暖かく。それでも指の先から冷たくなっていく。
「私は、帰る。ユーマは」
「もう少しここにいるよ」
ああ、足早にそこを去ったのは。この少年を恋しいと思ってしまう前に、逃げ出したかったからだ。
「お、早乙女センパイ。こんなところで寝転んでなにしてんの?」
「ユーマ。お前こそ今日非番だろう?」
「面白いこと言うね。それはセンパイも同じだよ」
ユーマは私の横に並ぶと、同じように寝転んだ。流れ星がひとつ流れたが、お互いに手を合わせることもなく。風が吹けば埃が舞う。ここはさながら捨てられた土地だ。
「ここにいると、全てのものから忘れられて、捨てられたような気分になる」
「ふむ」
「もし、本当にそうなったら、ユーマはどうする?」
「うーむ。また拾ってもらうまで待つかな」
「なるほどね」
「生きていればひとつくらい、いいことあるだろ」
それはここに来てそう思えたのだろうか。そうであるのなら嬉しいが。ユーマの横顔を見れば、その顔は確かに明日を向いていた。私の郷愁など、ちっぽけで意味を成さないかのように。
「死んだら、星になれるかね」
「……珍しくつまんない嘘吐くね、センパイ」
「そうだな」
天空に広がる煌びやかな星たちは、何光年も先で過去より光っているのだ。たとえどんな英雄であろうと、所詮は人に過ぎない我らはきっと、星になれはしないだろう。それでも。
「人はなんで夜空の星に願うのかねえ」
そこには忘れられていく人も物も、いない。それでも、空を仰いで人は誰かを思い出す。
「それを一緒に見た、誰かが恋しいからじゃないかな」
「そうか……そうかもな」
人は死んでも星には届かない。けれども。思いはそこに残るから。残ってしまうから。今日も人は夜空に手を伸ばす。指の隙間から漏れる光は、柔く、暖かく。それでも指の先から冷たくなっていく。
「私は、帰る。ユーマは」
「もう少しここにいるよ」
ああ、足早にそこを去ったのは。この少年を恋しいと思ってしまう前に、逃げ出したかったからだ。