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「これ、水族館のチケットだから。週末に一緒に行こう」
唐突に渡されたそれに困惑の色を見せる。なんの変哲も無いその日は、彼の誕生日だったらしく。
「僕の誕生日のお祝いに、デートしてくれるよね?」
彼特有の首を傾げた懇願に、断る理由も特になくて。ただ、誕生日ならば早めに言って欲しかったくらいで。知らなかった彼の情報に、少しだけ胸を締め付けられた。誕生日プレゼントが私とのデートでいいんだろうか、とか。彼は私をどうしたいのだろう、とか。あれこれ考えているうちに、半ば強制的なデートは、すぐに当日を迎えた。
「さ、行こうか」
待ち合わせ場所に着くと、花のように笑う彼に右手を取られる。二の句も告げず、私は黙って王子についていく。明らかに私は緊張しているが、王子はどうなんだろうか。ちら、と横を見れば鼻歌混じりに微笑んでいた。どうやらご機嫌らしい。水族館には、前売り券を王子が買っていてくれたので、すんなりと入れた。いよいよ、デートのような雰囲気でドキドキしてくる。小さな水槽を一つ一つ覗き込みながら、言葉を探す。けれど、何一ついい言葉が見つからない。それどころか、彼の横顔を見つめて、ああまつ毛が長いなとか。意識するようなことばかりに目がいってしまう。王子は無言が気にならないのか、変わらぬ様子で私の手を引く。そうして、大水槽の前で立ち止まった。
「あきはさ、ウミガメが好きそうだよね」
ようやっと話してくれたと思ったら。なんでそんなことが分かるのだろう。大当たりだった。
「王子は、エイとか好きそうだよね」
「……よく分かったね。なんか嬉しい」
ここで彼は初めて表情を変えた。目を丸くして驚いた顔をした後、繋いでいない方の手で顔を覆う。心なしか、繋いだ手をキュッと握り締められた気がする。だけど、それ以上の会話はなく。ただぼんやりと水槽を見上げた。ウミガメが水槽の上の方を横切る。
「……私でよかったの?」
「変なこと聞くね。あきがよかったんだよ」
不安を打ち明ければ、ガラスに映る彼は真剣な表情になった。横を見れば、ゆっくりとこちらを向く。彼の瞳も、不安そうに揺れて。
「これでも僕、緊張してるんだよ」
そう言われてしまっては、余計に上手く話せない。顔に熱が集まるばかりで、顔を背けてしまいたくなる。けれど彼の澄んだ瞳が、それを許さなかった。
「僕、君が好きなんだ」
一瞬、止まった時間と。そっと呼吸を奪われるまで、あと5秒。
唐突に渡されたそれに困惑の色を見せる。なんの変哲も無いその日は、彼の誕生日だったらしく。
「僕の誕生日のお祝いに、デートしてくれるよね?」
彼特有の首を傾げた懇願に、断る理由も特になくて。ただ、誕生日ならば早めに言って欲しかったくらいで。知らなかった彼の情報に、少しだけ胸を締め付けられた。誕生日プレゼントが私とのデートでいいんだろうか、とか。彼は私をどうしたいのだろう、とか。あれこれ考えているうちに、半ば強制的なデートは、すぐに当日を迎えた。
「さ、行こうか」
待ち合わせ場所に着くと、花のように笑う彼に右手を取られる。二の句も告げず、私は黙って王子についていく。明らかに私は緊張しているが、王子はどうなんだろうか。ちら、と横を見れば鼻歌混じりに微笑んでいた。どうやらご機嫌らしい。水族館には、前売り券を王子が買っていてくれたので、すんなりと入れた。いよいよ、デートのような雰囲気でドキドキしてくる。小さな水槽を一つ一つ覗き込みながら、言葉を探す。けれど、何一ついい言葉が見つからない。それどころか、彼の横顔を見つめて、ああまつ毛が長いなとか。意識するようなことばかりに目がいってしまう。王子は無言が気にならないのか、変わらぬ様子で私の手を引く。そうして、大水槽の前で立ち止まった。
「あきはさ、ウミガメが好きそうだよね」
ようやっと話してくれたと思ったら。なんでそんなことが分かるのだろう。大当たりだった。
「王子は、エイとか好きそうだよね」
「……よく分かったね。なんか嬉しい」
ここで彼は初めて表情を変えた。目を丸くして驚いた顔をした後、繋いでいない方の手で顔を覆う。心なしか、繋いだ手をキュッと握り締められた気がする。だけど、それ以上の会話はなく。ただぼんやりと水槽を見上げた。ウミガメが水槽の上の方を横切る。
「……私でよかったの?」
「変なこと聞くね。あきがよかったんだよ」
不安を打ち明ければ、ガラスに映る彼は真剣な表情になった。横を見れば、ゆっくりとこちらを向く。彼の瞳も、不安そうに揺れて。
「これでも僕、緊張してるんだよ」
そう言われてしまっては、余計に上手く話せない。顔に熱が集まるばかりで、顔を背けてしまいたくなる。けれど彼の澄んだ瞳が、それを許さなかった。
「僕、君が好きなんだ」
一瞬、止まった時間と。そっと呼吸を奪われるまで、あと5秒。