名前なき綺羅星

長く咲くからと聞いてマリーゴールドを植えたが、寒くなれば結局は枯らしてしまった。常花とはどこにあるのだろう。どんな花を常花と呼ぶのか。温室では、そりゃなんだって咲くだろうが。俺は大自然の中、人知れず、誰のものでもなく、ただ凛とそこにある花。そんな花を探している。陽がかげり肌寒いベランダ、白紙に戻すようにプランターの土を入れ替える。乾いた土が指の爪に詰まる。かまわずに、次の花は必ずと、無我夢中で土づくりをした。silent。be silent。唱えるように儀式を続けていく。心が満ちて、凪ぐ。新しい種を埋める。
(この瞬間がいちばんの幸福)
胸にそう浮かんできて、慌てて沈めて。種を植えるのが楽しいだけなら、花はなんのために咲く?車のクラクション、カラスが山に帰る声。真っ赤な夕日に、ベランダで立ち尽くす。be silent。胸のざわめきに、誰かがそう告げて、姿も見せず消えた。……常花探しは、終いにしよう。次の白紙にはなにを書こうか。ペンを持つ手は、まだ震えている。

常花(情景を描く言葉辞典)、白紙に戻す(ことわざ・決まり文句辞典)、 silent(英語ことば選び辞典)
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