三角錐で見る夢
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トルキエ暦72年、白羊月アク・コユンル10日。季節外れの嵐に見舞われた南ルメリアナで、1人の男が町外れの丘を訪れていた。派手な帽子が飛ばされないように、必死に手で抑えながらーーエルバッハは丘にひとつだけ建つ民家を訪ねた。
「ごめんくださーい! いれてー!」
「その声……エルバッハかい? なにもこんな日に来なくても……」
幸い、出迎えられて家の中に入る。びしょびしょに濡れた彼に、乾いた布が下から差し出された。エルバッハの目線から見ると、布を受け取った下から少女が顔を出す形となる。
「エルバッハ、大丈夫?」
綺麗な深緑の瞳に見つめられ、エルバッハは目を細めた。
「こんばんはぁ、リジュちゃん。元気にしてた?」
嵐の夜、エルバッハが訪ねてきた。今回は兄上とは一緒じゃないらしい。じっと見つめていると、エルバッハは苦笑して私を追い払う。
「恥ずかしいから、向こうむいてて?」
「あっ……ごめんなさい!」
顔を覆って、後ろを向く。彼が服を脱ぐ気配に、なぜか体温が上がった気がする。
「エルバッハ、あんたリザンのお古でいいのかい?」
「あーあいつの俺入るかなぁ?」
母さんが古い棚から兄上の服を取り出している。私は2階に上がって、客人の布団を用意しようとした。
「あれ……? あっ雨漏り!?」
運の悪いことに、布団は雨漏りで全滅していた。どれもこれも水を含んで重たくなっている。仕方なく1階に戻り、母を頼る。
「じゃあしょうがないねぇ……エルバッハには床で寝てもらうしか」
「俺はそれでかまわないよー」
「えっえっ……私、床で寝るよ?」
こんな嵐の中やってきて、床で寝たんじゃエルバッハが風邪を引いてしまう。
「私の部屋使ってよ。私、今日は下で寝るから」
「……女の子を床で寝かせたとあっちゃ、タウロの男の名が廃るなぁ」
エルバッハの細長くて男らしい指が、私の髪をすくう。弄びながら、薄く笑って耳打ちする。
「一緒に寝よっか? リジュちゃん」
「えっいいけど……?」
快く了承すると、ポカンとした顔で見下ろされた。首を傾げると、彼は手を頭の後ろで組んで視線を逸らした。
「……??」
「あーもう。あんたらで勝手にやってくれ。私達はもう寝るよ」
母さんとお婆ちゃんは、それぞれの部屋に行ってしまった。居間にはエルバッハと私の2人きり。
「……じゃ、オレたちも寝ようか」
「うん」
エルバッハを自分の部屋に招く。ロウソクの灯りを消して、狭いけれど一つのベッドに入った。
「エルバッハ、身体冷えてるよ」
「えっうん」
くっつけば少しは暖まるだろうと、エルバッハの大きな身体を抱きしめる。兄上の服を着ているからか、懐かしい匂いがして落ち着く。
「リジュちゃん、あのさ」
「う……ん。おやすみなさい」
もう眠気の限界だった。エルバッハがなんか言おうとしてたけど、意識を手放してしまった。
(……こんなの、手出せるわけないじゃん。でも、こんな密着したまま朝迎えられるわけもないし。あーやっぱオレ、床で寝とこ)
朝起きたら、エルバッハは追い出されたように床で寝ていた。
「エルバッハ、ごめん! 狭かった……?」
「あーうん。大丈夫ちゃんと寝れ、っくし!」
エルバッハが豪快にくしゃみをした。くしゃみは止まらず、やがて咳に変わる。
「やっぱり風邪ひいて……! 寒かったでしょ、なんで床で寝たの?」
「…………リジュちゃんが可愛くて、大事だから」
「へっ??」
真面目な顔に、少し染まった頬は風邪のせいだろうか。でも、いつもと違う雰囲気に、私はなんだかいたたまれなくなる。
「わ、私お薬持ってくるね!」
階段を駆け降りて、薬棚を開く。ドキドキと高鳴る心臓に、私は戸惑った。もう風邪が感染ったのだろうか? そんなわけはないはずだ。こんな気持ちは初めてで、私はどうしたらいいのか分からない。
(あ、兄上~~……)
分からないことは、ずっと兄上が教えてくれてきた。でも、兄上はもう私の傍にはいない。なぜなら立派な傭兵として雇われているから。ダメだ、しっかりしなきゃ。なんでも兄上を頼れる時間は終わったんだ。
「これ、薬?」
「ひゃあ!!」
背中からひょい、と薬を取り上げられる。鼻を啜りながら、エルバッハは薬を飲み干した。
「リジュちゃんの部屋で寝てていい? 感染うつしちゃ悪いから、入ってきちゃダメだよ」
「あ、うん。どうぞ……」
怠そうな背中が階段を登っていく。辛そうで、とても申し訳ない気持ちになる。あの様子だと熱もありそうだ。なにか精をつけてもらわないと。
「お粥作って持っていこうかな」
先程の動揺を忘れ、私は厨房へ向かう。料理も兄上に教わった。だから、自信を持って食べてもらえる。塩と胡椒で味つけをして、2階に運んだ。
「お粥、持ってきたよ。食べれる?」
「えっ#リジュ#ちゃんが作ったの?」
エルバッハは嬉しそうに起き上がり、黙々と私の作ったお粥を食べた。あっという間にたいらげると、
「ぷはーっごちそうさま! リジュちゃんはいいお嫁さんになるねぇ~」
「お、お嫁!?」
また私を謎の火照りが襲う。やっぱり私も風邪をひいたのだろうか。
「リジュちゃんが花嫁衣装着たら、そりゃ相当可愛いんだろうな~」
「かわっ……!!」
そわそわして落ち着かなくて。一刻も早くここを離れたくなった。
「わ、わたし感染うつったらあれだから居間にいるね! なにかあったら呼んでね!」
こんな想いの名前を、私は知らないの。
オマケ
熱が下がらないのに、夜は下で寝ると言って聞かないエルバッハ。
「拗らせたらどうするの!」
「んーしばらくここにいよっかなぁ」
ニコッと笑って誤魔化しても、ダメなんだから!
「ちゃんとベッドで寝て!」
「はーい……」
「ごめんくださーい! いれてー!」
「その声……エルバッハかい? なにもこんな日に来なくても……」
幸い、出迎えられて家の中に入る。びしょびしょに濡れた彼に、乾いた布が下から差し出された。エルバッハの目線から見ると、布を受け取った下から少女が顔を出す形となる。
「エルバッハ、大丈夫?」
綺麗な深緑の瞳に見つめられ、エルバッハは目を細めた。
「こんばんはぁ、リジュちゃん。元気にしてた?」
嵐の夜、エルバッハが訪ねてきた。今回は兄上とは一緒じゃないらしい。じっと見つめていると、エルバッハは苦笑して私を追い払う。
「恥ずかしいから、向こうむいてて?」
「あっ……ごめんなさい!」
顔を覆って、後ろを向く。彼が服を脱ぐ気配に、なぜか体温が上がった気がする。
「エルバッハ、あんたリザンのお古でいいのかい?」
「あーあいつの俺入るかなぁ?」
母さんが古い棚から兄上の服を取り出している。私は2階に上がって、客人の布団を用意しようとした。
「あれ……? あっ雨漏り!?」
運の悪いことに、布団は雨漏りで全滅していた。どれもこれも水を含んで重たくなっている。仕方なく1階に戻り、母を頼る。
「じゃあしょうがないねぇ……エルバッハには床で寝てもらうしか」
「俺はそれでかまわないよー」
「えっえっ……私、床で寝るよ?」
こんな嵐の中やってきて、床で寝たんじゃエルバッハが風邪を引いてしまう。
「私の部屋使ってよ。私、今日は下で寝るから」
「……女の子を床で寝かせたとあっちゃ、タウロの男の名が廃るなぁ」
エルバッハの細長くて男らしい指が、私の髪をすくう。弄びながら、薄く笑って耳打ちする。
「一緒に寝よっか? リジュちゃん」
「えっいいけど……?」
快く了承すると、ポカンとした顔で見下ろされた。首を傾げると、彼は手を頭の後ろで組んで視線を逸らした。
「……??」
「あーもう。あんたらで勝手にやってくれ。私達はもう寝るよ」
母さんとお婆ちゃんは、それぞれの部屋に行ってしまった。居間にはエルバッハと私の2人きり。
「……じゃ、オレたちも寝ようか」
「うん」
エルバッハを自分の部屋に招く。ロウソクの灯りを消して、狭いけれど一つのベッドに入った。
「エルバッハ、身体冷えてるよ」
「えっうん」
くっつけば少しは暖まるだろうと、エルバッハの大きな身体を抱きしめる。兄上の服を着ているからか、懐かしい匂いがして落ち着く。
「リジュちゃん、あのさ」
「う……ん。おやすみなさい」
もう眠気の限界だった。エルバッハがなんか言おうとしてたけど、意識を手放してしまった。
(……こんなの、手出せるわけないじゃん。でも、こんな密着したまま朝迎えられるわけもないし。あーやっぱオレ、床で寝とこ)
朝起きたら、エルバッハは追い出されたように床で寝ていた。
「エルバッハ、ごめん! 狭かった……?」
「あーうん。大丈夫ちゃんと寝れ、っくし!」
エルバッハが豪快にくしゃみをした。くしゃみは止まらず、やがて咳に変わる。
「やっぱり風邪ひいて……! 寒かったでしょ、なんで床で寝たの?」
「…………リジュちゃんが可愛くて、大事だから」
「へっ??」
真面目な顔に、少し染まった頬は風邪のせいだろうか。でも、いつもと違う雰囲気に、私はなんだかいたたまれなくなる。
「わ、私お薬持ってくるね!」
階段を駆け降りて、薬棚を開く。ドキドキと高鳴る心臓に、私は戸惑った。もう風邪が感染ったのだろうか? そんなわけはないはずだ。こんな気持ちは初めてで、私はどうしたらいいのか分からない。
(あ、兄上~~……)
分からないことは、ずっと兄上が教えてくれてきた。でも、兄上はもう私の傍にはいない。なぜなら立派な傭兵として雇われているから。ダメだ、しっかりしなきゃ。なんでも兄上を頼れる時間は終わったんだ。
「これ、薬?」
「ひゃあ!!」
背中からひょい、と薬を取り上げられる。鼻を啜りながら、エルバッハは薬を飲み干した。
「リジュちゃんの部屋で寝てていい? 感染うつしちゃ悪いから、入ってきちゃダメだよ」
「あ、うん。どうぞ……」
怠そうな背中が階段を登っていく。辛そうで、とても申し訳ない気持ちになる。あの様子だと熱もありそうだ。なにか精をつけてもらわないと。
「お粥作って持っていこうかな」
先程の動揺を忘れ、私は厨房へ向かう。料理も兄上に教わった。だから、自信を持って食べてもらえる。塩と胡椒で味つけをして、2階に運んだ。
「お粥、持ってきたよ。食べれる?」
「えっ#リジュ#ちゃんが作ったの?」
エルバッハは嬉しそうに起き上がり、黙々と私の作ったお粥を食べた。あっという間にたいらげると、
「ぷはーっごちそうさま! リジュちゃんはいいお嫁さんになるねぇ~」
「お、お嫁!?」
また私を謎の火照りが襲う。やっぱり私も風邪をひいたのだろうか。
「リジュちゃんが花嫁衣装着たら、そりゃ相当可愛いんだろうな~」
「かわっ……!!」
そわそわして落ち着かなくて。一刻も早くここを離れたくなった。
「わ、わたし感染うつったらあれだから居間にいるね! なにかあったら呼んでね!」
こんな想いの名前を、私は知らないの。
オマケ
熱が下がらないのに、夜は下で寝ると言って聞かないエルバッハ。
「拗らせたらどうするの!」
「んーしばらくここにいよっかなぁ」
ニコッと笑って誤魔化しても、ダメなんだから!
「ちゃんとベッドで寝て!」
「はーい……」
