三角錐で見る夢
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トルキエ暦70年、茶月チャイ25日。越年祭を実家で過ごすため、リザンは今の主人ーーイスマイルから休暇をもらい、南ルメリアナに向かっていた。途中、山羊の都カプラでエルバッハと落ち合う。雪がちらつく年の瀬、寒さで肩をすくめながら、並んで一年のことを話す。
「#リジュ#ちゃんをタウロ市に送るとか、言い出したの誰なの結局? 大変だったんだからな本当」
「ははは、でも楽しかったろ? そうそう、これ礼な」
金の詰まった袋を何気なく差し出され、エルバッハは目を見開く。そして、戸惑いなく袋を受け取ると、嬉しそうに胸元に仕舞った。
「……景気いいじゃん。どこに雇われたんだっけ」
「ブチャク将国の将子ベイオウルだ。まぁ結構、尽くしがいがある人だよ」
「へーいいなー」
仲良く会話を続けながら、今日泊まるための宿屋に向かう。宿屋の扉をくぐると、暖炉で温められた空気が外へ向かって吹き抜ける。記帳を済ませるのと、ロビーにいた少女がこちらに駆け寄ってくるのは同時だった。
「兄上! エルバッハ!」
この都まで2人を迎えにきた#リジュ#は、久方ぶりに会う兄に飛びついて笑顔を見せるのだった。
会うのはもう少し先だと思っていたから、純粋に驚いた。リザンに抱っこされ、頬をすりすりとしているのが可愛い。ずるい、オレだって#リジュ#ちゃんとすりすりしたい。
「#リジュ#ちゃん、ここまで遠かったでしょ? 大丈夫だった?」
「うん、大丈夫! ひとりでも平気だよ!」
自慢げにピースサインを掲げる彼女を、もみくちゃに撫で回したい衝動を抑える。しっかり者だけど愛嬌たっぷりで、こんな可愛い子ほかにいるのかとさえ思う。
「……エルバッハお前、すげぇ幸せそうだけど人に見せられねぇ顔してんぞ」
「ゔぇ、マジで」
「エルバッハ、へんな顔〜」
ケラケラとまた違う笑顔を見せる#リジュ#ちゃんに、もういいやと降参。君が笑ってくれるなら、変な顔しててもいいや。そんなオレを、リザンは呆れた目で見てため息を吐く。
「あっため息吐くことないだろ。お前だって#リジュ#ちゃん大好きなくせに」
「俺は兄貴として好きなんだよ。なー#リジュ#? リジュも兄上のこと好きだよな?」
「うん、好きー!」
牽制するように兄妹仲を見せつけるリザンが憎たらしい。今度はオレが呆れた態度を示して、宿の部屋に先に入ろうとした時だった。
「エルバッハも好きー」
控えめに、少し恥じらった声が聞こえた。オレはリザンと#リジュ#ちゃんの顔が見れない。
「今のはほんと無理、顔見せらんない」
「はっはっは! リジュよかったなーエルバッハもお前が大好きだってさ」
「?? うん」
いつのまにか寒さなんて感じなくなっていて、火照る身体を冷ますように上着を脱いだ。部屋にはベッドが2つあり、東向きに窓もついているのでなかなかいい部屋だと思った。部屋の奥のベッドにオレが腰かけ、手前のベッドにリザンとリジュちゃんが腰かける。
「リジュ、タウロ市は楽しかったか?」
「うん、エルバッハも一緒にいてくれたし、楽しかったよー」
ニコニコと笑顔を崩さない彼女に、複雑な気分になる。慣れない環境で熱だって出したし、怪我だってしたし……オレがいたって、辛い思いをたくさんしたはずなのに、#リジュ#ちゃんはおくびにも出さない。
「市長の試験、クリアしたってな。500人抜きだっけか」
「そう、それを1ヶ月半で。#リジュ#ちゃんは1日で10人は倒してる」
「そりゃすごい」
リザンはぽんと#リジュ#ちゃんの頭に手を置くと一言、
「よく頑張ったな」
と、褒めた。その眼差しがあまりに優しくて、なんだかこちらまで心臓が高鳴る。……オレはやっぱり、リザンのようにはなれないや。そう羨望した時だった。
「あ、あれ……?」
ポロポロと、#リジュ#ちゃんの頬に涙がつたう。無意識にこぼれたようで、#リジュ#ちゃんも驚きながら目を擦る。それでも、涙は止まらない。
「リジュ、擦ったらいけない」
リザンが止めようとするが、#リジュ#ちゃんは背を向けた。そうして、顔を隠しながらオレの方に来るではないか。
「エルバッハ、涙止まらないの……どうしたらいい?」
鼻声でオレに泣きつく君の、大きな瞳にまた囚われて。しばらく、言葉を失った。涙の雫ひとつ残らず、綺麗に見えた。
「エルバッハぁ」
「あっごめん、大丈夫、大丈夫だよ」
おそるおそる抱き止めて、背中を撫でてあげた。嗚咽が混じりだすのに、心配で仕方なくなり抱きしめる力を強めた。
「………やっぱり、傭兵になるなんてオレ」
反対だよ、と言いかけて言葉を飲み込んだ。きっと#リジュ#ちゃんは、リザンにも反対されていたことを褒めてもらえたから、泣いているんだ。彼女が見つめる道を、否定するのは今じゃなくていい。
「大丈夫、大丈夫だよ」
なにに対してなのか、分からない言葉を重ねる。それでも#リジュ#ちゃんは安心してくれたのか、泣き声は次第に小さくなった。君を守るには、オレはどう強くなったらいいんだろう。
オマケ
「随分と懐いたなー兄上、嫉妬」
よく言うよ、とオレは思う。泣き終わったら、#リジュ#ちゃんはまたリザンの元に戻ってしまった。ちょっぴり、いやかなり寂しい。
「#リジュ#ちゃんをタウロ市に送るとか、言い出したの誰なの結局? 大変だったんだからな本当」
「ははは、でも楽しかったろ? そうそう、これ礼な」
金の詰まった袋を何気なく差し出され、エルバッハは目を見開く。そして、戸惑いなく袋を受け取ると、嬉しそうに胸元に仕舞った。
「……景気いいじゃん。どこに雇われたんだっけ」
「ブチャク将国の将子ベイオウルだ。まぁ結構、尽くしがいがある人だよ」
「へーいいなー」
仲良く会話を続けながら、今日泊まるための宿屋に向かう。宿屋の扉をくぐると、暖炉で温められた空気が外へ向かって吹き抜ける。記帳を済ませるのと、ロビーにいた少女がこちらに駆け寄ってくるのは同時だった。
「兄上! エルバッハ!」
この都まで2人を迎えにきた#リジュ#は、久方ぶりに会う兄に飛びついて笑顔を見せるのだった。
会うのはもう少し先だと思っていたから、純粋に驚いた。リザンに抱っこされ、頬をすりすりとしているのが可愛い。ずるい、オレだって#リジュ#ちゃんとすりすりしたい。
「#リジュ#ちゃん、ここまで遠かったでしょ? 大丈夫だった?」
「うん、大丈夫! ひとりでも平気だよ!」
自慢げにピースサインを掲げる彼女を、もみくちゃに撫で回したい衝動を抑える。しっかり者だけど愛嬌たっぷりで、こんな可愛い子ほかにいるのかとさえ思う。
「……エルバッハお前、すげぇ幸せそうだけど人に見せられねぇ顔してんぞ」
「ゔぇ、マジで」
「エルバッハ、へんな顔〜」
ケラケラとまた違う笑顔を見せる#リジュ#ちゃんに、もういいやと降参。君が笑ってくれるなら、変な顔しててもいいや。そんなオレを、リザンは呆れた目で見てため息を吐く。
「あっため息吐くことないだろ。お前だって#リジュ#ちゃん大好きなくせに」
「俺は兄貴として好きなんだよ。なー#リジュ#? リジュも兄上のこと好きだよな?」
「うん、好きー!」
牽制するように兄妹仲を見せつけるリザンが憎たらしい。今度はオレが呆れた態度を示して、宿の部屋に先に入ろうとした時だった。
「エルバッハも好きー」
控えめに、少し恥じらった声が聞こえた。オレはリザンと#リジュ#ちゃんの顔が見れない。
「今のはほんと無理、顔見せらんない」
「はっはっは! リジュよかったなーエルバッハもお前が大好きだってさ」
「?? うん」
いつのまにか寒さなんて感じなくなっていて、火照る身体を冷ますように上着を脱いだ。部屋にはベッドが2つあり、東向きに窓もついているのでなかなかいい部屋だと思った。部屋の奥のベッドにオレが腰かけ、手前のベッドにリザンとリジュちゃんが腰かける。
「リジュ、タウロ市は楽しかったか?」
「うん、エルバッハも一緒にいてくれたし、楽しかったよー」
ニコニコと笑顔を崩さない彼女に、複雑な気分になる。慣れない環境で熱だって出したし、怪我だってしたし……オレがいたって、辛い思いをたくさんしたはずなのに、#リジュ#ちゃんはおくびにも出さない。
「市長の試験、クリアしたってな。500人抜きだっけか」
「そう、それを1ヶ月半で。#リジュ#ちゃんは1日で10人は倒してる」
「そりゃすごい」
リザンはぽんと#リジュ#ちゃんの頭に手を置くと一言、
「よく頑張ったな」
と、褒めた。その眼差しがあまりに優しくて、なんだかこちらまで心臓が高鳴る。……オレはやっぱり、リザンのようにはなれないや。そう羨望した時だった。
「あ、あれ……?」
ポロポロと、#リジュ#ちゃんの頬に涙がつたう。無意識にこぼれたようで、#リジュ#ちゃんも驚きながら目を擦る。それでも、涙は止まらない。
「リジュ、擦ったらいけない」
リザンが止めようとするが、#リジュ#ちゃんは背を向けた。そうして、顔を隠しながらオレの方に来るではないか。
「エルバッハ、涙止まらないの……どうしたらいい?」
鼻声でオレに泣きつく君の、大きな瞳にまた囚われて。しばらく、言葉を失った。涙の雫ひとつ残らず、綺麗に見えた。
「エルバッハぁ」
「あっごめん、大丈夫、大丈夫だよ」
おそるおそる抱き止めて、背中を撫でてあげた。嗚咽が混じりだすのに、心配で仕方なくなり抱きしめる力を強めた。
「………やっぱり、傭兵になるなんてオレ」
反対だよ、と言いかけて言葉を飲み込んだ。きっと#リジュ#ちゃんは、リザンにも反対されていたことを褒めてもらえたから、泣いているんだ。彼女が見つめる道を、否定するのは今じゃなくていい。
「大丈夫、大丈夫だよ」
なにに対してなのか、分からない言葉を重ねる。それでも#リジュ#ちゃんは安心してくれたのか、泣き声は次第に小さくなった。君を守るには、オレはどう強くなったらいいんだろう。
オマケ
「随分と懐いたなー兄上、嫉妬」
よく言うよ、とオレは思う。泣き終わったら、#リジュ#ちゃんはまたリザンの元に戻ってしまった。ちょっぴり、いやかなり寂しい。
