三角錐で見る夢
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
トルキエ暦70年。第45将子クルク・ベシュ・ベイオウル武器商のスィラーフイスマイルが11歳の夏、第6将子アルトゥ・ベイオウルサルマンが夏風邪を拗らせ、その末に無惨な最期を遂げた。人格者であったサルマンの死はイスマイルに少なからずや衝撃を与えた。力を持てば、将王スルタンの座を狙うのであればいずれ自分もーーそう恐れたイスマイルが雇ったのが、南ルメリアナが誇る最強の傭兵、山の楽団オルケスタ・デ・モンターニャである。金さえあれば、忠誠篤く働いてくれるその性質は、イスマイルのお眼鏡に叶ったのだった。しかし、最初から大人数を雇ったわけではない。初めの1人、一番最初に雇われたのはーー17歳のリザン、リジュの兄であった。
イスマイル様は慎重な方だ。もっと言ってしまえば、臆病と思うこともある。常に命を狙われる将子ベイオウルの宿命と言われれば、その通りだと思う。なんだって妹と年齢も変わらない彼が、こんな厳しい環境にいなくてはならないのだろう。彼が手にする、手にしたいものにそんな価値はあるだろうか。俺の友達と話せば、落伍おちてでも逃げると言うだろうか。とにかく、最初は支える主人の身の上を、あれやこれや心配していた。
将王スルタンウズンとの謁見の後、帰りが夜道となった日があった。幼いイスマイル様の手を繋ごうとして怒られたっけか(いつもの癖が出てしまった)。だがその日、俺は初めて仕事らしい仕事をした。
「イスマイル様っ!!」
「!?」
暴漢……明らかに誰かに雇われた、に襲われたのだ。幼い子供相手に、ご丁寧に4人も人数を揃えて。暗闇でよく獲物は見えないが、おぞましい形をしてるのは分かった。俺はイスマイル様に離れないように言うと、主人を守りながら戦いを開始した。腕前は大したことはなく、次々と倒すことは出来たのだが。
「リザン!!」
最後の1人に、死角を取られて主人を傷つけられそうになった。幸い、間に合ったが俺は顎に裂傷を負った。
「イスマイル様、もう大丈夫ですよ」
「あ、あぁ」
カタカタと震え、俺の服の裾を握る主人が、酷く小さく見えた。しかし、怖いだとか嫌だとか、そんな弱音は一切吐かずに。
「山の楽団オルケスタは皆、お前のように強いか?」
「……そうですね。俺と同等以上には」
「そうか」
次の心配をしなくてはならない主人を、気の毒に思うのはきっと不敬だと思った。だからこそ。
「イスマイル様は、死ぬのが怖いですか?」
「な、なんだ突然……何も成さずに死ぬのなんて、嫌に決まってるだろう」
「そうですか、では」
この主人とは、きっと長い付き合いになるから。
「貴方が恐れるものは全て、このリザンが退けてみせましょう」
それを聞いて、イスマイル様は目を見開いた。そうして、少しだけ笑った。
「傭兵のくせに、忠誠に篤くて結構なことだ」
これは俺が勝手にイスマイル様に誓った約束だ。
イスマイル様は慎重な方だ。もっと言ってしまえば、臆病と思うこともある。常に命を狙われる将子ベイオウルの宿命と言われれば、その通りだと思う。なんだって妹と年齢も変わらない彼が、こんな厳しい環境にいなくてはならないのだろう。彼が手にする、手にしたいものにそんな価値はあるだろうか。俺の友達と話せば、落伍おちてでも逃げると言うだろうか。とにかく、最初は支える主人の身の上を、あれやこれや心配していた。
将王スルタンウズンとの謁見の後、帰りが夜道となった日があった。幼いイスマイル様の手を繋ごうとして怒られたっけか(いつもの癖が出てしまった)。だがその日、俺は初めて仕事らしい仕事をした。
「イスマイル様っ!!」
「!?」
暴漢……明らかに誰かに雇われた、に襲われたのだ。幼い子供相手に、ご丁寧に4人も人数を揃えて。暗闇でよく獲物は見えないが、おぞましい形をしてるのは分かった。俺はイスマイル様に離れないように言うと、主人を守りながら戦いを開始した。腕前は大したことはなく、次々と倒すことは出来たのだが。
「リザン!!」
最後の1人に、死角を取られて主人を傷つけられそうになった。幸い、間に合ったが俺は顎に裂傷を負った。
「イスマイル様、もう大丈夫ですよ」
「あ、あぁ」
カタカタと震え、俺の服の裾を握る主人が、酷く小さく見えた。しかし、怖いだとか嫌だとか、そんな弱音は一切吐かずに。
「山の楽団オルケスタは皆、お前のように強いか?」
「……そうですね。俺と同等以上には」
「そうか」
次の心配をしなくてはならない主人を、気の毒に思うのはきっと不敬だと思った。だからこそ。
「イスマイル様は、死ぬのが怖いですか?」
「な、なんだ突然……何も成さずに死ぬのなんて、嫌に決まってるだろう」
「そうですか、では」
この主人とは、きっと長い付き合いになるから。
「貴方が恐れるものは全て、このリザンが退けてみせましょう」
それを聞いて、イスマイル様は目を見開いた。そうして、少しだけ笑った。
「傭兵のくせに、忠誠に篤くて結構なことだ」
これは俺が勝手にイスマイル様に誓った約束だ。
