三角錐で見る夢
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トルキエ暦68年、白砂糖月シェケルの中旬。2人の男が丘の上で討論をしていた。
「だからさー仕事に高値つけてくれる相手に従順なのは当然だよ? けど、忠誠まで誓わなくてもいいんじゃないの?」
「忠誠誓わなきゃ命の賭けがいがないだろうが」
「いや、死んだら元も子もないじゃん。せっかく金貰ってんのに」
友人である2人ーーリザンとエルバッハは、同じ傭兵でありながらも、仕事のスタンスは違うようだ。リジュは2人の間に膝を抱えて座っていた。暇を潰すのに、足元の野草をぷちぷちとちぎる。
「あ、こら。可哀想だろ」
リジュの手遊びを、リザンは咎めて膝の上に抱えた。それを少し羨ましそうにエルバッハは見つめる。
「ねぇ、リジュちゃんはどう思う?」
「さっきのおはなし?」
「そうそう」
エルバッハの問いかけに、#リジュ#は笑顔で答えた。
「勝ち続けて生きて帰ればいいとおもう!」
それを聞いて、男2人は顔を見合わせて苦笑する。
「それが出来ればなー苦労しないよなー」
リザンがクシャクシャとリジュの頭を撫でる。それをやっぱり、エルバッハは羨む目で見るのだった。
リジュちゃんを大人の話で退屈させてしまったので、少し散歩して場所を移した。緩やかな斜面に、シロツメクサが群生している場所を見つける。
「クローバーだぁ」
「四つ葉のクローバー、探すかい?」
「うん!」
リジュちゃんが花畑に足を踏み入れる。白い花と白い肌、そこに真っ黒な髪が映えて、大きな瞳がキラキラ光って……絵心なんてないけど、絵にしたいと思った。
「エルバッハ、はやくぅ」
「あ、ごめんね!」
屈んで目を凝らし、彼女のために幸運のクローバーを探す。葉をかき分けて、辺り一帯を見渡すが、案外見つからないものだ。
「エルバッハ、」
「ん、なあに?」
集中してて、リジュちゃんに背を向けていた。振り向くと、フワッと花びらが舞う。そして、オレの帽子に花冠が乗せられていた。
「あげる!」
「っ、ありがとう……」
だから、8歳の女の子にドキドキしすぎだってオレ。恥ずかしくなって俯いて、必死に四つ葉を探すフリをした。
「ふーん、エルバッハ。もしかして幼女趣味あるか?」
「うっわぁ!! ……急に話しかけてくるなよリザン!!」
リザンがいたことを忘れていた。リザンははっはっはと高笑いをする。面白がりやがって。
「あ、兄上にもはなかんむり作るー」
花を摘もうとするリジュちゃんの手を、リザンはそっと止めた。リジュちゃんもオレも首を傾げる。
「俺の分はいいよ」
「えーなんでー」
「可哀想だろ。好きな花なら、摘まないでやれ。頑張ってそこで生きてるんだから」
リザンの言うことを、リジュちゃんは黙って聞いていた。
「ありのままを受け入れる強さと愛情が必要だって、父さんの言葉忘れたか?」
「ううん、ごめんなさい」
「謝るほどのことじゃない。分かったならいいんだ」
(真面目だなぁ……けど、カッコいいよなリザンは)
なんだか敗北した気分で、オレは花冠を見つめた。まぁ、リジュちゃんのこともリザンのことも、オレは全部知ってるわけじゃないけど。落伍者のオレとは、同じ傭兵でも住む世界が違うよなと思った。
楽しい時間はすぐ過ぎ去ってしまうなんて言うけれど。4月29日、オレたちの休暇も終わりで、また傭兵業に戻らなくてはならないのだが。
「いやだ! エルバッハともっと遊ぶ!」
「こら、リジュ! いい加減聞き分けなさい!」
「いやなもんはいやだー!!」
朝から暗い顔だったリジュちゃんが、いよいよ別れ際になってぐずり始めてしまった。母親に叱られても、オレの足に引っ付いて離れない。まぁ、まだ8歳だもんな……。オレは家族なんてクソ喰らえと思ってるけど、リジュちゃんにとって男の家族はリザンだけ。よっぽど寂しいのかもしれない。
「珍しいな、#リジュ#がこんなにワガママを言うの」
「えっそうなの?」
「よっぽど、気に入られたんじゃないか?」
よかったな、とリザンに小突かれて頬に熱が集まる。いやいや、そういうんじゃない、そういうんじゃないから。自分に必死に言い聞かせた。そんなオレには気付かずに、リジュちゃんはついに座り込んで抗議を始めた。可愛いんだけど、これには困ってしまう。
「ごめんね、リジュちゃん。オレたち、行かないと」
「…………またあえる?」
「会えるよ、会いに来るから。ね?」
微笑んで見せても、ギュウッとズボンの裾を握りしめるだけで離れてはくれない。本当に参った。
「あーそうだ! #リジュ#、エルバッハにお手紙書いてもらえ」
「おてがみ?」
「そ。それなら寂しくないだろ? 婆ちゃんに字も教わってるんだし」
リザンの提案に、ようやく涙目でリジュちゃんは解放してくれた。リザンは本当に妹の扱いが上手いな、と感心してしまう。
「おてがみ、かきます。かくから、おへんじください」
「うん、約束するよ」
頭を撫でてあげれば、ようやく笑ってくれた。オレの顔も、自然と綻ぶ。こんなオレに帰る場所が出来たようで、なんだか安心のようなくすぐったいような、温かい気持ちを抱えて。オレはまた戦場に戻る。
オマケ
#リジュ#ちゃんから、初めての手紙が届いた。
「エルバッハへ
こないだはありがとう! とってもたのしかったです。おれいに、このまえのはなばたけで、あのあとみつけたよつばのクローバーをあげます。あにうえにはないしょにしてね #リジュ#より」
水を失って少し色褪せたクローバーが、封筒から出てきた。こんなものが、オレに幸運を運んでくるかもなんて。そんなしょうもないことを思った。
「だからさー仕事に高値つけてくれる相手に従順なのは当然だよ? けど、忠誠まで誓わなくてもいいんじゃないの?」
「忠誠誓わなきゃ命の賭けがいがないだろうが」
「いや、死んだら元も子もないじゃん。せっかく金貰ってんのに」
友人である2人ーーリザンとエルバッハは、同じ傭兵でありながらも、仕事のスタンスは違うようだ。リジュは2人の間に膝を抱えて座っていた。暇を潰すのに、足元の野草をぷちぷちとちぎる。
「あ、こら。可哀想だろ」
リジュの手遊びを、リザンは咎めて膝の上に抱えた。それを少し羨ましそうにエルバッハは見つめる。
「ねぇ、リジュちゃんはどう思う?」
「さっきのおはなし?」
「そうそう」
エルバッハの問いかけに、#リジュ#は笑顔で答えた。
「勝ち続けて生きて帰ればいいとおもう!」
それを聞いて、男2人は顔を見合わせて苦笑する。
「それが出来ればなー苦労しないよなー」
リザンがクシャクシャとリジュの頭を撫でる。それをやっぱり、エルバッハは羨む目で見るのだった。
リジュちゃんを大人の話で退屈させてしまったので、少し散歩して場所を移した。緩やかな斜面に、シロツメクサが群生している場所を見つける。
「クローバーだぁ」
「四つ葉のクローバー、探すかい?」
「うん!」
リジュちゃんが花畑に足を踏み入れる。白い花と白い肌、そこに真っ黒な髪が映えて、大きな瞳がキラキラ光って……絵心なんてないけど、絵にしたいと思った。
「エルバッハ、はやくぅ」
「あ、ごめんね!」
屈んで目を凝らし、彼女のために幸運のクローバーを探す。葉をかき分けて、辺り一帯を見渡すが、案外見つからないものだ。
「エルバッハ、」
「ん、なあに?」
集中してて、リジュちゃんに背を向けていた。振り向くと、フワッと花びらが舞う。そして、オレの帽子に花冠が乗せられていた。
「あげる!」
「っ、ありがとう……」
だから、8歳の女の子にドキドキしすぎだってオレ。恥ずかしくなって俯いて、必死に四つ葉を探すフリをした。
「ふーん、エルバッハ。もしかして幼女趣味あるか?」
「うっわぁ!! ……急に話しかけてくるなよリザン!!」
リザンがいたことを忘れていた。リザンははっはっはと高笑いをする。面白がりやがって。
「あ、兄上にもはなかんむり作るー」
花を摘もうとするリジュちゃんの手を、リザンはそっと止めた。リジュちゃんもオレも首を傾げる。
「俺の分はいいよ」
「えーなんでー」
「可哀想だろ。好きな花なら、摘まないでやれ。頑張ってそこで生きてるんだから」
リザンの言うことを、リジュちゃんは黙って聞いていた。
「ありのままを受け入れる強さと愛情が必要だって、父さんの言葉忘れたか?」
「ううん、ごめんなさい」
「謝るほどのことじゃない。分かったならいいんだ」
(真面目だなぁ……けど、カッコいいよなリザンは)
なんだか敗北した気分で、オレは花冠を見つめた。まぁ、リジュちゃんのこともリザンのことも、オレは全部知ってるわけじゃないけど。落伍者のオレとは、同じ傭兵でも住む世界が違うよなと思った。
楽しい時間はすぐ過ぎ去ってしまうなんて言うけれど。4月29日、オレたちの休暇も終わりで、また傭兵業に戻らなくてはならないのだが。
「いやだ! エルバッハともっと遊ぶ!」
「こら、リジュ! いい加減聞き分けなさい!」
「いやなもんはいやだー!!」
朝から暗い顔だったリジュちゃんが、いよいよ別れ際になってぐずり始めてしまった。母親に叱られても、オレの足に引っ付いて離れない。まぁ、まだ8歳だもんな……。オレは家族なんてクソ喰らえと思ってるけど、リジュちゃんにとって男の家族はリザンだけ。よっぽど寂しいのかもしれない。
「珍しいな、#リジュ#がこんなにワガママを言うの」
「えっそうなの?」
「よっぽど、気に入られたんじゃないか?」
よかったな、とリザンに小突かれて頬に熱が集まる。いやいや、そういうんじゃない、そういうんじゃないから。自分に必死に言い聞かせた。そんなオレには気付かずに、リジュちゃんはついに座り込んで抗議を始めた。可愛いんだけど、これには困ってしまう。
「ごめんね、リジュちゃん。オレたち、行かないと」
「…………またあえる?」
「会えるよ、会いに来るから。ね?」
微笑んで見せても、ギュウッとズボンの裾を握りしめるだけで離れてはくれない。本当に参った。
「あーそうだ! #リジュ#、エルバッハにお手紙書いてもらえ」
「おてがみ?」
「そ。それなら寂しくないだろ? 婆ちゃんに字も教わってるんだし」
リザンの提案に、ようやく涙目でリジュちゃんは解放してくれた。リザンは本当に妹の扱いが上手いな、と感心してしまう。
「おてがみ、かきます。かくから、おへんじください」
「うん、約束するよ」
頭を撫でてあげれば、ようやく笑ってくれた。オレの顔も、自然と綻ぶ。こんなオレに帰る場所が出来たようで、なんだか安心のようなくすぐったいような、温かい気持ちを抱えて。オレはまた戦場に戻る。
オマケ
#リジュ#ちゃんから、初めての手紙が届いた。
「エルバッハへ
こないだはありがとう! とってもたのしかったです。おれいに、このまえのはなばたけで、あのあとみつけたよつばのクローバーをあげます。あにうえにはないしょにしてね #リジュ#より」
水を失って少し色褪せたクローバーが、封筒から出てきた。こんなものが、オレに幸運を運んでくるかもなんて。そんなしょうもないことを思った。
