三角錐で見る夢
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トルキエ暦75年、酒月ラク9日。ブチャク将国のジン商会は、海の都ヴェネディックとの交易品を仕入れるため、ルメリアナの心臓地方クオーレ・ディ・ルメリアナの一国家、泉の都フォンテを訪れていた。ここまでの遠出はジン商会にとっても、後継者と目されるイスマイルにとっても初めてのことである。慣れない町と、この地方特有のトルキエ嫌いによって、商売は難航していた。イスマイルの護衛の(少なくとも本人はそう思っている)リジュは、見たことのない品々に目を輝かせながらも、好奇心を押し殺してイスマイルの後ろを歩いていた。
ルメリアナの心臓地方クオーレ・ディ・ルメリアナでの商売が、ここまでし辛いとは思っていなかった。この地方や海の都ヴェネディックから、直接買い付けるルートが出来れば、商会はもっと大きくなるかと思ったのだが。
「そこの可愛こちゃん、こっち寄っといで!」
「えっと、イスマイル様、」
リジュが俺の服の裾を引く。呼ばれた方へ顔を出すと、明らかに嫌な顔をされてしまう。連中が興味あるのはリジュであって、俺はお呼びではないらしい。正直言って腹立たしいが、営業スマイルを崩すわけにもいかない。そわそわとするリジュに、仕事じゃなきゃなんか買ってやるのに……と思考が巡って頭を振る。なんでそんな恋人みたいなこと……!!
「イスマイル様、天幕チャドルに戻って少し休まれては?」
「あ、あぁ。そうだな。そうするか」
半日、歩き倒しだ。策も練らねばならない。リジュの言う通り、天幕チャドルに戻ろうとした時だ。
「あ、エルバッハ!!」
えるばっは? リジュから出る聞き慣れない名前に振り返るが、そこにいるはずのリジュはいなくて。焦って周囲を見渡せば、大柄の男に飛びついているリジュを見つけた。思わず眉間に皺が寄る。
「リジュ……??」
「あっイスマイル様すみません!」
俺は動揺を隠せているだろうか。リジュが断りなく俺の側を離れるのは、初めてのことだ。
「イスマイル様、彼は兄上のお友達のエルバッハです!」
「友達…………ね」
友達に普通、この年頃の娘が飛びつくか?
「あらら、怖い顔だね。それがお手紙で書いてた雇い主さん?」
「うん! イスマイル様だよ!」
「手紙……??」
そういえば、#リジュ#がたまに机に向かってなにか書いていたのを思い出す。まさかこの男宛てに手紙を書いていたのか……?
「イスマイル様……?」
なんだか泣きそうな声で、リジュはオロオロしだす。そんなにこの男が大事なのか。とりあえず、事情を知ってるあいつに詳細を訊きたい。
「リザン、いるか!?」
リジュの兄である、山の楽団オルケスタ・デ・モンターニャのリザンを呼ぶ。
「はい、なにかご入用ですかっと……」
リザンは目の前の光景に目を見開くと、まずリジュを手招いてあやした。
「エルバッハ、リジュのこと見ててくれるか?」
勝手にリジュをあんな奴に任せるな、と睨んだが、大丈夫だと目配せされる。リザンの判断だから、問題はないと思うが気に食わない。
「そう怖い顔しないでくださいよ、イスマイル様」
「お題目はいい。さっさと説明しろ」
リザンは苦笑して、口を開いた。
「俺の友達です。リジュにとってもそうでしょう」
「……あいつにとっては?」
「さぁ、どうでしょうね?」
「お前……!!」
ハッハッハ、とリザンは高らかに笑った。
「イスマイル様が見た通りですよ。あいつは昔からあんなんです」
「止めなくていいのか、兄として」
「止めて欲しいのは貴方では?」
ニッと笑顔を見せるリザンが憎たらしい。こいつには俺の気持ちは筒抜けなんだろう。穴があれば入りたい。思わず、舌打ちが出た。
「さて、ちょっと俺はエルバッハに挨拶してきますね」
リザンがリジュを呼び戻す。どこか名残惜しそうにして、こちらに戻ってきたリジュの両頬をむにゅっと潰してやった。
「にゃ、にゃにしゅるんでしゅか」
「うるさい」
なにも分かってない顔に安心するような、焦るような。でも、胸の内なんて絶対教えてやるものか。
ルメリアナの心臓地方クオーレ・ディ・ルメリアナでの商売が、ここまでし辛いとは思っていなかった。この地方や海の都ヴェネディックから、直接買い付けるルートが出来れば、商会はもっと大きくなるかと思ったのだが。
「そこの可愛こちゃん、こっち寄っといで!」
「えっと、イスマイル様、」
リジュが俺の服の裾を引く。呼ばれた方へ顔を出すと、明らかに嫌な顔をされてしまう。連中が興味あるのはリジュであって、俺はお呼びではないらしい。正直言って腹立たしいが、営業スマイルを崩すわけにもいかない。そわそわとするリジュに、仕事じゃなきゃなんか買ってやるのに……と思考が巡って頭を振る。なんでそんな恋人みたいなこと……!!
「イスマイル様、天幕チャドルに戻って少し休まれては?」
「あ、あぁ。そうだな。そうするか」
半日、歩き倒しだ。策も練らねばならない。リジュの言う通り、天幕チャドルに戻ろうとした時だ。
「あ、エルバッハ!!」
えるばっは? リジュから出る聞き慣れない名前に振り返るが、そこにいるはずのリジュはいなくて。焦って周囲を見渡せば、大柄の男に飛びついているリジュを見つけた。思わず眉間に皺が寄る。
「リジュ……??」
「あっイスマイル様すみません!」
俺は動揺を隠せているだろうか。リジュが断りなく俺の側を離れるのは、初めてのことだ。
「イスマイル様、彼は兄上のお友達のエルバッハです!」
「友達…………ね」
友達に普通、この年頃の娘が飛びつくか?
「あらら、怖い顔だね。それがお手紙で書いてた雇い主さん?」
「うん! イスマイル様だよ!」
「手紙……??」
そういえば、#リジュ#がたまに机に向かってなにか書いていたのを思い出す。まさかこの男宛てに手紙を書いていたのか……?
「イスマイル様……?」
なんだか泣きそうな声で、リジュはオロオロしだす。そんなにこの男が大事なのか。とりあえず、事情を知ってるあいつに詳細を訊きたい。
「リザン、いるか!?」
リジュの兄である、山の楽団オルケスタ・デ・モンターニャのリザンを呼ぶ。
「はい、なにかご入用ですかっと……」
リザンは目の前の光景に目を見開くと、まずリジュを手招いてあやした。
「エルバッハ、リジュのこと見ててくれるか?」
勝手にリジュをあんな奴に任せるな、と睨んだが、大丈夫だと目配せされる。リザンの判断だから、問題はないと思うが気に食わない。
「そう怖い顔しないでくださいよ、イスマイル様」
「お題目はいい。さっさと説明しろ」
リザンは苦笑して、口を開いた。
「俺の友達です。リジュにとってもそうでしょう」
「……あいつにとっては?」
「さぁ、どうでしょうね?」
「お前……!!」
ハッハッハ、とリザンは高らかに笑った。
「イスマイル様が見た通りですよ。あいつは昔からあんなんです」
「止めなくていいのか、兄として」
「止めて欲しいのは貴方では?」
ニッと笑顔を見せるリザンが憎たらしい。こいつには俺の気持ちは筒抜けなんだろう。穴があれば入りたい。思わず、舌打ちが出た。
「さて、ちょっと俺はエルバッハに挨拶してきますね」
リザンがリジュを呼び戻す。どこか名残惜しそうにして、こちらに戻ってきたリジュの両頬をむにゅっと潰してやった。
「にゃ、にゃにしゅるんでしゅか」
「うるさい」
なにも分かってない顔に安心するような、焦るような。でも、胸の内なんて絶対教えてやるものか。
