三角錐で見る夢
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トルキエ暦74年、胡椒月ビベーの下旬。残暑の厳しい年となり、まだまだ日差しが強い日が続いていた。ジン商会はムズラク将国の東の町シャルクで将王スルタン紅虎のアル・カプランバラバンに武器を卸し、ブチャク将国に戻ろうとしていた。ブチャクの第45将子クルク・ベシュ・ベイオウルであるイスマイルは、内密にジン商会と行動を分け、珍しく休暇バカンスを取る。港の町リマンまで、海を見に行くのだ。
『嗅いだことのない匂いがします』
『あぁ、潮風の匂いだなこれは』
『ということは、海が近いんですね!』
そんな会話をしたのが数日前。でもまさか、私を連れて海まで行ってくださるとは思いもよらなかった。ムズラク将国の東端、港の町リマンまで、私と兄上、イスマイル様でラクダに乗っていく。足がだいぶ地面から離れてしまうので、馬より若干不安になる。それを見かねて、イスマイル様は私の手綱を握ってくださった。こういった些細な気配りが、イスマイル様の魅力であり尊敬するところだ。
「潮風の匂いが強くなってきました」
「そろそろ着くはずだからな。リジュ、お前泳げるのか?」
「幼い頃は川遊びをしていたので、多少は」
「…………そうか」
それからしばらくして、海岸線が見えてきた。
「うわぁ……すごい広いですね」
兄上も感嘆の声を漏らす。
「これが全部塩水だってんだから、世界は広いな」
潮が満ちては引いていく。煌めく海面、さざ波の音、強い潮の香り……その全てが私には新しく刻まれていく。駆け出しそうになるのをグッと我慢して、ラクダから降りた。港と岩場の合間に、少しだけ砂浜になっている箇所がある。ラクダを停留させ、持ってきた小さめの天幕チャドルを組み立てる。兄上が用意してくれた水着に着替え、素足を晒す。イスマイル様も兄上も、海に入る支度は整ったようだ。
「イスマイル様、早く! 早く行きましょう!」
「おま、ちょっと待てって……」
イスマイル様の手を取って、波打ち際まで走る。海に足をつけると、想像以上に冷たかった。しゃがんで、手についた海水を舐めれば塩辛い。
「ほんとにしょっぱいー」
「だろうな」
「あっ砂の中になにかいます!」
砂を掘り起こせば、貝や小さなカニが出てきた。カニは本当に横歩きをするんだ。砂の中はさらにひんやりとしていて、足を突っ込んでいると気持ちが良かった。
「イスマイル様、海ってすごいですね!」
「いや語彙力なさすぎだろ」
「えへへ」
イスマイル様も一緒に笑ってくれた。それが嬉しくて、私はもっと笑顔になる。波打ち際を、海岸線に沿って歩く。すると、大きなクチバシの鳥がいて後退りしてしまう。
「??」
「……と、鳥」
「カモメがどうかしたか?」
イスマイル様の前で、カッコ悪いところは見せたくない。鳥は大の苦手だが、なんとかして追い払わねば……!!
「お、お前なんか怖くなんかないんだからね!」
「グアーーー!!」
「キャーーー!!」
威嚇をされて、思わずイスマイル様に抱きついてしまった。鳥はバサバサとどこかへ飛んでいく。
「……なんだ、鳥が怖いのか?」
「怖くなんか、ないです」
「嘘つけ!」
くすくすと笑われて、恥ずかしくなって顔を背けた。
「鳥が怖いなんて、可愛いとこもあるんだな」
「かわっ……!?」
意味が分からなくて、身体もほてるし、イスマイル様と思いっきり距離を置いた。でも、離れるのは心配だから、キレイな貝殻や珊瑚を拾いながらイスマイル様の元に戻る。
「持って帰るのか?」
「ダメですか……?」
「いや、好きなだけ持って帰ればいいさ」
腕に抱えられるだけ、集めて天幕チャドルに帰る。日が傾き始めて、空と海をオレンジに染め上げていく。
「わぁ……また全然違う風景」
天幕チャドルの前に座り込んで、日が沈んでいくのを3人で静かに眺めた。私の左手に、イスマイル様の右手がそっと触れて驚く。
「? いかがされました?」
「いや……その」
イスマイル様は片手で顔を隠しながら、小さな声で呟いた。
「繋いじゃ、ダメか」
「ダメなわけないじゃないですか」
キュッと手を繋げば、ピクッと肩を揺らした。私はゴキゲンで足を揺らす。それを見て、イスマイル様はホッとしたような視線を向けた。そのまま、日没までそうしていた。
オマケ
リジュは気付いてないみたいだけど、イスマイル様は終始、顔真っ赤だったね。リザンはそんな2人を、微笑ましく黙って見守っていたのでした。
『嗅いだことのない匂いがします』
『あぁ、潮風の匂いだなこれは』
『ということは、海が近いんですね!』
そんな会話をしたのが数日前。でもまさか、私を連れて海まで行ってくださるとは思いもよらなかった。ムズラク将国の東端、港の町リマンまで、私と兄上、イスマイル様でラクダに乗っていく。足がだいぶ地面から離れてしまうので、馬より若干不安になる。それを見かねて、イスマイル様は私の手綱を握ってくださった。こういった些細な気配りが、イスマイル様の魅力であり尊敬するところだ。
「潮風の匂いが強くなってきました」
「そろそろ着くはずだからな。リジュ、お前泳げるのか?」
「幼い頃は川遊びをしていたので、多少は」
「…………そうか」
それからしばらくして、海岸線が見えてきた。
「うわぁ……すごい広いですね」
兄上も感嘆の声を漏らす。
「これが全部塩水だってんだから、世界は広いな」
潮が満ちては引いていく。煌めく海面、さざ波の音、強い潮の香り……その全てが私には新しく刻まれていく。駆け出しそうになるのをグッと我慢して、ラクダから降りた。港と岩場の合間に、少しだけ砂浜になっている箇所がある。ラクダを停留させ、持ってきた小さめの天幕チャドルを組み立てる。兄上が用意してくれた水着に着替え、素足を晒す。イスマイル様も兄上も、海に入る支度は整ったようだ。
「イスマイル様、早く! 早く行きましょう!」
「おま、ちょっと待てって……」
イスマイル様の手を取って、波打ち際まで走る。海に足をつけると、想像以上に冷たかった。しゃがんで、手についた海水を舐めれば塩辛い。
「ほんとにしょっぱいー」
「だろうな」
「あっ砂の中になにかいます!」
砂を掘り起こせば、貝や小さなカニが出てきた。カニは本当に横歩きをするんだ。砂の中はさらにひんやりとしていて、足を突っ込んでいると気持ちが良かった。
「イスマイル様、海ってすごいですね!」
「いや語彙力なさすぎだろ」
「えへへ」
イスマイル様も一緒に笑ってくれた。それが嬉しくて、私はもっと笑顔になる。波打ち際を、海岸線に沿って歩く。すると、大きなクチバシの鳥がいて後退りしてしまう。
「??」
「……と、鳥」
「カモメがどうかしたか?」
イスマイル様の前で、カッコ悪いところは見せたくない。鳥は大の苦手だが、なんとかして追い払わねば……!!
「お、お前なんか怖くなんかないんだからね!」
「グアーーー!!」
「キャーーー!!」
威嚇をされて、思わずイスマイル様に抱きついてしまった。鳥はバサバサとどこかへ飛んでいく。
「……なんだ、鳥が怖いのか?」
「怖くなんか、ないです」
「嘘つけ!」
くすくすと笑われて、恥ずかしくなって顔を背けた。
「鳥が怖いなんて、可愛いとこもあるんだな」
「かわっ……!?」
意味が分からなくて、身体もほてるし、イスマイル様と思いっきり距離を置いた。でも、離れるのは心配だから、キレイな貝殻や珊瑚を拾いながらイスマイル様の元に戻る。
「持って帰るのか?」
「ダメですか……?」
「いや、好きなだけ持って帰ればいいさ」
腕に抱えられるだけ、集めて天幕チャドルに帰る。日が傾き始めて、空と海をオレンジに染め上げていく。
「わぁ……また全然違う風景」
天幕チャドルの前に座り込んで、日が沈んでいくのを3人で静かに眺めた。私の左手に、イスマイル様の右手がそっと触れて驚く。
「? いかがされました?」
「いや……その」
イスマイル様は片手で顔を隠しながら、小さな声で呟いた。
「繋いじゃ、ダメか」
「ダメなわけないじゃないですか」
キュッと手を繋げば、ピクッと肩を揺らした。私はゴキゲンで足を揺らす。それを見て、イスマイル様はホッとしたような視線を向けた。そのまま、日没までそうしていた。
オマケ
リジュは気付いてないみたいだけど、イスマイル様は終始、顔真っ赤だったね。リザンはそんな2人を、微笑ましく黙って見守っていたのでした。
