布田くんはたまにめんどくさくて国領くんはクソ真面目、柴崎くんはちゃらんぽらん

あっという間だった気がする。帰りの運転を国領が代わろうか訊ねたが、柴崎が平気と譲らないので帰りも同じポジションで帰る。
「どっか飲んでから帰るか?」
「いや、明日仕事だし流石に帰る」
「そっかー」
きっぱり言う国領に対して、柴崎もあっさり返すけど。思えば、柴崎はいつもいつまでも遊ぼうとするし、それが叶わないと少し寂しそうにする。それに気付くと、本当にいつまでも少年のような奴で、その変わらなさに救われていると思う。茜雲が西へ流れていく、倍のスピードで。東名高速道路を走り抜けると、夜にはなったがすぐだった。国領を先に降ろす。距離的には俺の家のが近い気がするけれど、国領を先に帰宅させる。なんとなく柴崎がそうしたのが分かるし、俺も文句はない。多分、国領も分かっている。そんな、黙っててもお互い理解するやりとりを、いくつ3人で繰り返してきただろうか。あまりに眩しくて大切だけれど、それで見落としてきたものもあるのかもしれない。今回の旅は、それをなんだか意識させられた。
「じゃあ、またな」
「おう、ありがとう」
「またね」
国領を見送って、車が発進する。柴崎がタバコ休憩していい?と訊くので頷いた。近くのコンビニに停めて、柴崎はタバコとついでにジュースを買って戻ってくる。CCレモンを渡されて、ぱちくり瞬きをした。
「あれ、嫌いだっけ?」
「いや、好きなほう。いいの?」
「いいよ。今回のお礼」
ししし、と柴崎が笑うのが可愛らしくて、でも貰っていいもんかと少し考える。別にお礼を言われることはしてない、今回のことは、柴崎のわがままではないだろう。
「貰っとくけど。柴崎はさ……」
「なに?」
柴崎は俺を見やりながら、タバコに火をつけた。思えば、柴崎の本音ってやつを実は知らないような気がしてきた。おどけて、わがままを言ってみたりもするが、本当は周りのことをよく見ていて、気配り上手なことは知っているくせに。俺は自分がなにも言わずに側にいることが好きで甘えるもんだから、柴崎の心の内を訊かないできてしまった。勝手に柴崎も言いたいことはないのだと、思い込んでいたかもしれない。
「……柴崎も、悩んだりする?」
「ん?悩んでるように見えるか?」
いつも通り、柴崎は笑うだけ。今までそうだよねって踏み込まなかったけど。
「……強がってない?」
柴崎は少し目を見開いて、視線外してやっぱり笑って。煙が窓の外へ抜けていく。沈黙が怖くても待った。なにかを言ってくれるまで、待った。誤魔化して欲しくなくて、視線は外さなかった。柴崎は観念したように眉を下げた。
「強がってるかもなぁ」
胸がざわついて、心拍数があがる。どうしようもなく、申し訳なくなって。それなのに何故か、嬉しくて仕方がないような。動けなくなって、次の言葉も出なかった。柴崎が不安気に少し首を傾げるので、ようやっと弾けるように身体が動かせた。
「えっと、ごめん。その。強がってるなら、もう少し教えて欲しいなって」
「んー話しても解決しねぇしなぁ」
そんなの分からないだろ。口の中が乾いて言葉にならない。柴崎がそう考えるなら、きっとそうなんだ。でも知りたいと思うのは、俺のわがままであって。これ以上、甘えるなんてこと。
「俺が知りたいから」
「!!……そうなん?」
「そ、そう」
悩みを裏切って、正直な気持ちを話してしまって。柴崎は大きくタバコを吸うと、灰皿に押しつけた。機嫌良さそうに鼻唄を歌って、車を走らせる。
「そっかぁ」
それきり、話してくれることはなかったけれど。なんか、踏み出せた気がする。みんなこのままがいいって思ってることを確認出来て、このままで次に進めるような。そんな気がする。胸の高鳴りが抑えられなくて、ひとつ息を吐く。
「お、満月だ!」
柴崎はいつも空を見ている。つられて一緒に見上げると、いつも心が安らぐ。1人でいると、大抵忘れてしまうから。
「……月が綺麗ですね?」
「月はいつだって綺麗だろ」
面食らった。柴崎が笑っているけど、なんで笑ってるのか分からなくて混乱する。どっちだっていいけれど。月が綺麗なことには変わりがないから。だからそれ以上は黙って誤魔化した。
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