布田くんはたまにめんどくさくて国領くんはクソ真面目、柴崎くんはちゃらんぽらん
神奈川県立生命の星・地球博物館は、小田原にある自然史の博物館だ。布田の提案で立ち寄ることにしたが、布田は自分が置いてきぼりになることを覚悟の上でだった。
「チンタオサウルスって、この前の恐竜博で復元変わったって言ってたよな?」
エントランスホールですでに、柴崎がなにやら細かいことを国領に訊いている。
「言ってたな。頭の突起が後ろ寄りに生えていたってやつだろ?」
「説明書いてないな。やっぱ改修ってお金かかるもん?」
「そりゃかかるだろ」
国領と柴崎が並び立ってゆっくり奥に進んでいく。ついていけない。布田は後方で寄り添って歩くが、会話の内容についていけない。柴崎は勉強が出来ないと思われがちだが、興味のあることについてはそれなりに詳しい。特に恐竜に関しては、国領と同じレベルで会話が出来るほどだった。むしろ、恐竜については化石を見ただけでおおよその種類が分かるぶん、柴崎のが詳しいと言える。柴崎がゆっくりひとつずつ、静かに見て回るので、国領は落ち着いていて助かると思っている。博物館にはあまり英訳がなくて、国領は少し物足りないくらいだ。
「アケボノゾウって象だけど小さめで可愛い」
「日本にしかいなかったんだよな。広い庭なら飼えねぇかな」
「いや無理だろ。小さくても象だぞ」
学問で3人まとまって会話になるのは、自然史くらいのもので。布田の感想に2人が情報を足したり、国領の独り言に柴崎が反応したり。穏やかで和やかな時間が流れる。昆虫標本のコーナーでは、国領はずっと布田の背に隠れてはいたが。
「動かねぇしキレイだろ?」
「動かなくても虫は虫」
国領のことを笑いつつ、でも無理強いすることはなく、かと言って遠慮もせず。柴崎は勝手に1人で昆虫コーナーを見て回った。1階をかなり時間をかけて見たあと、エスカレーターで3階まであがる。神奈川の自然、自然との共生のコーナーも、同じように時間をかけて見る。
「ニホンオオカミの剥製って珍しいんだよな?」
「世界で5体しかない。俺の記憶が正しければ、こいつは模造剥製」
「はー模造なのか。それにしても小せえ」
展示を抜けると、あと1箇所だけスペースがある。「ジャンボブック」と名付けられた一画は、大きな百科事典を模して作られていた。様々なテーマで標本がまとめられていて、見応えがある。布田はこれくらいシンプルで分かりやすい方がいいなぁと思った。
「なんかゲームがある」
カエルの剥製が並べられている場所に、カエルの鳴き声を当てるゲームがある。シュレーゲルアオガエル、ニホンアオガエル、カジカガエル、ニホンアカガエル、トウキョウダルマガエルの鳴き声が、ランダムに流れてきてどれかを当てるもの。
「全部カエルの鳴き声じゃねぇか」
「いや、全部違うけど?」
国領には全部同じに聴こえる。それを柴崎は不思議そうに見る。布田は違うことは分かるけど、どれがどれまでは判別出来ない。1回目のチャレンジは、20点で終わる。柴崎はおもむろにもう一度チャレンジを始め、最初の1秒聴いただけでドンピシャに全て正解した。国領は信じられない顔で柴崎を見る。
「なんで分かんだよ」
「いや1回答え合わせしただろ?」
「普通は1回でそんな正確に素早くは答えられないと思うよ」
「そうなん?」
柴崎はなおも不思議そうにしている。全部全然違う鳴き声だったけどなぁ。頭を掻きながら、まぁ2人には出来ないことなのだからちょっとすごいのかも。と、自分を褒めることにした。なんか嬉しいのでもう一度だけゲームをする。100点だった。
「満足だろ?次、行くぞ」
「ほーい」
展示の前を離れる。まぁ柴崎はカエルの鳴き声の聞き分けは正確に出来るけれど、名前はそのうちに忘れてしまうのだった。全ての展示を見終えて、レストラン横のラウンジに座る。脇にテラスへの扉があるので、なんとなしに3人で開けた。特になにもないが、川が一望出来て心地が良い。
「おっ喫煙所ある!」
公共の施設には珍しく、灰皿が置いてあった。柴崎が駆け寄って一服するので、布田もつられて吸う。国領は、風上の少し離れたところで立って待つ。
「……吸い終わったら、軽くもう一周したいんだけど」
柴崎はそう言うだろうと、2人とも予想していた。提案を跳ね返す理由はない。
「いいよー」
「しょうがねぇな」
2人の返事を聞いて、安心したように柴崎は笑った。
「チンタオサウルスって、この前の恐竜博で復元変わったって言ってたよな?」
エントランスホールですでに、柴崎がなにやら細かいことを国領に訊いている。
「言ってたな。頭の突起が後ろ寄りに生えていたってやつだろ?」
「説明書いてないな。やっぱ改修ってお金かかるもん?」
「そりゃかかるだろ」
国領と柴崎が並び立ってゆっくり奥に進んでいく。ついていけない。布田は後方で寄り添って歩くが、会話の内容についていけない。柴崎は勉強が出来ないと思われがちだが、興味のあることについてはそれなりに詳しい。特に恐竜に関しては、国領と同じレベルで会話が出来るほどだった。むしろ、恐竜については化石を見ただけでおおよその種類が分かるぶん、柴崎のが詳しいと言える。柴崎がゆっくりひとつずつ、静かに見て回るので、国領は落ち着いていて助かると思っている。博物館にはあまり英訳がなくて、国領は少し物足りないくらいだ。
「アケボノゾウって象だけど小さめで可愛い」
「日本にしかいなかったんだよな。広い庭なら飼えねぇかな」
「いや無理だろ。小さくても象だぞ」
学問で3人まとまって会話になるのは、自然史くらいのもので。布田の感想に2人が情報を足したり、国領の独り言に柴崎が反応したり。穏やかで和やかな時間が流れる。昆虫標本のコーナーでは、国領はずっと布田の背に隠れてはいたが。
「動かねぇしキレイだろ?」
「動かなくても虫は虫」
国領のことを笑いつつ、でも無理強いすることはなく、かと言って遠慮もせず。柴崎は勝手に1人で昆虫コーナーを見て回った。1階をかなり時間をかけて見たあと、エスカレーターで3階まであがる。神奈川の自然、自然との共生のコーナーも、同じように時間をかけて見る。
「ニホンオオカミの剥製って珍しいんだよな?」
「世界で5体しかない。俺の記憶が正しければ、こいつは模造剥製」
「はー模造なのか。それにしても小せえ」
展示を抜けると、あと1箇所だけスペースがある。「ジャンボブック」と名付けられた一画は、大きな百科事典を模して作られていた。様々なテーマで標本がまとめられていて、見応えがある。布田はこれくらいシンプルで分かりやすい方がいいなぁと思った。
「なんかゲームがある」
カエルの剥製が並べられている場所に、カエルの鳴き声を当てるゲームがある。シュレーゲルアオガエル、ニホンアオガエル、カジカガエル、ニホンアカガエル、トウキョウダルマガエルの鳴き声が、ランダムに流れてきてどれかを当てるもの。
「全部カエルの鳴き声じゃねぇか」
「いや、全部違うけど?」
国領には全部同じに聴こえる。それを柴崎は不思議そうに見る。布田は違うことは分かるけど、どれがどれまでは判別出来ない。1回目のチャレンジは、20点で終わる。柴崎はおもむろにもう一度チャレンジを始め、最初の1秒聴いただけでドンピシャに全て正解した。国領は信じられない顔で柴崎を見る。
「なんで分かんだよ」
「いや1回答え合わせしただろ?」
「普通は1回でそんな正確に素早くは答えられないと思うよ」
「そうなん?」
柴崎はなおも不思議そうにしている。全部全然違う鳴き声だったけどなぁ。頭を掻きながら、まぁ2人には出来ないことなのだからちょっとすごいのかも。と、自分を褒めることにした。なんか嬉しいのでもう一度だけゲームをする。100点だった。
「満足だろ?次、行くぞ」
「ほーい」
展示の前を離れる。まぁ柴崎はカエルの鳴き声の聞き分けは正確に出来るけれど、名前はそのうちに忘れてしまうのだった。全ての展示を見終えて、レストラン横のラウンジに座る。脇にテラスへの扉があるので、なんとなしに3人で開けた。特になにもないが、川が一望出来て心地が良い。
「おっ喫煙所ある!」
公共の施設には珍しく、灰皿が置いてあった。柴崎が駆け寄って一服するので、布田もつられて吸う。国領は、風上の少し離れたところで立って待つ。
「……吸い終わったら、軽くもう一周したいんだけど」
柴崎はそう言うだろうと、2人とも予想していた。提案を跳ね返す理由はない。
「いいよー」
「しょうがねぇな」
2人の返事を聞いて、安心したように柴崎は笑った。
