布田くんはたまにめんどくさくて国領くんはクソ真面目、柴崎くんはちゃらんぽらん

小田原城に閉園までいて、国領がようやく満足したので車に戻る。国領は目がらんらんと輝かんばかりだが、俺は頭を使ったので少し疲れた。布田も同じようで、先ほどからあくびをよくしている。車に乗り込み、はて次の目的地はどこなのか。
「次どこ行くんだ?」
「宿行くんじゃねぇの?」
俺の問いかけに国領が答えて。布田が急にものすごく深刻な顔になっている。
「……宿、取ってないかも」
「宿取ってないかも!!??」
国領が声を荒げ、車の中なのに立ち上がろうとして頭をぶつける。
「え、どっちが取る予定だったんだよ!?」
俺が布田を指差すと、布田も俺を指差していた。ありゃ。国領が布田に手刀を入れる。
「馬鹿、柴崎が取るわけねぇだろ!!なんで取んなかった!!」
「はい、おっしゃる通りです……ごめん」
布田が肩を丸めて小さくなっていて、可哀想だ。
「布田を怒んないでやってくれよ~」
「いや、お前が取ってれば……あぁもう」
国領は大きく息を吐くと、座席に座り直した。なんか足広げて両肘ついて前屈みになっていて、マフィアのボスみたいなポーズでウケる。
「宿、死ぬ気で探すぞ」
「はい」
「この際、ビジネスホテルでいい」
「はい」
「とりあえず、布田がナビな」
「はい……」
「国領、車出すからシートベルトな」
「……おう」
かくして、宿探しの旅が始まったのである。まぁ、どこかしらは空いているもんじゃないのか?

「三連敗……」
「え、もしかして小田原って人気なのか?」
「馬鹿か小田原に失礼だわ。普通に観光地だわ」
そうなのか……舐めてたわ。駅回り避けて少し離れたところをあたってみたんだが、どこも満室だった。困り果てて、市内をぐるぐる走る。少し路地入った場所に、古めのビジネスホテルを見つける。
「行ってみるかぁ~いやぁ出川の気持ちを知ることになるとは」
「勘弁してくれほんと……布田、笑い事じゃないぞ」
「いや、ごめん……はい。反省してます」
駐車場はそんなに混んでないように見えるけど。エントランスでは丁寧でちゃんとしてそうなマダムが迎えてくれた。
「ご予約ですか?」
「いや、予約はしてなくて……3人なんですけど。部屋割りはなんでもいいです」
「確認しますので、少々お待ちくださいね」
布田がオーダーを伝えて、しばし沈黙。怖え。マダムは眉を下げて顔を上げた。どうだ。
「ツインのお部屋でしたら、ひと部屋だけご用意出来るんですけど……いかがでしょうか」
「ツイン」
布田が振り返って、作戦会議。
「ツインってあれだよな、ベッドは広いのひとつってことだよな」
「そうだね。1人車中泊すればなんとか……」
「誰が車で寝るんだよ」
「宿取り損ねたの俺だし、俺が」
「それは布田が可哀想だからダメ」
国領も頷く。布田が車中泊は可哀想だからダメだ。
「……仕方ない、俺で構わん」
「国領の誕生日だから無しでしょ」
「無しだな。じゃあ俺の車だし俺が寝るよ」
「柴崎はずっと1人で運転してるんだから、休まなきゃダメ」
国領が頷いてるので、俺もダメらしい。フロントに3秒、沈黙が訪れる。
「…………なんとかツインで3人泊めてくれませんかぁ!!??」
マダムに手を合わせて頭を下げ、泣きつく。
「お願いします、泊まるとこないんです……」
俺が必死で頭を下げていると、頭上からくすくすと堪えるような笑い声が聞こえる。そろりと顔を上げると、マダムがルームキーを取り出して微笑んでいる。
「そういうことでしたら……特別に。ご案内致します。内緒になさってくださいね?」
「や、やったあ~……ありがとうございます!!」
マダムと握手し、感謝を伝えてルームキーを受け取る。振り向いたら、布田はにやけていて、国領は顔を真っ赤にして手を当てていた。
「はっずかしい~……」
「でも3人で泊まれるぜ?」
「いや、うん。分かってる。いいんだけどさ」
国領が身を固くするから、布田が肩に手を当ててほぐしている。布田と目が合うと、笑って頷くからこれで良かったんだと思う。部屋に入ったらベッドにダイブした。そこそこ広いし、なんとかなんじゃね?
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