布田くんはたまにめんどくさくて国領くんはクソ真面目、柴崎くんはちゃらんぽらん

柴崎に車で吸っていいからと急かし、とりあえず車に乗り込む。助手席に俺が座って、国領は酔いやすいから後ろで寝かせていく(まぁ柴崎の運転で酔ったことは俺も国領もないが)。雲は多いけど日差しは差し込んで、気持ちがいい日だ。それはそうだけど、柴崎が窓全開にしようとするから止める。それは寒い。
「好きなもんかけていい?」
「いいよ好きにして」
柴崎はJ-ROCKが好きだ。ライブとかも頻繁にではないが行くらしい。確か音楽好きが高じて、栗平とは仲良くなったと言っていた。まぁ柴崎にとってはそうらしい。後ろの国領を見れば、空に流れる雲を見つめていて、ぼんやりとリラックスしている様子だ。
「で、小田原ICに向けて走ってっけど、どこ行くんだっけ?」
「あぁ、ナビ入れておくよ」
ネットで見つけたお店の名前を入力して、しばらく高速道路を走っていく。この前みたいに寝てしまおうとは思わなかった。柴崎の運転する手を見たり、国領が後ろで身じろぐのを感じたり、後ろに流れていく景色を眺めたり。案外退屈はしなくて、久しぶりに感じるワクワクに胸を躍らせた。
「……嬉しそうだな?」
柴崎の方が嬉しそうにそう訊ねるので、言葉に詰まる。
「柴崎、お前そういうの口に出すのなんとかなんねぇのか」
後ろから国領が文句を言うので、なんだか余計に恥ずかしいが。
「ダメか?」
「ダメ」
「いや、ダメではないよ。ダメではないけども」
国領の否定を、なんとか覆してあげたくて反論はするんだけども、俺だって照れくさいことには変わりなく。柴崎は不思議そうにしている。
「見たまんまを報告してるだけだけど」
「それが!恥ずかしいんだって!」
国領が声を荒げるのを、柴崎はカラカラと笑った。でも、柴崎は意地悪を言うような奴ではないから、ふと気にかかった。
「なんで柴崎は、見たまんまを報告するの?」
「ん?あー、なんかさ。確認しないと不安なんだよな」
柴崎が困ったように眉を下げるのは、珍しい。今、この表情を俺しか見ていない。なんだか責任があるように思えた。
「なんで不安になる必要があるんだよ」
「いや、俺だけなのかなーって」
「……なんじゃそら」
国領は呆れたようにそう溢すが、多分言いたいことは伝わってるんじゃないかと思う。まぁ……柴崎の周りはストレートに感情表現してくれる人間も多いから。不安にさせているのかもしれない。
「言わなくても見りゃ分かるだろうがよ……」
「うーん国領は人のこと見て分からないのに、それ言うのはずるいかなぁ」
「ちょ、布田はどっちの味方なんだよ」
「どっちだろうなぁ」
柴崎はやっぱりカラカラと笑う。ICを降りる。小田原ってこんなに近いんだ。1時間かからなかったんじゃないか?
ナビに従い、目的の店に着いた。
「……駐車場、めちゃくちゃ混んでね?」
駐車場を一周して、なんとかひとつ空いてる所を見つけて停める。店まで行って、入り口で人数を伝えると通されたが、後ろの人は止められていた。わぁ、ギリギリ……。
「家での一服を我慢して良かったです」
「本当にそれ」
「マジで行き当たりばったりなんだな……」
3人でいつものように座る(柴崎が奥、右隣に国領、向かいに俺)。時間もそんなにないので、各々取りに行く。
「とりあえず、お茶が美味しいです」
「かまぼこの種類がえげつない」
「ポテトサラダが美味え。なにで下味つけてんだこれ」
「揚げ蒲鉾、美味いから食ってみ」
「あ、ほんとだ美味しい。リピート確定」
「ほぉー炊き込みご飯ある。いいな」
「国領の食ってるやつなに?」
「……これどこで取ってきたかな。茶碗蒸しだけど」
「茶碗蒸し、角のとこになかったかな」
行ってくるー!と柴崎は出かけていき、茶碗蒸しだけでなくプレートいっぱいに持ち帰ってきた。
「え、ちょっと本気出していい?」
「いいよバイキングなんだから」
「というか聞く前から本気出してるだろそのプレートは」
「へへへ、やったあ」
柴崎は嬉しそうに料理を平らげていく。ここにしてよかったなぁ。本当に料理美味しいし。国領も納得のようで、いろいろ食べては頷いているので正解だろう。あっという間に60分が過ぎ、〆にデザートを食べる。俺は揚げ蒲鉾が美味しすぎたので、最後にもう一枚。
「お茶、持ってくるわ」
柴崎が全員分のコップをさらい、注ぎに行ってくれる。国領はほうじ茶のゼリーが美味しかったらしく、ほー、と感嘆の声をあげている。
「美味しかった?」
「美味かったな」
そうは言っても国領は、感情が表情に出るタイプだ。本人が言うように、見りゃ分かんだろってのも否定は出来ない。柴崎はなんで、あえて確認をするのだろう。
「あやべ、どれがどれか分かんなくなった」
「やると思った」
「親切の詰めが甘いね」
誰のものか分からなくなったコップを、適当に受け取って。急に訪れた不安を掻き消すように、笑っておしゃべりをする。ひょっとして、もしかして。柴崎は俺たちが思ってるより、強くはないんじゃなかろうか。
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