布田くんはたまにめんどくさくて国領くんはクソ真面目、柴崎くんはちゃらんぽらん

ベッドの上が狭くて起きた。大して眠れてない気がする。昨日の夜、布田は仕事が終わると真っ直ぐ家に来たが、柴崎は栗平と遊んでいたらしく遅くになってからやって来た。適当に飯を食わせてやって、いつも通り布田を布団に寝かせて、柴崎は仕方ないからベッドを半分貸してやった。こいつが隣にいると冬でも暑い。平熱何度あるんだ。身体を起こし、柴崎を踏みつけないようにしてベッドを降りる。キッチンだけ明かりをつけて軽く朝食を作ろうとすると、布田が起きてきて俺の手元を覗く。
「なんか手伝う?」
「いいよ、別に。ゆっくりしてろ」
そう返したが、布田は突っ立ったままじーっと俺を見下ろしている。些か、居心地が悪いというかくすぐったい。
「あー、何時に出るんだ?」
「分かんない」
「おい」
任せろって言ったよな?そう非難の視線を向けると、布田は肩をすくめて誤魔化すように笑った。まぁ、もうどうだっていいかこの際。こいつらのやりたいようにやってもらえればいいか。うん。ひとつ息を吐くと、布田はごめんと小さく溢す。
「怒ってない。し、もういい。諦める」
「ふふふ。ありがとう」
布田は安心したように頬を緩めて、一度布団に戻っていった。いや、二度寝していいとは言って……まぁいいか。ほうれん草とベーコンを卵でとじて、三等分に盛り付けて。コーヒー淹れて、布田のために紅茶用のお湯を沸かす。沸かしてから、3人とも紅茶でも構わなかったな、と思う。別に紅茶飲めねぇわけじゃないし。まぁまぁ、なんだっていいや。サラダが欲しいかなと思い、じゃがいもをチンして潰してポテトサラダにする。ツナ缶とマヨネーズ、塩胡椒の簡単なやつ。あとは食パンをトーストするだけ、となったところで、布田に声かける。
「もうトーストしていいか?」
「うん?うん~」
「いや、どっちだよ」
「いいよ~」
柴崎の方を見る。うん、こいつはもう少し放っておいた方がいいな。トーストを2枚分焼き、ジャムとバターを用意して、好きな方を塗れるようにする。布田が起き出して布団を畳み、端に寄せていたテーブルを中央に戻す。見計らって、食事を並べる。おー、と布田が声を上げる。
「なんか足りないもん、あるか?」
「ううん、ない」
いただきます。布田は手を合わせてから、満足そうにオムレツを口に運ぶ。それを見届けてから、自分も食べだす。料理をするのが苦じゃないなぁと思う。世の中、家事の出来る男って需要あるんじゃないのか。いや、出来て当たり前のことではあるんだけども。……誰ともお付き合いがないまま、30歳を超えるのに漠然と不安を覚える。世間とズレすぎていやしないかって。……思えば世間とズレている奴しか身の回りにいないかもしれない!
「なんか困った顔してるけど、大丈夫?」
「いや……その……」
なんと切り出せばいい。簡潔にまとめられなくて。冷める前に食べよう。トーストを口に含みもごもご咀嚼する。布田は紅茶を飲んで、身を乗り出したかと思えば、すっと手をかざして俺の額にデコピンを喰らわせた。
「った!なにすんだよ」
「言わなきゃ分かんないよ何事も」
「そりゃ、そうだけど」
人への甘え方が分からない。頼り方が分からない。答えのない問いかけを、投げたりしたら迷惑じゃないか。黙りこくっていると、布田は柔らかく息を吐いた。
「相談事を迷惑と思うような間柄じゃないでしょ」
「んー……でも、」
「くだらない話でいいよ。話してよ」
布田の顔を見る。怖がる必要なんてなにもないはずなのに、言葉を失くしてしまう。布田が笑いかけたのに、ぎこちなく返す。
「ま、いいじゃん。今日から2日間3人一緒だし。話したくなったら話してよ」
「……おう」
「俺も柴崎も、国領の話ちゃんと聞きたいと思ってるよ」
…………聞かずに押し切ること、多くないですか?まぁ、うん。論点がズレている。そういうことじゃねぇよな。
「分かった」
本当は分かってる。布田も柴崎も、最終的には俺に寄り添ってくれる。どこかで当たり前と思い始めている。よくないよな、そういうのは。
「柴崎、そろそろ起きなよ」
「んー今何時だ……?」
「そろそろ9時になるよ」
「寝坊したっ!!」
寝坊なんかい。思わず吹き出して笑ってしまった。柴崎の分の朝食を持ってくる。オムレツに目を輝かせているのを見ると、穏やかで温かい心持ちになるんだ。
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