布田くんはたまにめんどくさくて国領くんはクソ真面目、柴崎くんはちゃらんぽらん

土曜日だ。栗平は昨日の夜、さぞご機嫌だったんだろうと思っていたが、今朝方泣きの電話が入り、とにもかくにも唐木田の家に集合になった。家主はまだ寝ているが構わず上がり込んで、コーヒー飲みながら栗平の話を聞く。要約すると、ホワイトデーデートで浮かれていたが早々に切り上げられてしまい、明日から旅行だから早めに帰ると国領さん家に消えたと。ははあ。
「ボクも一緒に行きたかったーっ!!」
「まぁこればっかりは仕方ないだろ。来週連れてって♡って言えば多分連れてってくれるぞ」
「そうかもしれないけどー!!1番に誘われたい……!!」
栗平の1番は唐木田が独占しているくせに、そこはこだわったりするんだよなぁ。まぁ唐木田が占領してるとも言えなくはないけど。面白。
「健ちゃんうるさい……」
唐木田が這い出るように寝室から出てきた。寝起きでいつも以上に声が低く掠れている。いつも通り、ソファーに腰掛ける栗平の隣に座り、当然のようにもたれかかる。栗平は唐木田の頭を撫でた。
「隼人は旅行のこと知ってた?」
「…………会う約束あったけど、延期にされた」
あー。これはご立腹かそれ通り越して凹んでるぞ。唐木田は甘えるように細い腕に頭を押しつけている。
「えー酷くない!?ごねればよかったのに」
「ごねたら面倒くさい奴って思われてお払い箱だよ」
「もうちょっと好きアピールすればいいじゃん」
「柴崎さんみたいにはいかないだろ国領さんは」
「でもさ……」
「うるさいなぁ。俺の八つ当たりをその身に受ける覚悟あるの?」
「うわガチギレじゃんごめんて」
栗平は追及をやめて、口をつぐんだ。唐木田を胸に抱き寄せて、ただ頭を撫でる。うーん、まぁ。事前に知ることが出来て、俺たちが連れてって欲しいとごねたとする。すると、おそらく柴崎さんは了承してくれるし、柴崎さんがいいよと言えば国領さんも布田さんも嫌とは言わない。けれど、間違いなく邪魔。3人の空気感を壊すし、柴崎さんは気疲れして仕方ないだろう。これでよかったんじゃないかな。なんとなくだけど、栗平も本気で連れてけとは思ってなさそう。重傷なのは唐木田の方だよな。
「…………どっか行きたいとこでも行く?」
「運転嫌だ」
「じゃあ電車とか」
「人混みも嫌だ」
栗平が堪らずご機嫌取りを始めたが、唐木田は臍を曲げてしまって鼻をすんすん鳴らす。仕方ない、一肌脱ぎますかね。
「運転なら俺がするぞ。帰りも心配しなくていい」
「だって。どうする?」
「…………俺たちも泊まりでどっか行きたい。どこでもいいけど」
「いいね、小旅行しようか。温泉宿とかよくない?」
「今から予約取れるか?」
「分かんないけど。奥多摩とかよさげ」
まぁ今から移動するならその辺かな。関東近郊、一泊で検索をかける。栗平も同じように調べている。唐木田は栗平が操作する画面を覗き込んでいた。
「渋温泉とかどうだ?」
「そこ見てた。山の温泉いいよね。雪まだ残ってるかな~」
とりあえず、即日で泊まれる宿を探す。食事付きは厳しいかね。画面と睨めっこしていたら、ねぇと唐木田が声をあげる。
「どした?」
「…………ありがとう」
栗平と顔を見合わせて笑う。めちゃくちゃだけど、可愛い奴なんだ唐木田は。
「山だから寒いかなぁ。黒川は着替えどうする?」
「取りに戻るのも馬鹿らしいから、ユニクロで買ってく」
「だねぇ。ボクは置いてあるので足りるかな……」
「健ちゃんの服、めちゃくちゃあるよ。持って帰って」
「置く場所ないんだよねぇ」
ちょっと元気が出てきたようで、唐木田も会話に混ざってくる。よかった。俺たちだって負けず劣らず仲良しだ。競争なんかじゃないけど。何人でどんな組み合わせでいようと、仲良く出来るなら最高じゃないか。平和なのが1番いい。いやまぁ、読者としては泥沼もそれなりに楽しんでしまうが、友達としてはやっぱり仲良しが1番だな。
36/45ページ
スキ