布田くんはたまにめんどくさくて国領くんはクソ真面目、柴崎くんはちゃらんぽらん
……健ちゃんが俺ほっぽって柴崎さんのとこ行った。気に食わない。別に柴崎さんに妬いてるとかじゃない。構わずにそっち行った健ちゃんが許せないだけ。
「まぁいつものことだし、飯くらい食えよ」
いつもの町中華で、黒川と呑んでいる。どんな時でも駆けつけてくれる友人は、黒川くらいのものなので。なんかそう言うと、自分が1人でいられない人間みたいで嫌だな。柴崎さんじゃあるまいし。タコの唐揚げを口に含む。ボトルキープしてある紹興酒を煽る。黒川は北京ダックと棒棒鶏を突いている。これから海鮮おこげも来る。俺の奢りだから食えるだけ食うつもりだろう。……ここカード切れたっけ。
「どうせホワイトデーも会うくせに……」
「混ぜてもらったらいいんじゃないか?」
「健ちゃんが拗ねたらめんどくさい」
そも、バレンタインにプレゼントは交換しているから、俺たちの間でホワイトデーって意味はない。なんでプレゼント交換するようになったんだか?まぁいいや。
「まぁまぁ、そう意地張らず……お互い素直なのには弱いだろ」
黒川と目を合わせる。ゴツい顔だけれど、優しそうには見える。首が太い、腕も太い。よく食う。自分とも健ちゃんとも180度違う人物。坊主頭が似合う。黒川が棒棒鶏を小皿に分けてくれたので、口に運ぶ。
「俺から折れるの、癪だよ」
「不機嫌なのをそのままぶつけたら、栗平が可哀想だろ?」
押し黙る。可哀想、なのか。でも俺のこと不機嫌にしたのは健ちゃんだし……。
「唐木田が不機嫌なのは栗平のせいだけど、栗平はなにも悪いことしてないからな?」
「…………うん。分かってるよ」
タコの唐揚げを噛み締めながら、苛立ちを落ち着かせる。別に、どこへ行ったって。最後には俺のところに帰ってくる。俺だってそうだもの。帰る場所を選ぶなら健ちゃんの隣がいい。不安になる要素なんて、ない。海鮮おこげが運ばれてきて、おこげに餡がかけられてジュウジュウ音がする。黒川は目を輝かせて、嬉しそうに箸を持ち直した。
「美味いか、人の金で食う飯は」
「美味いな!」
がっついて食べて舌を火傷したらしい。ハイボールで冷やしながら食べている。黒川を見ていたら少し食欲が出てきた。炒飯を追加で注文する。
「そんなに嫌なら、お前も国領さんとこ会いに行けばいいだろ」
ちょっと今触れてほしくなかったな。元はと言えば不機嫌の遠因だし。
「……国領さんがドタ参で会ってくれると思う?」
「思わんな」
ほら。黒川がそう言うならそうなんだって。黒川は自分を物語オタクだとか言うが、観察眼は大したもので、人の心情とか思考を読むのが上手い。たまに胸の内を言い当てられてドキッとするし、知りもしなかった自分の感情を代弁されたりする。
「国領さんはなー自分の予定狂うの嫌いだからなー」
「でしょ。嫌われたくない」
紹興酒を飲み干し、空になったグラスに追加する。炒飯が来たので、レンゲで掬って食べる。……スプーンのが食べやすいな。子供みたいだから貰ったりしないが。
「唐木田が他人に嫌われたくないって言うのは、初めてだよなぁ」
「は?そんなことないでしょ」
「そんなことあるだろ……まず好きな相手に自分を取り繕うのからして珍しいだろ」
そうか?そうだったかな。健ちゃんと国領さん以外、好きな相手に該当する人物を思い出せない。それなりに好きな人は、何人か心当たりがあるけれど。
「唐木田はいつも、自分のこと受け入れられない相手とは縁切ってきてるぞ」
「そう?」
「そうだぞ?」
海鮮おこげが平らげられて、黒川は追加で半ラーメンなんかを頼んでいる。ハイボールもおかわりされた。
「まぁ、国領さんに対しては本気なんだな、と見てて思うが」
「俺が本気じゃない時なんてないけど」
「うーんなんつーか……唐木田に優しさってあったんだなって」
「失礼だな!?」
少し声を張れば、黒川はイタズラが成功した子供のように笑う。馬鹿にしやがって。
「俺、そんなに優しくないか?」
「自分の胸に手を当てて聞いてみてください?」
「…………優しくはない、かも」
優しい、と言われたら寒気するし。必要か?と思ってしまうあたり、優しい人とはかけ離れていそうだ。
「…………もういい、今日の夜健ちゃんに訊いてみるから」
「返答聞かせてください」
「嫌なこった」
優しい人になりたいわけじゃないけど。健ちゃんに訊こうと思うのは、健ちゃんは俺が優しかったら嬉しいのか気になるから。あと、これ以上自分で追求して考えるのめんどくさい。今日は健ちゃん家に帰ろう。炒飯を掻き込む。紹興酒はあとグラス半分までにしておこう。
「まぁいつものことだし、飯くらい食えよ」
いつもの町中華で、黒川と呑んでいる。どんな時でも駆けつけてくれる友人は、黒川くらいのものなので。なんかそう言うと、自分が1人でいられない人間みたいで嫌だな。柴崎さんじゃあるまいし。タコの唐揚げを口に含む。ボトルキープしてある紹興酒を煽る。黒川は北京ダックと棒棒鶏を突いている。これから海鮮おこげも来る。俺の奢りだから食えるだけ食うつもりだろう。……ここカード切れたっけ。
「どうせホワイトデーも会うくせに……」
「混ぜてもらったらいいんじゃないか?」
「健ちゃんが拗ねたらめんどくさい」
そも、バレンタインにプレゼントは交換しているから、俺たちの間でホワイトデーって意味はない。なんでプレゼント交換するようになったんだか?まぁいいや。
「まぁまぁ、そう意地張らず……お互い素直なのには弱いだろ」
黒川と目を合わせる。ゴツい顔だけれど、優しそうには見える。首が太い、腕も太い。よく食う。自分とも健ちゃんとも180度違う人物。坊主頭が似合う。黒川が棒棒鶏を小皿に分けてくれたので、口に運ぶ。
「俺から折れるの、癪だよ」
「不機嫌なのをそのままぶつけたら、栗平が可哀想だろ?」
押し黙る。可哀想、なのか。でも俺のこと不機嫌にしたのは健ちゃんだし……。
「唐木田が不機嫌なのは栗平のせいだけど、栗平はなにも悪いことしてないからな?」
「…………うん。分かってるよ」
タコの唐揚げを噛み締めながら、苛立ちを落ち着かせる。別に、どこへ行ったって。最後には俺のところに帰ってくる。俺だってそうだもの。帰る場所を選ぶなら健ちゃんの隣がいい。不安になる要素なんて、ない。海鮮おこげが運ばれてきて、おこげに餡がかけられてジュウジュウ音がする。黒川は目を輝かせて、嬉しそうに箸を持ち直した。
「美味いか、人の金で食う飯は」
「美味いな!」
がっついて食べて舌を火傷したらしい。ハイボールで冷やしながら食べている。黒川を見ていたら少し食欲が出てきた。炒飯を追加で注文する。
「そんなに嫌なら、お前も国領さんとこ会いに行けばいいだろ」
ちょっと今触れてほしくなかったな。元はと言えば不機嫌の遠因だし。
「……国領さんがドタ参で会ってくれると思う?」
「思わんな」
ほら。黒川がそう言うならそうなんだって。黒川は自分を物語オタクだとか言うが、観察眼は大したもので、人の心情とか思考を読むのが上手い。たまに胸の内を言い当てられてドキッとするし、知りもしなかった自分の感情を代弁されたりする。
「国領さんはなー自分の予定狂うの嫌いだからなー」
「でしょ。嫌われたくない」
紹興酒を飲み干し、空になったグラスに追加する。炒飯が来たので、レンゲで掬って食べる。……スプーンのが食べやすいな。子供みたいだから貰ったりしないが。
「唐木田が他人に嫌われたくないって言うのは、初めてだよなぁ」
「は?そんなことないでしょ」
「そんなことあるだろ……まず好きな相手に自分を取り繕うのからして珍しいだろ」
そうか?そうだったかな。健ちゃんと国領さん以外、好きな相手に該当する人物を思い出せない。それなりに好きな人は、何人か心当たりがあるけれど。
「唐木田はいつも、自分のこと受け入れられない相手とは縁切ってきてるぞ」
「そう?」
「そうだぞ?」
海鮮おこげが平らげられて、黒川は追加で半ラーメンなんかを頼んでいる。ハイボールもおかわりされた。
「まぁ、国領さんに対しては本気なんだな、と見てて思うが」
「俺が本気じゃない時なんてないけど」
「うーんなんつーか……唐木田に優しさってあったんだなって」
「失礼だな!?」
少し声を張れば、黒川はイタズラが成功した子供のように笑う。馬鹿にしやがって。
「俺、そんなに優しくないか?」
「自分の胸に手を当てて聞いてみてください?」
「…………優しくはない、かも」
優しい、と言われたら寒気するし。必要か?と思ってしまうあたり、優しい人とはかけ離れていそうだ。
「…………もういい、今日の夜健ちゃんに訊いてみるから」
「返答聞かせてください」
「嫌なこった」
優しい人になりたいわけじゃないけど。健ちゃんに訊こうと思うのは、健ちゃんは俺が優しかったら嬉しいのか気になるから。あと、これ以上自分で追求して考えるのめんどくさい。今日は健ちゃん家に帰ろう。炒飯を掻き込む。紹興酒はあとグラス半分までにしておこう。
