布田くんはたまにめんどくさくて国領くんはクソ真面目、柴崎くんはちゃらんぽらん

だる。これ午後から雨だろ……嫌。微かに頭痛のする頭を持ち上げて、目を擦る。月曜の朝ってのは、大抵誰にとっても憂鬱なもんだろう。まぁ今日は出向先が新宿なので、さして朝は早くない。それだけが救いだな。顔を洗ってから、トーストを焼いてバターを塗る。プレーンのヨーグルトにジャムを落として混ぜる。コーヒーを淹れて、テーブルの上に並べて。手を合わせるのは、大好きな人へのリスペクト。
(……テンション上がんないなぁ)
気圧低いとこれだから嫌だ。身体も頭も重い、眠い。トーストを食べ終えて、ヨーグルトを食べる前にスマホを開く。「翔悟さん」とのトークルームを開いて、止まる。
(いや、ちょっと連絡頻度多いんじゃない?)
本当は毎日連絡とって、くだらない話でも聞いてほしい。でもそういうのってうざいじゃん?ボクも女の子にやられたらちょっとめんどくさくなる。好きでもない相手からの好意なんて往々にして邪魔くさい。いや、翔悟さんはボクのこと好きだけど?だからこそ礼儀とか節度とか、品格とか。気にする。翔悟さんの負担になりたくないし、好きな人を好きなあまりにボク自身がダメになるのが嫌だ。ボクはボクを失くしてまで愛されようとは思わない。ヨーグルトを口にする。甘さが足りなくてジャムを足す。
(昨日だって連絡はしたけど、布田さん国領さんといるって言われちゃったしな)
てか、布田さん最近は大丈夫なの?国領さんは?あの2人になにかあると翔悟さんがボクに割いてくれる時間が減る。それが嫌でなんとなくいつも気にかけるけれど、後輩のボクに出来ることなんて限られている。もどかしい。愛する人の幸せを構成するピースは、ひとつじゃない。ボクもあの人たちも、同じピースのひとつならば、邪険に扱うなんて馬鹿げている。ボクは愛する人が愛する誰かも、世界も、ちゃんと愛して生きていきたい。
(隼人はお人好しだと微笑うけれど)
時計を見る。思ったよりも時間がない。いつも噛み締めるように繰り返す、自分の中の誓いみたいなもの。思考を止める。考えすぎとおせっかいは後回し。スーツに袖を通す。うーん毎日思うけれど、もっとオシャレなやつ着たい。遊びが欲しい。学生アルバイトの時代は、ホールに出る時に制服を着ていれば、私服は自由だったのになぁ。鞄を持って、サングラスをかける。スーツにサングラスかけるのは嫌なんだけど、日の光に目が弱いんだから仕方がない。外に出れば、まだ空は晴れている。念の為に折り畳み傘を鞄に入れる。エレベーターを待ちながら、どこかへ遊びに行きたい浮つきを我慢した。たまにはサボろう、なんて無責任出来ない仕事だし。ありがたいことに。身体も精神も丈夫に生まれたし。ありがたいことに。真っ当に生きますよ、それなりに幸せだからね。
(オンとオフの分別くらいあるもん!)

仕事に出ればそれなりに忙しく、昼休みは14時過ぎてしまった。仕事用のスマホをチェックミスないように入念に確認した後、私用のスマホを見る。特に重要な連絡はない。隼人がなんか愚痴っているくらい。ボクにそんな専門的なこと説明なしに言われても分かんないって。よしよしと宥めるスタンプだけ送る。ソイジョイを食べながら、今朝の続きを考える。昨日断られたんだから誘ってもよくない?うーん……カレンダーを見る。金曜日ホワイトデーじゃん!バレンタインのお返し強請ってもいいよね?それくらいはいいよね?いいことにして、メッセージを打つ。
『金曜、ホワイトデーだからデートして♡』
すぐに既読がつく。暇してるんだな……。
『おぉ、いいぞ』
簡素な返事でも、充分気分は持ち上がる。週末まで、頑張る動機になる。翔悟さんが、考えているスタンプを送ってきた。あれ、やっぱマズい……?
『あの、今日明日もわりと暇してるから……どっか行かねぇ?』
自分が今気持ち悪い顔してるのは分かるから、手で隠す。もぉ、可愛い。翔悟さんが寂しがり屋でよかったー!!これだから翔悟さんのこと好きなのやめられないんだよね。
『もちろん!!行く!!』
雨なんて気にならない。仕事、速攻で終わらせよ。なんかこういう時ってなにも怖くないし無敵な気分になるよね。好きな人いるって幸せ!
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