布田くんはたまにめんどくさくて国領くんはクソ真面目、柴崎くんはちゃらんぽらん

『買い物に行きます!!来る人!!』
土曜夕方、陽が落ちるか落ちないかみたいな時刻に、柴崎が3人のトークルームに投げてきた。いいよ~と投げて夕飯食べたりシャワー浴びたり。夜中になってどうものスタンプの後に『しょうがねぇな』と国領から返信が来ていた。ごねないの珍しい気がする。待ち合わせ場所と時間を大雑把に決めながら、就寝。お昼頃にJR新宿駅南口改札前。俺が最初に着いて、次に国領が来て、最後に柴崎がやってくる。遅れてきたから、国領が柴崎を軽く小突く。いつもの光景。
「買い物ってなに買うの?」
「いや、来週ホワイトデーだからさ。栗平とあかりさんになにかお礼買わねぇと」
「あぁ。確かに」
もうそんな時期か。1ヶ月が早い。俺もあかりさんには世話になってるしな……そんなことを思っていると、国領がなにやら酸っぱい顔をしている。どうした。
「どした?」
俺より先に柴崎が国領に訊ねる。国領は視線を外してあーだのうーだの。
「はっきりしろ。なに?」
俺がおでこに手刀を入れて先を促すと、もらってない、と小さくこぼす。
「あかりさんから、今年バレンタイン貰ってない……」
お通夜みたいな空気になってしまった。たかだかチョコレートを貰えていないってだけのことだけども。柴崎は目をしぱしぱと瞬きして、真剣に受け止めて考えている。
「そも、バレンタイン前後会ったのか?」
「会ってねぇ」
「じゃあ渡すタイミングなかっただけじゃね?」
柴崎の言葉に、俺は頷く。絶対そう。あかりさん、バレンタインのために相手を呼び出すとか絶対出来ない。
「そんな気にする必要ないでしょ。来年欲しいならホワイトデーは渡しとくのも手」
「ぜってぇあかりさんそれ気にするな……バレンタイン渡せてないのに!って。受け取り拒否されそう」
「そしたら来年は呼び出してでもバレンタイン渡しに来るでしょ」
「そんなもんか?」
俺と柴崎であれこれ会話するのを、国領はめちゃくちゃ不安そうな顔で聞いている。そんな大層な話じゃないって。
「まぁ、今日なんかちょうどいいもの見つけたら、あげたらいいんじゃないの?」
「そだな、そんな深刻になんなって」
「うん……」
国領の肩を叩いて、とりあえず腹ごしらえ。国領はよほどショックだったのか、ずっとしょもしょもとしていた。頭良いのに、こういうとこちょっとバカだし、引きずりやすいとこあるんだよな。

食事の後、高島屋の地下でお菓子を見て、柴崎は即決。俺と国領は伊勢丹も見ようという話になったが、国領がハンズで文房具見たいと言うのでエスカレーターで上がってきた。
「お菓子でなくても、小物でもいいんじゃない?」
俺がそう言うと、国領は眉間に皺を寄せて唸っている。だからそんな深く考え込むことじゃないったら。
「あかりさんは鳥とか好きだよなー」
「……文房具だと、単価が安すぎる」
「待って国領、いくらくらいのあげようとしてる?」
予算をこっそり聞いたら、義理として渡すには高すぎたのでもう一度手刀を入れておいた。気にする。そんな高いもんあげたらあかりさんが申し訳なさで寝込む。いやまぁ、貰っておけばいい話ではあるし、国領がそれだけ出したいならそれでもいいんだけども。相性悪いなこの2人。自己肯定感が低いとなかなか大変。国領がシールコーナーでシールを手に取るので、それは極端じゃないか?と口を出そうか迷う。
「シールにすんのか?」
「いや、自分用」
「そっかー」
自分用かい。突っ込みを入れながら、並び立って歩く2人の後ろをついていく。マイペースだなー。柴崎が買い物行くって時、結局時間かかるのは俺だったり国領だったりだ。特に国領はマイペース。このぐだぐだ感が心地いい。
「伊勢丹ってどっちだっけ?」
「高島屋から地下通路歩いた方が空いてる」
伊勢丹に向かうのに、国領を先頭にして歩く。確かに、地下通路は表より人が少なかった。あのさー!と柴崎が少し大きな声で話すので耳を傾ける。
「来週、なんか予定ある?」
「俺はないけど」
「……なかったらなんだ」
あー国領は内容によって検討するやつだな。柴崎は楽しそうに笑みを浮かべる。柴崎の中では、もう予定が決まったんだなこれ。
「旅行に行こうぜ!一泊二日で」
「はぁ?どこに」
「小田原あたり?」
「決めてねぇのか……」
「じゃあ小田原!」
「いいね、この前言ってたやつ?」
「そー。国領もうすぐ誕生日だし」
「1ヶ月先なんだが……」
「1ヶ月なんてすぐだし、4月って忙しいだろ?」
「いや社会人が忙しいのは年度末なんだよ」
「春休み入っちまうと混みそうだしさー」
「聞いてる?」
国領が管巻いてるが、こうなったら柴崎は聞かないし。諦めろ、の意を込めて肩を叩く。国領は大きくため息を吐いた。
「俺はスケジュリングする暇ねぇぞ」
「大丈夫!俺と布田でやっとく!」
「不安しかねぇ」
「まま、気まま旅もいいもんだよ?」
「そーそー。国領の誕生日祝いだし、なんもしなくていいぜ!」
「いや不安しかねぇ」
ぶつくさは言っているが、国領はどことなく嬉しそうにしている。旅行か。久しぶりだな。じゃあホワイトデー買い終わったら、その買い物もしようよ。楽しい。やっぱり、3人でいるのがなによりも楽しい。
33/45ページ
スキ