布田くんはたまにめんどくさくて国領くんはクソ真面目、柴崎くんはちゃらんぽらん
月初め、第1週の火曜日。毎月決まって、この日に開発部の唐木田くんとの会議がある。給湯室で2人分の紅茶を淹れて、第3会議室に向かう。お茶を淹れるのは後輩である俺の役目だが、唐木田くんは多分先輩にもお茶を淹れてもらう人間だと思う。廊下を歩き、目的のドアの前。一つ深呼吸をして、中に入る。白衣を着た唐木田くんが、軽く手を挙げる。
「お疲れ様です」
「お疲れ様」
洒落たメガネをしている。目が悪いのか聞いたら、伊達だと返ってきて驚いた記憶。オシャレなのと、自分の中での仕事のスイッチにしているんだそうだ。紅茶を置けば、間髪入れず飲む。俺も席につき、口をつけた。唐木田くんは足を組み、腕を組んで俺を見据える。もう慣れたけど本当に態度デカいな。相手は選んでるって本人は言うけども……ちょっと心配だし、そっちに選ばれてるのは複雑な気持ちだ。
「…………今月の新商品だけども」
「年末にテスト通ったやつですよね?」
「そう、それ」
これ言ったら反論されるだろうなぁ。分かってはいても、仕事なので言わなければならない。
「……売りにするの、洗浄力でいいの?」
「そりゃ1番時間かけたのそこだし、それでいいでしょ」
そうですよねー唐木田くんが力入れたのはそこなんですよねー。自分が作ったものに対して、絶対の自信があって誇らしそうにするとこは、可愛げあるなとは思う。思うけども。
「従来機と比べて、どんくらい伸びたんだっけ?」
「0.5%ですね」
……微妙!数字として売り出すのは微妙!俺の顔に出てたんだろう、唐木田くんは眉を寄せて不機嫌に見せる。
「0.5%伸ばすのがどんだけ大変か分かってます?」
「いや、分かって……いや分かってはいないですすみません」
プレッシャーがすごい。この子他の同僚と上手くやれてるのか?そのうちパワハラで退職になるんじゃないか。いや別に、俺は訴えないけれど。それだけ自分のこだわりとか、意思なんかを強く持てるのは憧れる。
「洗浄力No. 1!とか適当にコピーつければいいじゃないですか」
「嫌なんだよそういう抽象的で曖昧なキャッチコピー」
言い返したら、唐木田くんはふって笑った。紅茶を優雅に口にする。俺は次に何を言われるか身構える。
「強情だなぁ」
「……君が言うなよ」
息をひとつ吐き、俺も紅茶を飲んだ。唐木田くんは少し機嫌良さそうにして、テーブルに肘をついた。
「他に代替案あるんでしょ?聞かせてくださいよ」
「……コンパクトになったよね?」
「あぁついでだから小さくしましたね」
「お手入れも簡単になったよね?」
「ちょっと気になったんで直しておきました」
「こっち売りにしちゃダメ?」
「…………それ本当についでのついでで、ちょちょっとやっただけなんですけど」
「ちょちょっとやってこれならすごいことだと思うけど」
唐木田くんが黙る。彼は高圧的だが、褒めるとわりとちょろいのは知っている。褒められたり賞賛されることが大好きだ。心の純度を保ったまま大人になったのだと思う。本人が強かったから、それから周囲の人間に恵まれたから。
「充分、セールスになるポイントだと思うよ」
「……洗浄力も売ってくださいよ、布田さんなら売れるでしょ」
「分かった、そこもなにか売り文句考えておくよ」
とりあえずの落とし所に持ってこれた。ほっと一安心。あとの時間は紅茶がなくなるまで、情報共有したり雑談したり。1時間くらいで、現状復帰して出る。
「……それじゃ、僕の開発品たくさん売ってくださいね?」
去り際、唐木田くんに念押しにそう言われる。僕って言うのは、一応唐木田くんが相手に敬意を表する時だ。誤解されやすい子だよ本当。
「もちろん。ちゃんと数用意しておいてね」
「よろしくお願いします」
唐木田くんは頭を下げると、颯爽とラボに戻っていった。堂々としていて、羨ましい。伸び伸びと育ったんだろうな。唐木田くんのことは、嫌いじゃない。……扱いづらいのは、お互い様だろうし。不器用な人間って、なんか応援したくなるだろ。
「お疲れ様です」
「お疲れ様」
洒落たメガネをしている。目が悪いのか聞いたら、伊達だと返ってきて驚いた記憶。オシャレなのと、自分の中での仕事のスイッチにしているんだそうだ。紅茶を置けば、間髪入れず飲む。俺も席につき、口をつけた。唐木田くんは足を組み、腕を組んで俺を見据える。もう慣れたけど本当に態度デカいな。相手は選んでるって本人は言うけども……ちょっと心配だし、そっちに選ばれてるのは複雑な気持ちだ。
「…………今月の新商品だけども」
「年末にテスト通ったやつですよね?」
「そう、それ」
これ言ったら反論されるだろうなぁ。分かってはいても、仕事なので言わなければならない。
「……売りにするの、洗浄力でいいの?」
「そりゃ1番時間かけたのそこだし、それでいいでしょ」
そうですよねー唐木田くんが力入れたのはそこなんですよねー。自分が作ったものに対して、絶対の自信があって誇らしそうにするとこは、可愛げあるなとは思う。思うけども。
「従来機と比べて、どんくらい伸びたんだっけ?」
「0.5%ですね」
……微妙!数字として売り出すのは微妙!俺の顔に出てたんだろう、唐木田くんは眉を寄せて不機嫌に見せる。
「0.5%伸ばすのがどんだけ大変か分かってます?」
「いや、分かって……いや分かってはいないですすみません」
プレッシャーがすごい。この子他の同僚と上手くやれてるのか?そのうちパワハラで退職になるんじゃないか。いや別に、俺は訴えないけれど。それだけ自分のこだわりとか、意思なんかを強く持てるのは憧れる。
「洗浄力No. 1!とか適当にコピーつければいいじゃないですか」
「嫌なんだよそういう抽象的で曖昧なキャッチコピー」
言い返したら、唐木田くんはふって笑った。紅茶を優雅に口にする。俺は次に何を言われるか身構える。
「強情だなぁ」
「……君が言うなよ」
息をひとつ吐き、俺も紅茶を飲んだ。唐木田くんは少し機嫌良さそうにして、テーブルに肘をついた。
「他に代替案あるんでしょ?聞かせてくださいよ」
「……コンパクトになったよね?」
「あぁついでだから小さくしましたね」
「お手入れも簡単になったよね?」
「ちょっと気になったんで直しておきました」
「こっち売りにしちゃダメ?」
「…………それ本当についでのついでで、ちょちょっとやっただけなんですけど」
「ちょちょっとやってこれならすごいことだと思うけど」
唐木田くんが黙る。彼は高圧的だが、褒めるとわりとちょろいのは知っている。褒められたり賞賛されることが大好きだ。心の純度を保ったまま大人になったのだと思う。本人が強かったから、それから周囲の人間に恵まれたから。
「充分、セールスになるポイントだと思うよ」
「……洗浄力も売ってくださいよ、布田さんなら売れるでしょ」
「分かった、そこもなにか売り文句考えておくよ」
とりあえずの落とし所に持ってこれた。ほっと一安心。あとの時間は紅茶がなくなるまで、情報共有したり雑談したり。1時間くらいで、現状復帰して出る。
「……それじゃ、僕の開発品たくさん売ってくださいね?」
去り際、唐木田くんに念押しにそう言われる。僕って言うのは、一応唐木田くんが相手に敬意を表する時だ。誤解されやすい子だよ本当。
「もちろん。ちゃんと数用意しておいてね」
「よろしくお願いします」
唐木田くんは頭を下げると、颯爽とラボに戻っていった。堂々としていて、羨ましい。伸び伸びと育ったんだろうな。唐木田くんのことは、嫌いじゃない。……扱いづらいのは、お互い様だろうし。不器用な人間って、なんか応援したくなるだろ。
