布田くんはたまにめんどくさくて国領くんはクソ真面目、柴崎くんはちゃらんぽらん

どうも、黒川真二郎です。今日は先輩方が誕生日祝いに飲みへ誘ってくれたので、みなとみらいに来ています。人混みがすごい。駅前から離れ、けやき通りにある公園で先輩を待つ。予定の10分前くらいに、国領さんが1人でやってくる(俺は大体、20分前には待ち合わせ場所に来てしまう性格)。
「わりぃ、待ったか?」
「いえ、全然」
「柴崎の馬鹿、酔い潰れて俺の部屋で寝ててさ」
笑顔になってしまう。本当に仲良いですね。
「すまん、あとから追いかけてくると思う」
「全然いいですよ」
「あ、あと布田は予定あって来れなくてさ。よろしく言ってた」
「ありがとうございます」
軽く頭を下げる。ばちっと目が合って、国領さんは逸らしてからなにか言いづらそうに口をもごもごしている。
「その……なんだ。誕生日って未だにおめでとうを言われたいもんか?」
「俺は言われたら嬉しいですね」
俺がそう返すと、国領さんはそうか……と噛み締めたように言って黙り込む。言うのが恥ずかしいなら言わないでおけばいいのに、確認するところが生真面目で、可愛らしい人だと思う。いや、正直俺も言われたら恥ずかしいですよ。でも先輩が可愛いからチャラ。
「……誕生日、おめでとうございます」
「ありがとうございます」
「うん」
国領さんは息を吐くと、よし、とかけ声かけて歩き出した。そんなにエネルギーいることですかね。面白。国領さんを追いかけて歩く。途中、広場で大道芸をやっているのを見かけ、袖を引っ張った。国領さんは立ち止まって、俺の顔を見て。俺の視線の先を追って、あぁ、と頷く。
「見たいのか?」
「見ていきたいです」
「お前本当にああいうの見るの好きだよな」
そう、昔から大道芸とか路上ライブとか、足を止めるのが好きだ。なんか、演者にも観客にもドラマを感じるから。控えめな人だかりの、最後尾で演目を見る。ジャグリングとかバランス芸とか、オーソドックスでベーシックなもの。小さい子が多く、技が成功するごとに素直な歓声があがる。自分も拍手を送る。ミスの少ない演者で、それなりに盛り上がって終了した。前にまで出ていき、ひっくり返して置かれた帽子に投げ銭する。戻ってくると、国領さんが顎に手を置いてぼんやりしている。国領さんはなにか見る時大体このポーズだ。拍手することはまずない。
「本当に好きなんだな」
「好きですね……国領さんはなにか感想あります?」
「感想?」
数秒、真剣に悩んだあと。
「…………柴崎でも出来そうだなぁって」
「あぁ……」
そこ比べちゃダメなんですよね。あの人は特別なんで。国領さんは自分が頭良すぎることも、柴崎さんが運動神経良すぎることも、イマイチ理解していない。2人の中では普通なことが、どれだけハードルが高いことなのか分かっていない。ニコイチで他者を寄せ付けない関係性っていいよね。
「行きましょうか。お待たせしてすみません」
なので特に説明はせず、また並んで歩き出した。店を探してる最中、国領さんの携帯が鳴る。柴崎さんからだ。
「おう、おはよう……そうかいよかったな」
「え?酒残ってるから運転出来ない?」
「自業自得だろうがよ……電車で来い電車で」
「は?無理?まぁそうか……」
「いや知らねぇよ意地でなんとかしろ」
「なんでとんぼ返りで家戻んなきゃなんねぇんだよ俺が」
「つーかそもそもお前がいつもと違う場所で飲みてぇって言ったんだろ!」
「知らん!なんとかしろ自分で」
「あーもう!馬鹿!とりあえず支度しとけ!折り返すから」
電話が切れる。国領さんが大きくため息を吐く。俺はもうニコニコ。国領さんは額に手を当てて如何にも困ってますというポーズを取る。こういうところ古典的で面白い。
「すまん、あの馬鹿みなとみらいまでの電車分からねぇって……」
「まぁそうでしょうね」
「どうする?放っておいて飲むか?」
放っておけない癖に、そういうこと言うの意地らしいよなぁ。まぁ俺は意地悪じゃないので突かないが。
「流石に可哀想じゃないすか?」
「うんまぁ……予測出来たしな。俺のミスだわ」
へー自分のミスにカウントするんだ。へー。面白いなぁ本当。
「迎えいって、そこからまた考えます?」
「だな。しょうがねぇけど……」
国領さんは電車に乗るまで、ずっと悪態を吐いていた。これまた柴崎さん合流してから面白いことになるぞ。楽しみ!
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