布田くんはたまにめんどくさくて国領くんはクソ真面目、柴崎くんはちゃらんぽらん

こちら、黒川真二郎だ。唐木田が帰ってきて早々、栗平と喧嘩始めた。ここは唐木田の部屋だ。何故唐木田の部屋に俺たちが先にいたかと言うと、栗平が唐木田の家の鍵を持っているからである。
「健ちゃん、人ん家で暖房かけすぎだよ。着込んでるならまだしも」
「だって寒いもーん」
健ちゃんこと、栗平健介。唐木田以外に名前で呼ばれるとキレる。今は白い素肌を随分と晒して……まぁ、半裸だな。骨が浮き出てるんじゃないかってくらい細い。栗平はタバコに火をつけて、ソファーに足組んで座る。唐木田がため息吐きながら灰皿を用意する。
「てか、隼人帰ってくるの遅い」
「代休の健ちゃんと違ってこっちは半休だから……」
隼人こと、唐木田隼人。栗平とは幼稚園時代からの幼馴染だ。目の下の隈が目が大きいことを際立たせている。俺たちの中では1番小さい。確か170あるかないかくらい。当然のように、唐木田は栗平の隣に腰かける。距離が近い。嫌なら離れればいいのに、唐木田はタバコの火の煙をこれみよがしにはらう。
「てかさ、こないだ休日出勤してたら翔悟さんに会った!」
「会ったんじゃなくて呼んだんだろ布田さんが」
そこらへんの情報は共有しておいた。
「俺は国領さんと2人でデートしたし」
「は?ズルくない?ボクのことほっぽって?」
「お前は柴崎さんと会ってたんだろうが。布田さん付きだけど」
栗平は柴崎さんが好きで、唐木田は国領さんのことが好きだが。この2人、当然のようにいちゃつくし仲が良すぎて。本当に仲が良くて。言い争いをしていたと思えば甘い空気を醸し出し、そうかと思えば蹴りが入るくらいの喧嘩を始めたりする。見ていて飽きない。
「次の日の月曜も遊んでくれなかったじゃん!」
「いやそれは健ちゃんが女連れ込んでたからだろ」
「別に隼人が呼んでくれれば放り出して遊んだもん!」
「いや知らないよ……俺は論文読むのに忙しかったし」
常にこのペース。お互いのこと大事にしたり蔑ろにしてみたり。甘えてみたり突き放したり。今日は、栗平が少し甘えたそうにしているな。
「もう、知らなーい」
栗平がそっぽを向く。栗平はそうだな……太陽の貴公子ってところだろうか。女みたいな言動が目立つが、栗平は女扱いされるのを嫌う。それはそれとして、ヒールのある靴もマニキュアも、リップもアクセサリーも好んで身につける。部屋では全て脱ぎ捨てる。こう見えて、かなり男らしくて爽やかな面もあるし、実は面倒見がよくて優しい。
「不貞腐れたら構ってもらえると思ってるでしょ」
唐木田がああ言う時は、本人も少しその気になっている時だな。唐木田は暗黒皇太子みたいな性格している。かなりドライで完璧主義だ。大体の物語で悪役が好きになる。完全や理想を追い求める姿に共感するからだ。平気な顔するが、おそらく栗平がいないと生きていけない。
「別に不貞腐れてません」
「嘘つけ」
「不貞腐れてるのそっちでしょ」
「まさか」
いつもこの調子。そのうち、ひっつきあってせっつきあう。情報量が多すぎて申し訳ない、退屈だったな。けど、この2人の話は数ある物語の中でも俺のお気に入りなんだ。
「黒川、出かける準備して」
「ん?」
いちゃいちゃが始まるなぁと思っていたんだが、意外にも栗平は俺に話を振る。
「なんのためにボクら休んだと思ってんの」
「誕生日でしょ。祝ってあげる」
そういえばそうだった。今日は俺の28回目の誕生日。誕生日を2人に祝ってもらうのは、12回目になるかな。高校で2人と出会ってから、退屈したことはない。大好きで大切な、数少ない友人たち。
「ありがとう」
不器用な俺の笑みに、笑い返してくれる。他の人からは奇妙に映るかもしれないが、俺も栗平も唐木田も、この関係性に満足している。何処まで続くかは、まだ分からないけれど。俺は好きな作品が、延々と続いていって欲しいタイプだ。完結したら、寂しくて仕方ないだろ。
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