布田くんはたまにめんどくさくて国領くんはクソ真面目、柴崎くんはちゃらんぽらん

「つまみ、作りすぎじゃない?」
ほつれたボタンを直し、ポロシャツを椅子にかけて。布田はキッチンにいる国領の様子を伺う。貸してやったトレーナーはどうしたってぶかくて、国領は袖を輪ゴムで留めて着ている。それでも、肩周りと首元のゆるさはどうしようもない。布田がつまみ食いしようと手を出したのを、国領は叩く。
「柴崎も来ると思って」
「連絡つかないんじゃないの?」
「呼べば遅くなっても来るだろ」
まぁお酒あんなにあっても俺飲めないしな、と布田は思う。3人の中では布田が1番酒が飲めない。国領はわりかしお酒に強い。
「……いや柴崎に会いたいとかじゃなくてだな?」
「俺なにも言ってないよ」
布田がツッコめば、バツが悪そうに視線を泳がせた。その様子を見て、布田はくすくす笑う。国領はますます頬を赤らめた。
「いいじゃん別に、3人でいた方が楽しいでしょ」
「…………おう」
「仲間はずれも可哀想だし」
「そうだな」
国領は作ったつまみを雑に皿へ盛り付けていく。片付いてないテーブルはすぐにいっぱいになる。布田はテーブルを片付けることは諦めて、折り畳みの机を引っ張り出してきた。床に直座りになるが、まぁいいだろう。
「じゃあ、柴崎に電話してみるよ」
「頼む」
国領は調理の手を緩めることなく、返事をする。布田が電話をかけると、柴崎はほどなくして出た。
「もしもし?まだ仕事?……いや、別にいいよ。うん」
「国領来てるから、柴崎もくれば?……うん、夕香ならいないし」
「えぇ~しょうがないな……構わないけれど。え?着替えがない?」
「それは持ってきなよ……1回家戻ってさ。うん」
「うん。あとさ、国領の分もなんか着替え持ってきて。うん」
「じゃ、またあとで」
通話が切れる。国領は話を聞いていなかったようだ。泊まっていくかな。先に言った方がいいだろうか。布田は考える。後から言ったほうが、面白いのだけど。
「柴崎泊まるって言ってるけど、国領どうする?」
「着替えがねぇ」
「柴崎持ってくるって」
「あ?あー……」
国領は味見をしながら、しばらく答えなかった。なにか小さい声でぶつぶつ言っているが、布田はあえて聞かない。
「んー……じゃあ。泊まる」
「分かった」
暖房効かなくて寒いし、お風呂沸かしておこうか。布田は風呂場に行き、自分には狭い湯船を覗き込む。これなら、シャワーで流すだけでよさそうだ。布田はお湯張りをしながら、入浴剤の箱を探す。洒落たものではない、バブ。洗面台と壁の隙間に落っこちてるのを見つけ、拾い上げる。何種類かある柑橘系の香りの、ゆずを選んで洗面台の端に置いておく。
「お風呂沸かしてるから、柴崎が着替え持ってきたら入れば」
「あいつ、そんなすぐ来るのか?」
それもそうだ、と布田は気づく。お湯を張るのは早かったようだ。
「とりあえず、布田が先入れば?」
「…………そうする」
お風呂が沸いたのを、チャイムが伝える。ピロリロリン。国領はあらかた料理を終えて、椅子に座ってネットニュースを読み始めた。布田は1番国領から離れた位置にあるエビチリを、指で摘んでつまみ食いする。汚れた指は舌で綺麗に舐め取って。
「先飲んでていいよ」
「ん」
布田は脱衣所でさっさと服を脱ぎ捨て、風呂場に入った。1人だと入浴だって面倒な時がある。誰かが側にいるだけで、幾分生きやすい。その誰かが、本当は2人であって欲しい。
(友達にそんなこと、頼めないよな)
布田は顔を洗って、湯船に浸かった。バブを入れ忘れたことに気づき、一度出る。浴室から出ると寒い。手を伸ばしてバブを取ると、浴槽に放り込む。温まり直す。本当は顔まで浸かって沈みたい。この身体のデカさでは叶わない。
「馬鹿かお前誰が酒追加で買ってこいって言ったよ!」
浴室の外で国領の、そんなに怒っていない怒鳴り声が聞こえる。柴崎が来たらしい。
「3人で朝までなら足らなくね?」
「朝まで飲まねぇよ」
「えー飲もうぜ?」
「……あークソ。好きにしろ、勝手にしろっての」
「いぇーい!!」
布田は自然と笑みをこぼし、早く混ざりたくて風呂を上がった。部屋は冷えているはずだが、寒くはない。朝まで飲むしね。
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