君の空色が誇りに変わるまで
最近、兄ーエメの様子が、どこか余所余所しいのは感じていた。どうしてあげたらいい?と繰り返し聞くようだった。僕はエメと目を合わせたが、何も言わなかった。
「ラルー、待ちなさい」
廊下で先生とすれ違う。先生のことは……みんな先生が大好きだと言うから、混ざりたくない。けれど、別に嫌っているわけでは全くない。先生の話す音は宝石たちの中では1番低い。低い音は安心する。だから、僕は仕方なくゆっくりと振り返った。先生はエメと似た表情で僕を見下ろしていた。僕がまっすぐ視線を逸らさずにいると、小さくカチカチとなにかが鳴った。
「ラルー、最近の体調は」
「それ以上は言わないでください」
先手を取って、会話を奪う。なにを言われるかは分かっているのだから。
「エメに何か言われたのでしょう?僕に大人しくして欲しいとかなんとか。双晶だから、それくらいは分かりますよ」
先生は次の言葉を探している。それを待つことは出来た。自分がせっかちなのは知っているが、先生の言葉なら、少しだけ待てる。それが、少しだけ違和感であった。
「……大切な誰かがいるのであれば、」
「やめてください」
先生は困り眉になった。僕は自分に呆れて笑う。大切な誰か、いないわけでもないだろう。エメが危ない目に遭うなら、その矢はすべて振り払う。けれど、みんなと同じ形で、優しくはあれないのが僕なのだ。
「貴方に言われたら、それに従うしかなくなる。僕から自由がひとつ、削れる。削れるのは身体だけで充分だ」
先生は肩を上下させ、目を瞑った。僕は背を向けて学校の外へ歩き出す。
「……自分の身は、自分で守りなさい。孤独と自由は似た地平にある」
先生の声が警告する。僕はそれに喜びを覚えた。
「……僕はそれが欲しいんだ」
振り返らず、肩で風を切って僕は歩いた。外に出れば快晴で、昨日の雨で土の湿った香りが鼻に抜ける。草花は活き活きと揺れていた。陽の光は美味しくて、僕の割れやすい緑の髪がチカチカと反射した。太陽を見上げ、手を透かす。
「さあ、どこからでもおいでよ」
今日来る月人は、どれくらい僕を満足させるかな。
「ラルー、待ちなさい」
廊下で先生とすれ違う。先生のことは……みんな先生が大好きだと言うから、混ざりたくない。けれど、別に嫌っているわけでは全くない。先生の話す音は宝石たちの中では1番低い。低い音は安心する。だから、僕は仕方なくゆっくりと振り返った。先生はエメと似た表情で僕を見下ろしていた。僕がまっすぐ視線を逸らさずにいると、小さくカチカチとなにかが鳴った。
「ラルー、最近の体調は」
「それ以上は言わないでください」
先手を取って、会話を奪う。なにを言われるかは分かっているのだから。
「エメに何か言われたのでしょう?僕に大人しくして欲しいとかなんとか。双晶だから、それくらいは分かりますよ」
先生は次の言葉を探している。それを待つことは出来た。自分がせっかちなのは知っているが、先生の言葉なら、少しだけ待てる。それが、少しだけ違和感であった。
「……大切な誰かがいるのであれば、」
「やめてください」
先生は困り眉になった。僕は自分に呆れて笑う。大切な誰か、いないわけでもないだろう。エメが危ない目に遭うなら、その矢はすべて振り払う。けれど、みんなと同じ形で、優しくはあれないのが僕なのだ。
「貴方に言われたら、それに従うしかなくなる。僕から自由がひとつ、削れる。削れるのは身体だけで充分だ」
先生は肩を上下させ、目を瞑った。僕は背を向けて学校の外へ歩き出す。
「……自分の身は、自分で守りなさい。孤独と自由は似た地平にある」
先生の声が警告する。僕はそれに喜びを覚えた。
「……僕はそれが欲しいんだ」
振り返らず、肩で風を切って僕は歩いた。外に出れば快晴で、昨日の雨で土の湿った香りが鼻に抜ける。草花は活き活きと揺れていた。陽の光は美味しくて、僕の割れやすい緑の髪がチカチカと反射した。太陽を見上げ、手を透かす。
「さあ、どこからでもおいでよ」
今日来る月人は、どれくらい僕を満足させるかな。
