君の空色が誇りに変わるまで

雨音が、学校全体を打ちつけて鳴いている。ザァァと横殴りに風が強く吹いて、廊下は水浸しになる。僕は、窓辺の花瓶が倒れて割れると思って、両手で抱えていた。どこに置こうか。雨の日は好きだ、嵐の日は身体の内側でインクルージョンが叫ぶ感覚がある。雨、風、雷。次の晴れ間までの騒がしい休息。けれど、みんながみんな学校にいるから、どこにいればいいか分からないこともしばしば。僕は花瓶を抱えたまま、窓辺に座ってしまうことにした。シャツもズボンも濡れて身体に張り付く。それがよかった。池に暗く、濃い緑の瞳が映る。白粉が落ちた。頬に一筋、晴れた空のように透き通る、欠片が走っている。自分の顔すら守れなかった。空色を撫でる。少しだけ、安心するような。
「こんなとこにいた。びしょ濡れじゃん?」
「……ルチルが探してた」
「はい、うそー。もう回診は済ませてきましたー」
「…………」
「その顔も悪くないじゃん?高貴で深い緑を割く、穏やかな空色」
「緒の浜でエメラルドが出たら、取り替える」
「はは、ひでぇ。見られたくねぇなら、もう少し中に入ったら?」
スカイの目を睨む。濃い蒼の前髪の隙間、意思の読めない薄氷のような瞳が覗く。僕は肩を揺らして、立ち上がった。
「医務室に白粉を取りに行くだけだ」
「怒られると思うぜー?今年、白粉少なかったから」
自然な動作で、スカイは僕の抱えた花瓶を取り上げて持った。他人の持つ花瓶は、大事に思えない。
「白粉がないなら、レッドベリルにマスクを縫ってもらう」
「そんな嫌がらなくてもいいじゃん!綺麗よ?今もちゃんと」
視線だけ交わして、それ以上はなにも言わなかった。スカイの色は、嫌いじゃない。嵐の明けた、遠く雲が流れていく朝の色だ。綺麗だ。この世で1番綺麗な色はなんだ?気高い石は、何色で出来ている?仲間には思いつかなかった。いつか見つかった時、僕は負けずにいられるだろうか。
1/4ページ
スキ