君の空色が誇りに変わるまで

厚い雲が空を押し潰すような日。見回りは最低限、どの石も各々好きな場所でリラックスしている。ほかの石と過ごすのも嫌いじゃないが、なんだかんだ俺は深い緑色の頭を探してしまう。ま、目を離すとどこに行くか分かったもんじゃないしな。これは俺の仕事です。
「ラルー、見なかった?」
ラルーの兄であるエメに訊ねる。エメは困ったように、寂しそうな顔で笑った。
「あの子、最近僕のところに来てくれないのよね」
「あら、そうなの?」
「見つけたら連れてきてくれる?双晶の勘としてはそうね……海辺にいる気がする」
「おーらい、探してみる。あんがと」
西の浜辺を目指して、歩く。いよいよ雨が降りそうだな。雨が白粉を流すと、ラルーの顔には一筋俺の欠片が光る。結局、緒の浜にエメラルドなんて滅多に出ねぇし、そのまんまだ。…………これを嬉しいと感じるのは、変なことなんだろうか?他に俺たちみたいな補完をしてる奴らいないから、分からん。パパラチアが起きた時に挨拶に行くと、一瞬、少しだけ眉をひそめる。そのことがなんとなく気にかかる。でも、エメラルドの中に存在しないスカイトパーズがハマってるのは、綺麗だと思う。つか、構成要素お互いバラバラなのに、よくあいつ俺の欠片で保ってるよな。なんで?まぁいいや。西の浜辺に着いた。ラルーは水平線を見ながら体育座りをして、ぼんやりしていた。
「お迎えにあがりましたよ〜」
「…………頼んでないけど」
「まぁな。でも、エメが寂しがってた」
ラルーはやれやれと首を傾げ、その首に触れる。ラルーの詰められた襟の内側には、エメが丁寧に拵えた刺繍がしてある。ラルーは不安になったりめんどくさくなった時、その刺繍を守るかのように触れるのだ。気付いてんのか知んねーけど。
「エメといると、疲れる」
「でもお前にとってただひとつの兄ちゃんだろ?嫌いなわけじゃないよな?」
「お前よりかは大事」
「そこで俺と比べないでくれるかな!?傷つきますけど!?」
ラルーはふふっと笑った。そして立ち上がって、学校と反対方向へ歩いていく。
「おーいお迎えきたって言ったっしょ。まだどっか行くのか?」
「……照明クラゲの数が少し減ってるから、波打ち際にいないかと思って」
ラルーはそんな言い訳をするが、確かに減ってた気がする。なに、お前そんなことも見てるのか。戦闘のことしか頭にない、バーサーカーだとか呼ばれてるの知ってる?ちな、それモリオンと同じ称号なんだけど、いりますか?
「あと数十分待てば、綺麗な夕焼けが見れるかもしれないしね」
「……青空、夕空、夜空。どれが好きなん?」
「空はいつでも空さ」
「……はあーん」
ラルーの後ろをついて歩く。日が暮れるなこりゃ。頭ひとつ分、小さいラルーの頭を見る。空にこの色が現れることはない。
「……学校帰ったら、エメのとこ行ってやれよ」
「気が向いたらね」
「俺が付き添ってもいいし」
「邪魔」
「おいおいおい、好意を無駄にすんな?」
「邪魔なものは邪魔だ」
ラルーは空を見上げて、手を空に透かす。今日は曇りだから光は集まらない。ラルーは手を握りしめて、またそのまま降ろして歩いていく。2人分の足跡が波に攫われていく。潮も満ちてくるんですけど?でも、帰ろうが言えずに歩き続けた。
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