大空の方向は見失わない
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八時半ーー辺りはすっかり暗くなった下校道。僕は一人、黒曜に立ち寄るか、そのままワンルームの自宅に帰るかを考えていた。今宵は新月で、星々はここぞとばかりに輝きだす。そして、巡る世では暗闇に乗じて様々なことがうごめき出すのだ。要は、暗殺には適した夜だ。僕は、後方百メートル付近に違和感を感じ、黒曜に立ち寄ることを諦めることにした。ただ者ではないオーラを感じる。僕は臨戦態勢に入り、そいつの姿を確認するために高いところを目指した。民家の生け垣を足場にし、電信柱を駆け上る。すると、後方で炎圧を感じ、一気に距離を詰められた。電信柱のてっぺんにいるのに、正体を表したその人物の顔は僕の目の前にあった。
「!! ……お前はミルフィオーレの」
「怖がらなくていいよ、屍チャン♪ 別に取って喰おうって訳じゃないから」
背中の翼をはためかせながら、白蘭は無邪気な笑みを浮かべる。この時代に彼と出会うのは初めてである。
「何をしにきた……なにか企み事でも?」
「いいや、ちょっとした散歩」
そう言われても油断は出来なかった。こいつは、十年後の世界で僕の胴体を泣き別れにしている。戦っても、勝機はない。僕は自分の退路の心配をしていた。
「ハハハ、だからそう構えなくてもいいって♪」
「どの口が……改心していようとも、君はどのみち僕の嫌うマフィアに変わりない」
「寂しいこと言うね……せっかく、祝福しにきてあげたのに」
「祝福?」
僕が顔をしかめれば、白蘭はより笑みを深くした。電信柱の上、強く吹いていた風が止んだ。
「おめでとう。君はもう、一人じゃないよ」
「!!」
向けられたのは慈愛の瞳だった。僕は困惑する。この男は何を言い出すんだ。
「屍チャン、僕はね、君の能力を昔から買っていた。でも、君はどの平行世界でも僕を拒んだ。そうして、」
白蘭の物悲しげな表情に、逃げることも言葉を遮ることも忘れてしまった。金縛りにあったように、僕は動かずに彼の言葉を待つ。
「……そうしていつも、誰にも知られずにひっそりとこの世を去ったんだ」
平行世界のことはよく分からない。けれども、自分の死に方としては、想像に固くない。おそらく、そうやって僕は死ぬだろう。この世界でだって。
「それが、どうしたっていうんだ?」
「分からないかい、屍チャン。もう君は、一人にはなれないってことだよ」
一人に、なれない?
「君がボンゴレに入れる世界線は、恐らくこの世界だけなんだよ。だから、きっと君は幸せになれる。だから、おめでとう。それを言いにきたのさ」
余計なお世話というものだ、それは。しかも、何故僕がボンゴレに入ったことが幸せに繋がるというのだ。大嫌いなマフィアに、身を置いているこの状況が。良い方向に流転するとは思えない。
「今は分からないかもしれないけど、綱吉クンがきっとそうするさ。だから、安心したらいい」
「……貴方の話に、一個も安心できる要素なんてありませんでしたが」
「アハハ! 相変わらず頑固だなぁ君! ま、いいさ」
パタパタと羽ばたくのを止め、白蘭は地面に舞い降りた。そうして、歩いて僕から離れていく。
「たまには僕のミルフィオーレにも遊びに来なよ。お茶と美味しいお菓子を用意して待ってるからさ」
「誰が行くものか」
もう一度僕に振り向き、白蘭は笑った。それに睨み返しても、その笑みは消えなかった。手を振りながら去っていく背中を見送る。一人に、なれない。その言葉が呪縛のように僕の思考を支配した。一人。一人は。どうしようもなくなった僕は帰る方向を変え、黒曜に向かっていた。
「!! ……お前はミルフィオーレの」
「怖がらなくていいよ、屍チャン♪ 別に取って喰おうって訳じゃないから」
背中の翼をはためかせながら、白蘭は無邪気な笑みを浮かべる。この時代に彼と出会うのは初めてである。
「何をしにきた……なにか企み事でも?」
「いいや、ちょっとした散歩」
そう言われても油断は出来なかった。こいつは、十年後の世界で僕の胴体を泣き別れにしている。戦っても、勝機はない。僕は自分の退路の心配をしていた。
「ハハハ、だからそう構えなくてもいいって♪」
「どの口が……改心していようとも、君はどのみち僕の嫌うマフィアに変わりない」
「寂しいこと言うね……せっかく、祝福しにきてあげたのに」
「祝福?」
僕が顔をしかめれば、白蘭はより笑みを深くした。電信柱の上、強く吹いていた風が止んだ。
「おめでとう。君はもう、一人じゃないよ」
「!!」
向けられたのは慈愛の瞳だった。僕は困惑する。この男は何を言い出すんだ。
「屍チャン、僕はね、君の能力を昔から買っていた。でも、君はどの平行世界でも僕を拒んだ。そうして、」
白蘭の物悲しげな表情に、逃げることも言葉を遮ることも忘れてしまった。金縛りにあったように、僕は動かずに彼の言葉を待つ。
「……そうしていつも、誰にも知られずにひっそりとこの世を去ったんだ」
平行世界のことはよく分からない。けれども、自分の死に方としては、想像に固くない。おそらく、そうやって僕は死ぬだろう。この世界でだって。
「それが、どうしたっていうんだ?」
「分からないかい、屍チャン。もう君は、一人にはなれないってことだよ」
一人に、なれない?
「君がボンゴレに入れる世界線は、恐らくこの世界だけなんだよ。だから、きっと君は幸せになれる。だから、おめでとう。それを言いにきたのさ」
余計なお世話というものだ、それは。しかも、何故僕がボンゴレに入ったことが幸せに繋がるというのだ。大嫌いなマフィアに、身を置いているこの状況が。良い方向に流転するとは思えない。
「今は分からないかもしれないけど、綱吉クンがきっとそうするさ。だから、安心したらいい」
「……貴方の話に、一個も安心できる要素なんてありませんでしたが」
「アハハ! 相変わらず頑固だなぁ君! ま、いいさ」
パタパタと羽ばたくのを止め、白蘭は地面に舞い降りた。そうして、歩いて僕から離れていく。
「たまには僕のミルフィオーレにも遊びに来なよ。お茶と美味しいお菓子を用意して待ってるからさ」
「誰が行くものか」
もう一度僕に振り向き、白蘭は笑った。それに睨み返しても、その笑みは消えなかった。手を振りながら去っていく背中を見送る。一人に、なれない。その言葉が呪縛のように僕の思考を支配した。一人。一人は。どうしようもなくなった僕は帰る方向を変え、黒曜に向かっていた。
