大空の方向は見失わない
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春の天気は移ろいやすい。不安定な気圧と大気の中、僕は最近の仕事である校内の窓ふきを行っている。退屈だが、平和な仕事で助かるし、なにより考え事をするのに向いている。
「おーい」
ボンゴレの内部には侵入出来た……あとは火種に使って燃やし尽くすだけ。そのための準備と布石を打っていかなくてはならない。そうしてこの窓ガラスのように美しく純粋な世界をーー
「おーいって! 聞いてっか?」
誰かが誰かを呼ぶ声がうるさい。しかも遠くの者を呼び止めるのには頼りない声量。気づいて欲しいならさっさと名前でもなんでも叫べばいいんだ。
「おい! あんたのことだぜ!」
「!!」
肩を叩かれて、ようやく隣にいた男が僕を呼んでいるらしいことに気がつく。いやあ、なんかどうも近くに居座るなとは思っていた。
「これはこれは……申し訳ない。人から呼ばれるのは、久しぶりなもので」
「おっ、やっとこっち向いたな! つーか、ホントに聞いた通り骸そっくりだな、あんた」
「お前……確かボンゴレの雨の守護者の」
山本……武と言ったっけか。聞けば沢田綱吉の友人で、あれよあれよという間にファミリーに組み込まれた元一般人……哀れなものだ。こんな薄汚いマフィアの世界になんて来なくてもいいだろうに。
「なんの用だ? 見た通り僕は窓ふきに忙しい」
「んー? いや、新しく仲間が増えたって聞いたから、俺は挨拶に来ただけだぜ」
その言葉に僕は眉を潜める。確かにマフィアに所属して僕は生きているが、それでもやはり。骸と同様に、僕もあんなものと同じ扱いをされるのは癪に触る。
「マフィアなんて愚かな者に、歓迎される謂われはないですよ」
「ぷっあははは。骸がいいそうなセリフだなっ」
「骸と同一視されるのも僕は好かない。彼とは一心同体だが、僕と骸は別個体だ」
そろそろいいか、と僕は不機嫌を直さないままに窓ふきを再開しようとした。
「あー気を悪くしたなら悪かった! ごめんな! じゃあ、こーいうのはどうだ?」
ちら、と視線だけ寄越せば、真っ直ぐな瞳とかち合う。ああ、こんな真人間と向き合うのも久方ぶりだな。
「ゆっくり友達から、始めよーぜ!」
「は?」
「それなら、文句ねーだろ」
山本武はニカッと笑うと、じゃあ俺は野球するからまたな、と手を振った。それに控えめに手を振り返してやる。そうすると、また満足そうに笑う。その表情をぼんやり見送ると、窓に雨粒の当たる音がした。あいつ、野球するんじゃなかったか。
「鎮静の雨……ね」
少し癒された孤独を覆い隠すように、次第に雨足は強くなっていった。
「おーい」
ボンゴレの内部には侵入出来た……あとは火種に使って燃やし尽くすだけ。そのための準備と布石を打っていかなくてはならない。そうしてこの窓ガラスのように美しく純粋な世界をーー
「おーいって! 聞いてっか?」
誰かが誰かを呼ぶ声がうるさい。しかも遠くの者を呼び止めるのには頼りない声量。気づいて欲しいならさっさと名前でもなんでも叫べばいいんだ。
「おい! あんたのことだぜ!」
「!!」
肩を叩かれて、ようやく隣にいた男が僕を呼んでいるらしいことに気がつく。いやあ、なんかどうも近くに居座るなとは思っていた。
「これはこれは……申し訳ない。人から呼ばれるのは、久しぶりなもので」
「おっ、やっとこっち向いたな! つーか、ホントに聞いた通り骸そっくりだな、あんた」
「お前……確かボンゴレの雨の守護者の」
山本……武と言ったっけか。聞けば沢田綱吉の友人で、あれよあれよという間にファミリーに組み込まれた元一般人……哀れなものだ。こんな薄汚いマフィアの世界になんて来なくてもいいだろうに。
「なんの用だ? 見た通り僕は窓ふきに忙しい」
「んー? いや、新しく仲間が増えたって聞いたから、俺は挨拶に来ただけだぜ」
その言葉に僕は眉を潜める。確かにマフィアに所属して僕は生きているが、それでもやはり。骸と同様に、僕もあんなものと同じ扱いをされるのは癪に触る。
「マフィアなんて愚かな者に、歓迎される謂われはないですよ」
「ぷっあははは。骸がいいそうなセリフだなっ」
「骸と同一視されるのも僕は好かない。彼とは一心同体だが、僕と骸は別個体だ」
そろそろいいか、と僕は不機嫌を直さないままに窓ふきを再開しようとした。
「あー気を悪くしたなら悪かった! ごめんな! じゃあ、こーいうのはどうだ?」
ちら、と視線だけ寄越せば、真っ直ぐな瞳とかち合う。ああ、こんな真人間と向き合うのも久方ぶりだな。
「ゆっくり友達から、始めよーぜ!」
「は?」
「それなら、文句ねーだろ」
山本武はニカッと笑うと、じゃあ俺は野球するからまたな、と手を振った。それに控えめに手を振り返してやる。そうすると、また満足そうに笑う。その表情をぼんやり見送ると、窓に雨粒の当たる音がした。あいつ、野球するんじゃなかったか。
「鎮静の雨……ね」
少し癒された孤独を覆い隠すように、次第に雨足は強くなっていった。
