本編
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日曜の夜間任務に人が集まらなかったらしく、募集が出ていた。都合がついたので、名乗り出ておいた。当日になって確認すると、フリーのB級に混じって、宜嗣の名前を見つける。あいつがいるなら安心だし楽しいな、と気楽な気持ちで現場に向かった。
「よっ、ザキ。ばんは〜」
「ばんは。ノリ、体調は大丈夫か?」
「今んとこね〜」
俺より一回り小さい身体を、伸ばしたり曲げたり。宜嗣はストレッチしながら、余裕の笑みを見せる。流石にA級1位だなぁと、同い年なのにトップを走る背中を見つめる。俺より小さいのに、こいつの存在感は大きい。何足止めてんだ、憧れてるだけじゃダメだぞ。自分を鼓舞し、背中を追いかける。現場に到着し、フリーのB級とも合流する。
「今日の指揮は誰が取るんですか?」
誰かから質問が飛ぶ。そりゃあ、もちろん。
「ザキでしょ。ザキに頼むわ」
「!? いや、順当に考えてノリだろ!?」
あっけらかんと俺に振るので、驚いて反論する。宜嗣がやらなきゃ、次は俺なんだろうが。そんないきなり、納得できない。
「俺、指揮とか盤面とかからっきしだもん。出来ないよ」
「いや、でも……」
「じゃあ、A級権限でザキに委託する」
「……お前なぁ」
「ザキのが俺より上手く出来るし向いてるよ。俺、出来ないことはしない主義なの」
にこっと宜嗣は笑う。こいつは笑って誤魔化すとこがあるのを知ってるから、恨めしい視線を投げた。それにも怯まず、笑顔を崩さないから、ため息が出る。
「上手く俺のこと、使ってね?」
勝気で挑戦的な笑顔に変わる。魅せられる、間違いなくこいつはA級だ。ずるいよなぁ、それは。プレッシャーに逃げ出したくなるが、友達の期待と信頼にくらい、応えたい。俺は腹を括ることにした。
「しょうがねぇな。やってやるよ」
「やった!よろしくお願いしまーす」
軽々しく頭を下げる。宜嗣は感情表現が豊かな奴だ。裏表もない。だからこそ、純粋な期待は正直怖い。
「お互いがカバー出来る位置を保って、巡回する。先頭はノリで」
「了解〜」
太刀川隊の隊服が翻る。宜嗣が堂々と歩くのを、後ろについて歩く。早速、ゲートが開いて座標が送られてくる。
「ノリ、先行して見てきてくれ。トリオン兵の数と種類が分かったら、全員で討伐する」
「了解〜」
トリオン兵でも、油断はしない。ノリは防御が上手くて、先行は安心して任せられる。任務は始まったばかり。長い夜になりそうだ。
任務が終わった。忙しかった。とにかくゲートの発生が多かった。なんとか捌き切り、緊急脱出した奴を1人も出さずに終わらせることが出来た。
「お疲れ様」
ぐっと拳を突き出される。拳を合わせて、労い合う。宜嗣は笑っていた。役目を果たせたと、肩の荷が降りて安心する。
「けど、トリオン切れ寸前だこれ。換装解きたくねぇ〜……」
「あっ、悪ぃ……!!」
宜嗣がトリオン切れ起こすと、体調が悪くなるのを忘れていた。働かせすぎちまった。あたふたとする俺の胸を、宜嗣は軽く拳で押した。
「ザキのせいじゃねぇよ。俺が弱いのが悪いの」
「でも」
「あーなんでもかんでも背負い込むんじゃねぇよ。俺の責任だから、お前は気にすんな」
宜嗣が俺の肩を叩く。顔色は優れない。
「俺のこと、使ってくれてありがとうな」
それでも、笑顔を絶やさない宜嗣に、応えられる人間になりたいと思った。お前が無理をしてでも任務をすると言うなら、無理をさせない方法を俺が考える。任務が始まる前はお前に全て任せるつもりだったんだけどな。終わったら、隣に立ちたいと思わせてくれた。
「けど、帰りは家まで送ってくれない?1人で帰るの嫌」
急に甘ったれになる宜嗣に、思わず吹き出した。本当、お前って奴はずるいよ。
「いいよ、もちろん」
「悪い、頼む〜」
本部まで、2人並んで歩いて帰る。朝焼けが清々しく街を照らす。少しだけ、意識が変わった。だからなのか、街並みやお前のことが、はっきり見えているような気がした。輪郭の見えてきた目指す場所が、遠くても足掻き続けたい。辿り着いた時、お前はどんな風に笑ってくれるだろうか?
「よっ、ザキ。ばんは〜」
「ばんは。ノリ、体調は大丈夫か?」
「今んとこね〜」
俺より一回り小さい身体を、伸ばしたり曲げたり。宜嗣はストレッチしながら、余裕の笑みを見せる。流石にA級1位だなぁと、同い年なのにトップを走る背中を見つめる。俺より小さいのに、こいつの存在感は大きい。何足止めてんだ、憧れてるだけじゃダメだぞ。自分を鼓舞し、背中を追いかける。現場に到着し、フリーのB級とも合流する。
「今日の指揮は誰が取るんですか?」
誰かから質問が飛ぶ。そりゃあ、もちろん。
「ザキでしょ。ザキに頼むわ」
「!? いや、順当に考えてノリだろ!?」
あっけらかんと俺に振るので、驚いて反論する。宜嗣がやらなきゃ、次は俺なんだろうが。そんないきなり、納得できない。
「俺、指揮とか盤面とかからっきしだもん。出来ないよ」
「いや、でも……」
「じゃあ、A級権限でザキに委託する」
「……お前なぁ」
「ザキのが俺より上手く出来るし向いてるよ。俺、出来ないことはしない主義なの」
にこっと宜嗣は笑う。こいつは笑って誤魔化すとこがあるのを知ってるから、恨めしい視線を投げた。それにも怯まず、笑顔を崩さないから、ため息が出る。
「上手く俺のこと、使ってね?」
勝気で挑戦的な笑顔に変わる。魅せられる、間違いなくこいつはA級だ。ずるいよなぁ、それは。プレッシャーに逃げ出したくなるが、友達の期待と信頼にくらい、応えたい。俺は腹を括ることにした。
「しょうがねぇな。やってやるよ」
「やった!よろしくお願いしまーす」
軽々しく頭を下げる。宜嗣は感情表現が豊かな奴だ。裏表もない。だからこそ、純粋な期待は正直怖い。
「お互いがカバー出来る位置を保って、巡回する。先頭はノリで」
「了解〜」
太刀川隊の隊服が翻る。宜嗣が堂々と歩くのを、後ろについて歩く。早速、ゲートが開いて座標が送られてくる。
「ノリ、先行して見てきてくれ。トリオン兵の数と種類が分かったら、全員で討伐する」
「了解〜」
トリオン兵でも、油断はしない。ノリは防御が上手くて、先行は安心して任せられる。任務は始まったばかり。長い夜になりそうだ。
任務が終わった。忙しかった。とにかくゲートの発生が多かった。なんとか捌き切り、緊急脱出した奴を1人も出さずに終わらせることが出来た。
「お疲れ様」
ぐっと拳を突き出される。拳を合わせて、労い合う。宜嗣は笑っていた。役目を果たせたと、肩の荷が降りて安心する。
「けど、トリオン切れ寸前だこれ。換装解きたくねぇ〜……」
「あっ、悪ぃ……!!」
宜嗣がトリオン切れ起こすと、体調が悪くなるのを忘れていた。働かせすぎちまった。あたふたとする俺の胸を、宜嗣は軽く拳で押した。
「ザキのせいじゃねぇよ。俺が弱いのが悪いの」
「でも」
「あーなんでもかんでも背負い込むんじゃねぇよ。俺の責任だから、お前は気にすんな」
宜嗣が俺の肩を叩く。顔色は優れない。
「俺のこと、使ってくれてありがとうな」
それでも、笑顔を絶やさない宜嗣に、応えられる人間になりたいと思った。お前が無理をしてでも任務をすると言うなら、無理をさせない方法を俺が考える。任務が始まる前はお前に全て任せるつもりだったんだけどな。終わったら、隣に立ちたいと思わせてくれた。
「けど、帰りは家まで送ってくれない?1人で帰るの嫌」
急に甘ったれになる宜嗣に、思わず吹き出した。本当、お前って奴はずるいよ。
「いいよ、もちろん」
「悪い、頼む〜」
本部まで、2人並んで歩いて帰る。朝焼けが清々しく街を照らす。少しだけ、意識が変わった。だからなのか、街並みやお前のことが、はっきり見えているような気がした。輪郭の見えてきた目指す場所が、遠くても足掻き続けたい。辿り着いた時、お前はどんな風に笑ってくれるだろうか?