本編

夢をみる、夢をみる。追いかけていたあの背中をみる。ブルーは強かった。ギューダにはついていけなかった。エメリーを宥めながら、僕にはなにが出来るかを考えていた。そのうちに、みんないなくなった。ブルーが、ギューダが、俺になんて声をかけるのか、全くわからないんだ。

朝目覚めると、しとしとと雨が降っていた。自己鍛錬は中止にしよう。エレスチャルの予報次第だが、今日はのんびりと出来そうだ。朝礼は、デュモルチェライトの役目だから。きっと時間通りに始まるだろう。寝床を抜け出し、服を着る。蝶が刺繍された箇所を撫でる。そうやって、思い込む。俺が最強、今この場では。何回唱えたって、なんの意味もないよ。俺は、強くない。ブルー、ギューダ。こんな俺じゃ、まだ届かないんだろ?ねぇ。返答などない。外の雨が少し激しくなってきた。朝礼まで、少し時間がある。俺は長期休養所に足を向けた。

「おはようございます、お加減はいかがですか」
「問題ないよ、ありがとう」
セレスティンと挨拶を交わし、比較的手前の箱を漁る。ブルーとギューダは自然と高い場所に移動されて、神聖視されてしまった。それでも、たまに内緒で覗き込むけど。俺が愛したのは、守れなかったのは、同じ空の下にいた彼らだから。で、俺が今探していたのは。濃い黄色が光を反射している。シェーライトの左腕。あの日、俺が守り損ねたもの。割らないよう、手袋で触れて。ギューダとの約束も、もうないのに。破ったらおしまい、とはいかなくて。
「朝礼、始まってしまいますが……」
セレスティンが心配そうに、小さな声で俺に囁く。ここにいたい。ここにいたいよ。今いるみんなが嫌いなわけじゃない。それでも俺は。もうここにいたいよ。
「大丈夫、そろそろ行こうか」
セレスティンと共に休養所を離れる。振り返らない。何度約束を破ろうと、どれだけ失ったものが多かろうと。スピネルは、戦うために生まれてきた。棘のような赤は、俺が俺である印。あの日、今でも、俺を頼る手があるのであれば。俺はその手を振り払わない。そのうちさ、ブルーの気持ちもギューダの気持ちも、分かるかもしれないしさ。乾いた笑いが顔に張り付いて、忘れるように雨が洗い流した。
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