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サッカー部を追い出されて早4ヶ月。サッカーをしてくれる相手なんていねぇのに、なんとなくサッカーボールは連れ回してしまう。デートに行くんだから、邪魔になんのにね。芦虎は最初の一度だけ「サッカーボールだ」と呟いて、首を傾げた。それに俺が曖昧な笑顔で返したきり、なにも言ってはこない。芦虎はうっかりボールを蹴ってしまうことがあると、「ごめん」と謝る。蹴るためのボールよ?これ。
「日が暮れるのも早くなったなぁ」
閉園の近づく公園で、黄昏の空を2人で見上げる。ふいに、蝋燭が吹き消えるような不安が湧いてきて、心が真っ暗になった。このままだと死ぬ気がする。毎日、そんなことを思うけれど別に死ぬなんてことはない。身体は、生きている。心が抜け落ちて、がらんどうになるのが嫌だ。サッカーがしたい、それだけのことなのに。どうすればいいのか、さっぱり分かんねぇんだ。
「サッカーボール、大事?」
「ん?あぁ」
知らぬ間にサッカーボールを撫でていたらしく、そんなことを聞かれる。芦虎は俺の手を小さな両手で掴むと、自分の頭に乗せた。なにそれ、撫でて欲しかったの?芦虎といると笑っちゃう。雨が降ってても、立ち止まってても、それでも生きていると思い出せる。細胞が少しだけ、湧き立って潤いを取り戻すような。
「ね、サッカーしよっか」
「……俺、ルールも分からないし多分下手くそ」
「2人なんだからルールもクソもねぇよ」
俺はサッカーボールをネットから出すと、ポンポンと軽くリフティングをする。芦虎がおー、と目を輝かせるから、楽しくなる。人のためにサッカーしたことなんてない。でも、今は芦虎が喜ぶ顔が見たくて、あれこれ小ワザ繰り出してボールと戯れる。ちょん、と芦虎の足元にボールを転がした。芦虎はボールを両手で拾い上げる。そうじゃないってば。また俺は笑っている。芦虎の手を引っ張り上げて立たせた。地面にボールを置く。
「俺の方に蹴って、パス出すんだよ」
「うーん」
芦虎はとても不安そうな顔で、それでもボールを蹴り上げた。思ったよりも、力加減が上手だ。俺はもう少し離れて、芦虎にボールを蹴り返す。芦虎は受け取るのが下手くそで、ボールは股の間をすり抜けた。よたよたしながらボールに追いついて、また伺うように俺の顔を見る。
「返して?」
「うーん」
「さっきよりちょい強くていいよ」
芦虎はまた自信なさげにボールを蹴る。ちょっと脇にズレてるけど、なんなく取る。またもう少し後ろに下がったら、芦虎が前に出てきた。もう、そうじゃないったら。でも、それでいいよ。芦虎の真ん前にパスを出す。今度は、上手く受け取ってくれた。そのまま、間髪入れずに返してきた。成長してる。ちょっと強めのパスを出した。わ、と驚いて芦虎は転んだ。慌てて駆け寄る。
「ごめん、その。調子乗った」
「うーん」
芦虎は抱き起こす俺の腕をつたって、胸に飛び込んでくる。甘えん坊さんだなぁ。背中を撫でて、ぎゅっと抱きしめて。身体を離して、空を見ると一番星が輝き始めている。そろそろ、帰らなきゃ。途端に寂しくなる。けど、さっきみたいに不安で怖いわけじゃない。
「帰ろっか」
「んー」
もう一度、芦虎がひっついてくる。頭にキスを落として、手を繋いで出口まで歩く。
「ね、またサッカーしよ?」
「……サッカーになってんのかなこれ」
「俺がしよって言ったらそれでいいんだよ」
「そう?楽しい?」
芦虎が俺を見上げる。身を屈めて、頬に触れて、見つめ合った。俺が笑うと、安心したように口角をあげて。穏やかで緩やかな、音もない爆発。それを感じて、満足する。到底足りない。足りないけれど。君とつまらないサッカーをする。つまらなくたって、君からもらうパスは極上だもの。
「日が暮れるのも早くなったなぁ」
閉園の近づく公園で、黄昏の空を2人で見上げる。ふいに、蝋燭が吹き消えるような不安が湧いてきて、心が真っ暗になった。このままだと死ぬ気がする。毎日、そんなことを思うけれど別に死ぬなんてことはない。身体は、生きている。心が抜け落ちて、がらんどうになるのが嫌だ。サッカーがしたい、それだけのことなのに。どうすればいいのか、さっぱり分かんねぇんだ。
「サッカーボール、大事?」
「ん?あぁ」
知らぬ間にサッカーボールを撫でていたらしく、そんなことを聞かれる。芦虎は俺の手を小さな両手で掴むと、自分の頭に乗せた。なにそれ、撫でて欲しかったの?芦虎といると笑っちゃう。雨が降ってても、立ち止まってても、それでも生きていると思い出せる。細胞が少しだけ、湧き立って潤いを取り戻すような。
「ね、サッカーしよっか」
「……俺、ルールも分からないし多分下手くそ」
「2人なんだからルールもクソもねぇよ」
俺はサッカーボールをネットから出すと、ポンポンと軽くリフティングをする。芦虎がおー、と目を輝かせるから、楽しくなる。人のためにサッカーしたことなんてない。でも、今は芦虎が喜ぶ顔が見たくて、あれこれ小ワザ繰り出してボールと戯れる。ちょん、と芦虎の足元にボールを転がした。芦虎はボールを両手で拾い上げる。そうじゃないってば。また俺は笑っている。芦虎の手を引っ張り上げて立たせた。地面にボールを置く。
「俺の方に蹴って、パス出すんだよ」
「うーん」
芦虎はとても不安そうな顔で、それでもボールを蹴り上げた。思ったよりも、力加減が上手だ。俺はもう少し離れて、芦虎にボールを蹴り返す。芦虎は受け取るのが下手くそで、ボールは股の間をすり抜けた。よたよたしながらボールに追いついて、また伺うように俺の顔を見る。
「返して?」
「うーん」
「さっきよりちょい強くていいよ」
芦虎はまた自信なさげにボールを蹴る。ちょっと脇にズレてるけど、なんなく取る。またもう少し後ろに下がったら、芦虎が前に出てきた。もう、そうじゃないったら。でも、それでいいよ。芦虎の真ん前にパスを出す。今度は、上手く受け取ってくれた。そのまま、間髪入れずに返してきた。成長してる。ちょっと強めのパスを出した。わ、と驚いて芦虎は転んだ。慌てて駆け寄る。
「ごめん、その。調子乗った」
「うーん」
芦虎は抱き起こす俺の腕をつたって、胸に飛び込んでくる。甘えん坊さんだなぁ。背中を撫でて、ぎゅっと抱きしめて。身体を離して、空を見ると一番星が輝き始めている。そろそろ、帰らなきゃ。途端に寂しくなる。けど、さっきみたいに不安で怖いわけじゃない。
「帰ろっか」
「んー」
もう一度、芦虎がひっついてくる。頭にキスを落として、手を繋いで出口まで歩く。
「ね、またサッカーしよ?」
「……サッカーになってんのかなこれ」
「俺がしよって言ったらそれでいいんだよ」
「そう?楽しい?」
芦虎が俺を見上げる。身を屈めて、頬に触れて、見つめ合った。俺が笑うと、安心したように口角をあげて。穏やかで緩やかな、音もない爆発。それを感じて、満足する。到底足りない。足りないけれど。君とつまらないサッカーをする。つまらなくたって、君からもらうパスは極上だもの。
