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駅前が人でごった返していて、舌打ちをした。なんだって俺の住む地域はどこも人で溢れているんだか。手を合わせる神も仏も俺にはいないし、まぁ海は見えるが大して綺麗とも思わねぇし。あんまいいことはねぇ。けど、今日は15日で日曜だから、あの人が鎌倉に来る日。昔は約束もなくなんとなくで会っていたが、最近はとにかく人混みが酷いから、約束して待ち合わせて会っている。待ち合わせ付近で背の高い外国人観光客が、誰かに道を尋ねている。邪魔だなと思って見ていたら、そいつに道案内しようと歩き出す貴方が目に飛び込み。慌てて割って入る。
「Where are you taking us?」
威圧すると、道を聞いてただけ、もう分かったから大丈夫と早口で英語で話して退散した。道になんて迷ってねぇだろ、まったく。
「大丈夫かな……」
明らかにナンパなのに、芦虎はまだ心配そうに外国人が去った方向を見ているから、ため息が出る。
「完全にナンパだ。なんも心配する必要ねぇ」
「そうなの?」
「そうだよ……もっとちゃんと危機感持て」
「俺、人見知りだけどな」
芦虎は呑気にあくびをして、リュックからペットボトルを出してお茶を飲む。手を差し出してみると、なにも言わずにペットボトルを渡してきた。うんまぁ、俺は慣れてるから。慣れてるからだと思うけど、誰にでも優しく親切だから心配だ。ペットボトルのお茶を一口もらい、返した。芦虎は自然な動きで俺と腕を組むようにするから、心臓が痛い。合理的、なんでしょう。こっちの気持ちなんてなんも考えてないの、腹立つよ。でも頼りにされてるのが嬉しいから、結局のところはどうでもいい。
「そういや今日、花は?」
「あ……忘れちゃった」
芦虎はちょっと俯いて、自分にがっかりしてるみたい。抜けてるとこ、可愛い。そのことに開き直らずにちゃんと落ち込むのも可愛い。ちゃんと見ててあげなくちゃ、バカ兄貴が見捨てた代わりに。俺が守ってあげなきゃいけないんだ。
「そこのスーパーで買っていけばいいだろ」
「うん、ごめん」
「謝ることじゃないだろ」
肩より下の位置にある頭に触れて、髪を整えるように撫でた。ふわふわの猫っ毛。陽に透かすと、うっすら茶色。躓きそうになった、危ねぇ。前を向いて、歩く。スーパーで1番安い仏花を買う。人混みをはぐれて、古いお寺に辿り着く。慣れた足取りで芦虎は奥に進み。古林家の墓石に手を合わせる。その背を眺めていた。手を合わせる神も仏もいねぇ。そんなものに祈ったりしないが、芦虎が手を合わせる姿は清廉に見えて、どこか心が凪ぐ。やがて芦虎は顔を上げて、墓の掃除を始める。手伝うために、俺も墓の敷地内に入る。墓の主に誰か尋ねられた気がしたので、この人を嫁に貰いますと答えておいた。
「ありがとう」
「……別に」
お礼言われるほどのことでも。それでも、芦虎はありがとうを忘れたことはない。なんに対しても、ありがとうだ。1番多く、ありがとうを言われているのは誰なんだろう。ご両親か?それはまぁ、越えられそうもないけど。それ以外では、1番になれたらいいのに。今の俺では、難しい。とりあえず毎日一緒に過ごせたらいいんだけど。そしたら、1番多くありがとうを貰うんだ。
「お昼、なに食べる?」
「……うち、くれば」
どうせどこも観光価格だし、鬼のように混んでいる。下心なんかじゃ断じてねぇ。あ、部屋片付け忘れたかも。いや、まぁ。芦虎はそんなこと気にしないと思うし……呼んでも構わないだろ、うん。
「じゃあお邪魔します。お菓子買っていこうね」
そんなの気にしないでいいのに。でも、お菓子を一緒に食べるのが楽しみなので、なにも言わない。お菓子食べてる時の芦虎、可愛いから。ちょっと今からニヤケそうなのは、絶対バレたくないから視線を外した。芦虎は掃除道具を丁寧に元の場所に戻す。夏の日差しの下、君を切り取った世界だけ輝いて見えた。
「Where are you taking us?」
威圧すると、道を聞いてただけ、もう分かったから大丈夫と早口で英語で話して退散した。道になんて迷ってねぇだろ、まったく。
「大丈夫かな……」
明らかにナンパなのに、芦虎はまだ心配そうに外国人が去った方向を見ているから、ため息が出る。
「完全にナンパだ。なんも心配する必要ねぇ」
「そうなの?」
「そうだよ……もっとちゃんと危機感持て」
「俺、人見知りだけどな」
芦虎は呑気にあくびをして、リュックからペットボトルを出してお茶を飲む。手を差し出してみると、なにも言わずにペットボトルを渡してきた。うんまぁ、俺は慣れてるから。慣れてるからだと思うけど、誰にでも優しく親切だから心配だ。ペットボトルのお茶を一口もらい、返した。芦虎は自然な動きで俺と腕を組むようにするから、心臓が痛い。合理的、なんでしょう。こっちの気持ちなんてなんも考えてないの、腹立つよ。でも頼りにされてるのが嬉しいから、結局のところはどうでもいい。
「そういや今日、花は?」
「あ……忘れちゃった」
芦虎はちょっと俯いて、自分にがっかりしてるみたい。抜けてるとこ、可愛い。そのことに開き直らずにちゃんと落ち込むのも可愛い。ちゃんと見ててあげなくちゃ、バカ兄貴が見捨てた代わりに。俺が守ってあげなきゃいけないんだ。
「そこのスーパーで買っていけばいいだろ」
「うん、ごめん」
「謝ることじゃないだろ」
肩より下の位置にある頭に触れて、髪を整えるように撫でた。ふわふわの猫っ毛。陽に透かすと、うっすら茶色。躓きそうになった、危ねぇ。前を向いて、歩く。スーパーで1番安い仏花を買う。人混みをはぐれて、古いお寺に辿り着く。慣れた足取りで芦虎は奥に進み。古林家の墓石に手を合わせる。その背を眺めていた。手を合わせる神も仏もいねぇ。そんなものに祈ったりしないが、芦虎が手を合わせる姿は清廉に見えて、どこか心が凪ぐ。やがて芦虎は顔を上げて、墓の掃除を始める。手伝うために、俺も墓の敷地内に入る。墓の主に誰か尋ねられた気がしたので、この人を嫁に貰いますと答えておいた。
「ありがとう」
「……別に」
お礼言われるほどのことでも。それでも、芦虎はありがとうを忘れたことはない。なんに対しても、ありがとうだ。1番多く、ありがとうを言われているのは誰なんだろう。ご両親か?それはまぁ、越えられそうもないけど。それ以外では、1番になれたらいいのに。今の俺では、難しい。とりあえず毎日一緒に過ごせたらいいんだけど。そしたら、1番多くありがとうを貰うんだ。
「お昼、なに食べる?」
「……うち、くれば」
どうせどこも観光価格だし、鬼のように混んでいる。下心なんかじゃ断じてねぇ。あ、部屋片付け忘れたかも。いや、まぁ。芦虎はそんなこと気にしないと思うし……呼んでも構わないだろ、うん。
「じゃあお邪魔します。お菓子買っていこうね」
そんなの気にしないでいいのに。でも、お菓子を一緒に食べるのが楽しみなので、なにも言わない。お菓子食べてる時の芦虎、可愛いから。ちょっと今からニヤケそうなのは、絶対バレたくないから視線を外した。芦虎は掃除道具を丁寧に元の場所に戻す。夏の日差しの下、君を切り取った世界だけ輝いて見えた。
