プロトタイプ/蛹
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隣で蛍がひとつ、あくびをした。つられてうつって俺もひとつ。それだけのことに、酷く安心した。蛍の前で、舎弟にやるような建前はいらない。見せつけなきゃならない毛皮なんてない。カッコはつけたい、それは心から。だから、蛍といて疲れることはない。ほら、またあくびが出た。よく晴れた夏の午後、昨夜の雨はなかったことように乾いている。学校の裏手の、何故だか鶏が一羽だけ飼われた飼育小屋の前。誰も来ない。飼育小屋の向かいに大きな常緑樹が植っていて、その根元に2人、腰を下ろしている。額から顎にかけて、つーと汗が滴った。俺はスポーツタオルで拭う。ふと、蛍を見下ろす。視線がぶつかる。いつ見ても、くり抜きたくなるほど好きな色の瞳。
「蛍、暑くないか?お前、汗かかないのか」
「あぁ。暑いのは分かりますが、暑いからといって汗はかかないし、移動もしないですね」
「それは……大丈夫なのか?」
汗なんて見せるもんでもないけど、体温調節には必須だろ。蛍の二の腕に触れる。俺の手よりも冷たい。
「まぁ私、激しい運動とかしませんし!」
「………大丈夫かぁ?」
「大丈夫ですよ。今までも大丈夫だったんだから」
蛍はどこか自慢げで、多分心配なんかせずに信用されたいんだろう、までは読める。蛍は、俺に信用して欲しいらしい。それを無視してあれこれ甘やかして、結局不機嫌になったりする。つまらないものばかりはなんでも手に入る俺にとっては、蛍の機嫌の揺らぎが、面白くて仕方ない。蛍といて、正解なんてどこにも落ちてない。蛍の気分次第だ、甘えるのも雨の中も。猫でもいいだろって?猫なんかよりずっと難解だから、一千倍は価値があんだよ。
「蛍、熱中症になったらやべぇ。これ、ちゃんと飲め」
俺が飲みかけのスポーツドリンクを手渡すと、素直に全部飲み干した。頭を撫でる、さらさらな太陽と同じ色の髪。ずっと触れていたいと思ってしまうから、誤魔化すように編み込みを作ってあげて。そうすると、蛍も機嫌が良さそうで。かわいいんだ、俺の妹かわいい。とはいえ、蛍の髪も太陽光線に焼かれて、熱を持っている。
「移動するか、ここ暑すぎ」
「はい、そうですね。そうしましょう」
「どこ行く?」
「図書室がいいです」
「言うと思った」
顔見合わせて笑う。図星を打ち抜けた時だって、退屈だとは思わない。むしろ嬉しい。蛍は飼育小屋の前にしゃがむと、鶏になにか言って、手を振っていた。俺は、蛍を引っ張り上げるように右手を掴んだ。なにもかも小さい。でも他の誰よりも面白い。手元に置きたい、ずっと見ていたい。俺が歩き出すのを待つように、蛍は俺を見上げた。俺は親指で額を撫でた。蛍はされるがままに目を細めた。蛍なら、猫になっても飼うかもしれない。そうか、蛍がどんな姿であれ、蛍だと分かればなんだっていいのかもしれない。ひとつまた気づきを得て、蛍と図書室に向かう。涼しい場所で、一緒に本を読む。世界のアップデートを、それぞれが行なうデート。1番多いだろうか、そうやって過ごすのが。飽きたことなんて、まさかな。蛍見てる方が楽しい時は、ありますけど。ゆるく繋いでた手のひらを、蛍がなぞるように撫でて、人差し指をきゅ、と握った。嬉しくなって、蛍の手のひらすべてを、包み込むよう、ギュと握った。大丈夫、君の全て取りこぼすようなことはないからな。兄ってそういうもんじゃんか。
「蛍、暑くないか?お前、汗かかないのか」
「あぁ。暑いのは分かりますが、暑いからといって汗はかかないし、移動もしないですね」
「それは……大丈夫なのか?」
汗なんて見せるもんでもないけど、体温調節には必須だろ。蛍の二の腕に触れる。俺の手よりも冷たい。
「まぁ私、激しい運動とかしませんし!」
「………大丈夫かぁ?」
「大丈夫ですよ。今までも大丈夫だったんだから」
蛍はどこか自慢げで、多分心配なんかせずに信用されたいんだろう、までは読める。蛍は、俺に信用して欲しいらしい。それを無視してあれこれ甘やかして、結局不機嫌になったりする。つまらないものばかりはなんでも手に入る俺にとっては、蛍の機嫌の揺らぎが、面白くて仕方ない。蛍といて、正解なんてどこにも落ちてない。蛍の気分次第だ、甘えるのも雨の中も。猫でもいいだろって?猫なんかよりずっと難解だから、一千倍は価値があんだよ。
「蛍、熱中症になったらやべぇ。これ、ちゃんと飲め」
俺が飲みかけのスポーツドリンクを手渡すと、素直に全部飲み干した。頭を撫でる、さらさらな太陽と同じ色の髪。ずっと触れていたいと思ってしまうから、誤魔化すように編み込みを作ってあげて。そうすると、蛍も機嫌が良さそうで。かわいいんだ、俺の妹かわいい。とはいえ、蛍の髪も太陽光線に焼かれて、熱を持っている。
「移動するか、ここ暑すぎ」
「はい、そうですね。そうしましょう」
「どこ行く?」
「図書室がいいです」
「言うと思った」
顔見合わせて笑う。図星を打ち抜けた時だって、退屈だとは思わない。むしろ嬉しい。蛍は飼育小屋の前にしゃがむと、鶏になにか言って、手を振っていた。俺は、蛍を引っ張り上げるように右手を掴んだ。なにもかも小さい。でも他の誰よりも面白い。手元に置きたい、ずっと見ていたい。俺が歩き出すのを待つように、蛍は俺を見上げた。俺は親指で額を撫でた。蛍はされるがままに目を細めた。蛍なら、猫になっても飼うかもしれない。そうか、蛍がどんな姿であれ、蛍だと分かればなんだっていいのかもしれない。ひとつまた気づきを得て、蛍と図書室に向かう。涼しい場所で、一緒に本を読む。世界のアップデートを、それぞれが行なうデート。1番多いだろうか、そうやって過ごすのが。飽きたことなんて、まさかな。蛍見てる方が楽しい時は、ありますけど。ゆるく繋いでた手のひらを、蛍がなぞるように撫でて、人差し指をきゅ、と握った。嬉しくなって、蛍の手のひらすべてを、包み込むよう、ギュと握った。大丈夫、君の全て取りこぼすようなことはないからな。兄ってそういうもんじゃんか。
