プロトタイプ/蛹
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「玲王先輩、今日も送ってくれるんですか?」
「おう、これから毎日送っていくつもりだけど」
蛍は不思議そうな顔をして、眉を下げる。困らせてるか?でも蛍は外見が幼いし、東京はまだ不慣れだと言うし。絶対、俺が送ってやった方がいいと思うが。
「玲王先輩の帰りが遅くなってしまいます」
「あ?別に構わねぇだろ。帰ったってなんもねぇし」
「部屋でのんびりとか、休む時間は必要ですよね?」
自分の部屋を思い返して、苦笑した。別に、なんもない。なんでも揃ってるし、片付けはちゃんとしてるけど。物が多いだけで、がらくたばかりが詰まった部屋だ。
「物が多いだけだよ、俺の部屋は」
「なんで?」
「俺飽き性だから、なに買ってもらってもすぐやめちまうんだ」
ほー、と蛍は声を出して、興味深そうに俺の話を聞いて。
「玲王先輩の部屋は、きっと宝箱みたいなんでしょうね」
蛍が柔らかくそう笑うので、ぎくりとして後ろめたくなった。なんでも買い与えられることを、無駄遣いしてると咎められそうで。サボってるって言われそうで。
「宝物は一個もねぇけどな」
「そうですか?探しに行ってもいいですか?」
「…………蛍が来たいなら、来ればいい」
影法師が後ろから迫ってくるような、じりじりとした不安を覚えた。蛍が俺の部屋で、宝物を見つけたらどうしよう。俺だけ気づいてなくて、蛍が気づいてしまって。だからなんだって思うけど、もし。この気持ちはなんて呼ぶんだろうか。情けないような、悔しいような。……呆れられてしまうのが、怖い?失望されたくないな、蛍には俺を慕っていて欲しい。
「遊びに行きたいです!玲王先輩がどんな生活をしているか、気になります」
「……大したことじゃねぇって」
「あ!ごめんなさい、失礼でしたか……?」
蛍が不安そうに俺を見るから、無理して笑って、頭を撫でた。別にいいよ、と言えば、ほっとした顔で胸を撫で下ろしていた。蛍が来たいなら、部屋でもなんでも来たらいい。別に都合の悪いことなんかない。そうだ、せっかくだからいろいろ珍しいもん見せてやろう。きっと蛍は喜ぶし。蛍の家の前まで着いた。門から玄関までが近い、一般家庭。庭に小さいけどみかんの木が植っている。蛍は俺に頭を下げた。
「今日もありがとうございました、すみません」
「すみませんじゃねぇ。心配も遠慮もいらねぇって言ってんだろ」
「そうは言われましても……」
「最悪、俺はめんどくさくなったら迎え呼べるから。なんも心配しなくていいんだって」
「……玲王先輩がひとりなのは、なんだか心配です」
心底心配そうに俺を見上げるから、俺はかあっと頬に熱を感じた。そんな心配されるほど、頼りないかな俺。でもどこかくすぐったくて心地よい気もする。こんな心配は、親にも友達にもされたことがなくて。
「大丈夫、だって。変なこと心配すんな」
蛍の頭を乱雑に撫でて、誤魔化す。蛍はわ、と声をあげ、俺の手に両手で触れてやんわりと押し戻す。そうして、もう一度頭を下げて家に入っていった。しばらく、ぼんやり蛍の家の明かりを眺めていた。踵を返す。空は薄暗くなってきて、遠くに一番星が見える。蛍と見たかったな、なんて思う。まぁそのうちに、見ることもあんだろ。明日も明後日も、こうやって送っていくし。1人でまっすぐ家に帰るより、寄り道して蛍と帰る方がずっと楽しいし。蛍のことは妹と思ってるから、なんも迷惑なことなんてないよ。もっと俺を頼って、必要としてくれ。
「おう、これから毎日送っていくつもりだけど」
蛍は不思議そうな顔をして、眉を下げる。困らせてるか?でも蛍は外見が幼いし、東京はまだ不慣れだと言うし。絶対、俺が送ってやった方がいいと思うが。
「玲王先輩の帰りが遅くなってしまいます」
「あ?別に構わねぇだろ。帰ったってなんもねぇし」
「部屋でのんびりとか、休む時間は必要ですよね?」
自分の部屋を思い返して、苦笑した。別に、なんもない。なんでも揃ってるし、片付けはちゃんとしてるけど。物が多いだけで、がらくたばかりが詰まった部屋だ。
「物が多いだけだよ、俺の部屋は」
「なんで?」
「俺飽き性だから、なに買ってもらってもすぐやめちまうんだ」
ほー、と蛍は声を出して、興味深そうに俺の話を聞いて。
「玲王先輩の部屋は、きっと宝箱みたいなんでしょうね」
蛍が柔らかくそう笑うので、ぎくりとして後ろめたくなった。なんでも買い与えられることを、無駄遣いしてると咎められそうで。サボってるって言われそうで。
「宝物は一個もねぇけどな」
「そうですか?探しに行ってもいいですか?」
「…………蛍が来たいなら、来ればいい」
影法師が後ろから迫ってくるような、じりじりとした不安を覚えた。蛍が俺の部屋で、宝物を見つけたらどうしよう。俺だけ気づいてなくて、蛍が気づいてしまって。だからなんだって思うけど、もし。この気持ちはなんて呼ぶんだろうか。情けないような、悔しいような。……呆れられてしまうのが、怖い?失望されたくないな、蛍には俺を慕っていて欲しい。
「遊びに行きたいです!玲王先輩がどんな生活をしているか、気になります」
「……大したことじゃねぇって」
「あ!ごめんなさい、失礼でしたか……?」
蛍が不安そうに俺を見るから、無理して笑って、頭を撫でた。別にいいよ、と言えば、ほっとした顔で胸を撫で下ろしていた。蛍が来たいなら、部屋でもなんでも来たらいい。別に都合の悪いことなんかない。そうだ、せっかくだからいろいろ珍しいもん見せてやろう。きっと蛍は喜ぶし。蛍の家の前まで着いた。門から玄関までが近い、一般家庭。庭に小さいけどみかんの木が植っている。蛍は俺に頭を下げた。
「今日もありがとうございました、すみません」
「すみませんじゃねぇ。心配も遠慮もいらねぇって言ってんだろ」
「そうは言われましても……」
「最悪、俺はめんどくさくなったら迎え呼べるから。なんも心配しなくていいんだって」
「……玲王先輩がひとりなのは、なんだか心配です」
心底心配そうに俺を見上げるから、俺はかあっと頬に熱を感じた。そんな心配されるほど、頼りないかな俺。でもどこかくすぐったくて心地よい気もする。こんな心配は、親にも友達にもされたことがなくて。
「大丈夫、だって。変なこと心配すんな」
蛍の頭を乱雑に撫でて、誤魔化す。蛍はわ、と声をあげ、俺の手に両手で触れてやんわりと押し戻す。そうして、もう一度頭を下げて家に入っていった。しばらく、ぼんやり蛍の家の明かりを眺めていた。踵を返す。空は薄暗くなってきて、遠くに一番星が見える。蛍と見たかったな、なんて思う。まぁそのうちに、見ることもあんだろ。明日も明後日も、こうやって送っていくし。1人でまっすぐ家に帰るより、寄り道して蛍と帰る方がずっと楽しいし。蛍のことは妹と思ってるから、なんも迷惑なことなんてないよ。もっと俺を頼って、必要としてくれ。
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