プロトタイプ/蛹
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蛍を妹と決めたから、いつだって守ってやるのが務めだろうと思うので。なるべくどんな時も一緒にいるようにしている。来月から学校が別になってしまうので、こんな時間も減るんだろうか。昆虫の飼育ケースが押し並ぶ蛍の部屋で、暇つぶしにビジネス書を読む。飽きてきてるけど、一応最後まで読むことにして。蛍は今日もずっとケースの中の昆虫を眺めている。瞳を輝かせて、楽しそうに観察日記をつけている。少し羨ましく思う。俺にもこんなに胸を躍らせる出来事が、これから待っているだろうか?あまり期待出来ない。
「蛍」
「はい」
視線はくれない、声だけの返事。呆れて寂しくて、苦笑が溢れる。そういえば、蛍と一緒にいるのは季節が一周しても飽きなかった。煩わしく思うことも、なかった。蛍は俺に真っ直ぐ接してくれる。御影コーポレーションの御曹司だとか、誰もがこぞってたかる肩書きには目もくれない。ただ俺のすることなすことを、素直に称えて、拍手をくれて、激励する。くすぐったいくらいに。俺が蛍の分からないことを教えれば、嬉しそうにして全部吸収する。蛍が側にいると、俺はこのままでもいいと思える。退屈も噛み殺せる。ビジネス書のページが進まなくなった。蛍のこと、眺めていたから。
「なんでもねぇ」
「あとこの子描いたら、終わりにするので……」
蛍は真剣な眼差しで、昆虫を見つめる。その情熱を理解してやれればと思うが、どうしたって昆虫は可愛くは見えない。でも、一生懸命な蛍は可愛いと思う。理解は出来ないけど、精一杯応援する。いつか君の夢が、世界中を驚かすことを夢に見る。それは楽しみ。つまらない毎日の中、呼吸を繰り返すよすが。
「んー〜……」
蛍が伸びをする。終わったらしい。腰掛けていたベッドから立ち上がって、頭を撫でてやる。蛍が俺の方に身体を預けるので、そのまま抱き上げて膝に乗せた。蛍は大きくあくびをする。随分集中してたから疲れたんだろう。
「甘いもん、食うか?持ってきたんだ」
「いいんですか?いつもありがとうございます」
もちもちとしたほっぺを摘んで、揉んで。にゃにするんですか、とふわふわ笑いながら言っている。蛍が笑ってると落ち着く。
「蛍は特別だぞ」
「へへー嬉しいです」
鞄からいいとこの焼き菓子を取り出して、蛍に封を開けて渡す。蛍は喜んで頬張った。
「こらこら、溢すなよ」
菓子のカスをティシュで拾って、ついでに口の周りも食べカスだらけだから拭いて。ゴミをゴミ箱に放る。眠そうな蛍をギュッと抱き寄せて、ぽんぽんと肩を叩いてやる。そのうちに、寝息が聞こえてくる。俺も眠たくなってきた。狭い蛍のベッドの上に、丸まるようにして横になる。蛍は腕の中。西日が窓に差している。小一時間くらいなら、いいだろ。土と草の匂いがこもる部屋で、互いの体温を分かち合うようにして眠る。新しい生活が訪れるのが、少し不安なことは忘れて。きっと変わらないさ。変わらずこれからも、一緒にいれるはずだよな。
「蛍」
「はい」
視線はくれない、声だけの返事。呆れて寂しくて、苦笑が溢れる。そういえば、蛍と一緒にいるのは季節が一周しても飽きなかった。煩わしく思うことも、なかった。蛍は俺に真っ直ぐ接してくれる。御影コーポレーションの御曹司だとか、誰もがこぞってたかる肩書きには目もくれない。ただ俺のすることなすことを、素直に称えて、拍手をくれて、激励する。くすぐったいくらいに。俺が蛍の分からないことを教えれば、嬉しそうにして全部吸収する。蛍が側にいると、俺はこのままでもいいと思える。退屈も噛み殺せる。ビジネス書のページが進まなくなった。蛍のこと、眺めていたから。
「なんでもねぇ」
「あとこの子描いたら、終わりにするので……」
蛍は真剣な眼差しで、昆虫を見つめる。その情熱を理解してやれればと思うが、どうしたって昆虫は可愛くは見えない。でも、一生懸命な蛍は可愛いと思う。理解は出来ないけど、精一杯応援する。いつか君の夢が、世界中を驚かすことを夢に見る。それは楽しみ。つまらない毎日の中、呼吸を繰り返すよすが。
「んー〜……」
蛍が伸びをする。終わったらしい。腰掛けていたベッドから立ち上がって、頭を撫でてやる。蛍が俺の方に身体を預けるので、そのまま抱き上げて膝に乗せた。蛍は大きくあくびをする。随分集中してたから疲れたんだろう。
「甘いもん、食うか?持ってきたんだ」
「いいんですか?いつもありがとうございます」
もちもちとしたほっぺを摘んで、揉んで。にゃにするんですか、とふわふわ笑いながら言っている。蛍が笑ってると落ち着く。
「蛍は特別だぞ」
「へへー嬉しいです」
鞄からいいとこの焼き菓子を取り出して、蛍に封を開けて渡す。蛍は喜んで頬張った。
「こらこら、溢すなよ」
菓子のカスをティシュで拾って、ついでに口の周りも食べカスだらけだから拭いて。ゴミをゴミ箱に放る。眠そうな蛍をギュッと抱き寄せて、ぽんぽんと肩を叩いてやる。そのうちに、寝息が聞こえてくる。俺も眠たくなってきた。狭い蛍のベッドの上に、丸まるようにして横になる。蛍は腕の中。西日が窓に差している。小一時間くらいなら、いいだろ。土と草の匂いがこもる部屋で、互いの体温を分かち合うようにして眠る。新しい生活が訪れるのが、少し不安なことは忘れて。きっと変わらないさ。変わらずこれからも、一緒にいれるはずだよな。