プロトタイプ/蛹
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俺、凪誠士郎はサッカーを始める。らしい。めんどくさいけど、お金持ちの息子の人がどうしてもと言うし、なにもしなくていいと言うので。とりあえず、サッカー部に入部。練習しなくていいから見てろと言うので、端っこでゲームしながら時たま眺めていた。日差しが心地いいのでそれらも全部やめて仰向けになり、目を閉じた。
「凪、凪!」
玲王の呼ぶ声がするので、目を開ける。小さな女の子いる?身体を起こして体育座りになる。玲王が俺の横に身体を向けるようにして胡座をかき、何故か女の子をその上に座らせる。なんだろ、彼女自慢でも始まるの?
「こいつ、蛍。俺の妹」
「虹富蛍です、よろしくお願いします!」
「待って、苗字違うの?ドロ沼ですか?」
「あー違う違う。ものの例え。血は繋がってねぇよ」
紛らわしいな……コイツなんか表現紛らわしかったり妙に懐っこくて距離近かったりなんだよな。まぁ別にいいんだけど。玲王といると本当になにもしなくてよくてダラダラ出来そうだし。
「……蛍、いくつ?」
「15歳です、まだ中学生です」
「そうなんだ」
もっと子供かと思った。めちゃくちゃ小さくないか?俺がデカいのか?玲王の胡座の上、特になにも気にしないようでちょこんと膝を抱えて。この季節に黒タイツは暑くないんだろうか。玲王は蛍の髪を指ですいて、編み込みなんかしてやってる。どこからヘアピンとか出てくるんだか。2人の独特な空気に飲まれていると、遠くで玲王を呼ぶ声がする。
「呼ばれてるよ」
「分かってる……っし、可愛くなった」
玲王は結い終わった蛍の頭をひと撫でして、丁寧に蛍の身体を持ち上げて胡座から下ろした。猫かなんかだと思っているんだろうか。
「じゃ、2人とも仲良くしてろよ!」
「はーい」
「??」
仲良くしてろよ?なんで?置いてきぼりのまま横を確認すると、蛍は俺と並ぶように膝を抱えていた。この場を離れる気配はない。えーと。俺はこの子をどうしたらいいの。
「蛍?」
「はい!」
「どうしてここにいるの?」
「玲王先輩に勉強を見てもらう約束があるので」
御曹司って忙しいんだな。でもそれならあと1時間以上は待つんじゃないか?
「ここで待ってるの、退屈じゃないの?俺はゲームとかまぁ、してるけど」
蛍の相手は正直めんどくさいけど。
「別に退屈なことはないですよ?ここ芝生だし、飽きたら昆虫探しますし」
「なんて?」
「昆虫。虫さんを探します!蟻さんくらいならどこでも見つけられますし、この季節なら蝶も飛んでるかも」
思わず聞き返したが、そのあとも予想だにしない言葉が続いた。
「……虫が、好き?」
「はい、大好きです!」
気後れするほどの満面の笑みだった。うーん、放っておいてもよさそう?蛍は特にこちらを詮索してくることもなく、本当に地面を見つめて虫を探し出した。その様子は今まで見てきたどんな人間よりもワクワクとしていて、こちらがくすぐったく思うくらいだった。子供みたい。可愛らしくて、無碍に出来ないような。蛍がなにも話さなくなったので、俺はゲームを再開した。ゴールネットにボールが吸い込まれて、擦れる音がする。あたりが暗くなるまで、その時間は続いた。
「暗い中でゲームすると、目が悪くなりますよ?」
虫が上手く観察出来なくなったようで、蛍はこちらに意識を向けてきた。
「別に、悪くなるまではゲームをするよ……」
「ふむ。興味深い」
「は?」
「凪先輩の生態には、興味があります。玲王先輩に聞く限り、お二人は正反対な性格に見えますので」
うわ、めんどくさい。めんどくさいタイプの女だよこれ。そうか、火が着くと観察癖があるんだおそらく。なるべく興味を惹かないようにしたいな……。
「めんどくさいから、質問には答えないよ。勝手に観察してて」
「ふむ……」
あー、勝手に観察しろとは言ったけど、そんな穴開くほど見つめられても。めんどくさいなぁもう。
「……気が散るんですけど」
「……あ!ごめんなさい!ゲーム大事なんですよね邪魔してすみません」
まぁ別にゲームのことはどうでもいいんだけども……。悪い子じゃない、それは分かる。暗くなるまでの時間はわりと穏やかで嫌いじゃなかった。けど、ちょっとめんどくさい。飛び抜けてしまった方の真面目。世の中で博士だとか呼ばれる人間の卵。変人。そんな印象だ。
「わりぃ蛍、遅くなった!いい子してたか?」
「悪い子だったこと、ありますか?」
「ねぇな!お待たせ」
玲王が蛍を迎えにきて、自然な動きで抱き上げる。世の中のお兄ちゃんは2コ下の妹をその歳になるまで抱っこしないと思うんだけど。まぁ、蛍は小学生と言われても驚かないくらいチビだけどさ。
「このあとファミレスで勉強会やるけど、凪も来るか?」
蛍の顔を見る。どっちでもいいよーって顔。玲王は来て欲しそう。まぁどうせ玲王奢ってくれるしな。行ってもいいか。
「じゃあ行くー」
玲王は満足気に笑う。笑って、大事そうに蛍の手を握っていた。
「凪、凪!」
玲王の呼ぶ声がするので、目を開ける。小さな女の子いる?身体を起こして体育座りになる。玲王が俺の横に身体を向けるようにして胡座をかき、何故か女の子をその上に座らせる。なんだろ、彼女自慢でも始まるの?
「こいつ、蛍。俺の妹」
「虹富蛍です、よろしくお願いします!」
「待って、苗字違うの?ドロ沼ですか?」
「あー違う違う。ものの例え。血は繋がってねぇよ」
紛らわしいな……コイツなんか表現紛らわしかったり妙に懐っこくて距離近かったりなんだよな。まぁ別にいいんだけど。玲王といると本当になにもしなくてよくてダラダラ出来そうだし。
「……蛍、いくつ?」
「15歳です、まだ中学生です」
「そうなんだ」
もっと子供かと思った。めちゃくちゃ小さくないか?俺がデカいのか?玲王の胡座の上、特になにも気にしないようでちょこんと膝を抱えて。この季節に黒タイツは暑くないんだろうか。玲王は蛍の髪を指ですいて、編み込みなんかしてやってる。どこからヘアピンとか出てくるんだか。2人の独特な空気に飲まれていると、遠くで玲王を呼ぶ声がする。
「呼ばれてるよ」
「分かってる……っし、可愛くなった」
玲王は結い終わった蛍の頭をひと撫でして、丁寧に蛍の身体を持ち上げて胡座から下ろした。猫かなんかだと思っているんだろうか。
「じゃ、2人とも仲良くしてろよ!」
「はーい」
「??」
仲良くしてろよ?なんで?置いてきぼりのまま横を確認すると、蛍は俺と並ぶように膝を抱えていた。この場を離れる気配はない。えーと。俺はこの子をどうしたらいいの。
「蛍?」
「はい!」
「どうしてここにいるの?」
「玲王先輩に勉強を見てもらう約束があるので」
御曹司って忙しいんだな。でもそれならあと1時間以上は待つんじゃないか?
「ここで待ってるの、退屈じゃないの?俺はゲームとかまぁ、してるけど」
蛍の相手は正直めんどくさいけど。
「別に退屈なことはないですよ?ここ芝生だし、飽きたら昆虫探しますし」
「なんて?」
「昆虫。虫さんを探します!蟻さんくらいならどこでも見つけられますし、この季節なら蝶も飛んでるかも」
思わず聞き返したが、そのあとも予想だにしない言葉が続いた。
「……虫が、好き?」
「はい、大好きです!」
気後れするほどの満面の笑みだった。うーん、放っておいてもよさそう?蛍は特にこちらを詮索してくることもなく、本当に地面を見つめて虫を探し出した。その様子は今まで見てきたどんな人間よりもワクワクとしていて、こちらがくすぐったく思うくらいだった。子供みたい。可愛らしくて、無碍に出来ないような。蛍がなにも話さなくなったので、俺はゲームを再開した。ゴールネットにボールが吸い込まれて、擦れる音がする。あたりが暗くなるまで、その時間は続いた。
「暗い中でゲームすると、目が悪くなりますよ?」
虫が上手く観察出来なくなったようで、蛍はこちらに意識を向けてきた。
「別に、悪くなるまではゲームをするよ……」
「ふむ。興味深い」
「は?」
「凪先輩の生態には、興味があります。玲王先輩に聞く限り、お二人は正反対な性格に見えますので」
うわ、めんどくさい。めんどくさいタイプの女だよこれ。そうか、火が着くと観察癖があるんだおそらく。なるべく興味を惹かないようにしたいな……。
「めんどくさいから、質問には答えないよ。勝手に観察してて」
「ふむ……」
あー、勝手に観察しろとは言ったけど、そんな穴開くほど見つめられても。めんどくさいなぁもう。
「……気が散るんですけど」
「……あ!ごめんなさい!ゲーム大事なんですよね邪魔してすみません」
まぁ別にゲームのことはどうでもいいんだけども……。悪い子じゃない、それは分かる。暗くなるまでの時間はわりと穏やかで嫌いじゃなかった。けど、ちょっとめんどくさい。飛び抜けてしまった方の真面目。世の中で博士だとか呼ばれる人間の卵。変人。そんな印象だ。
「わりぃ蛍、遅くなった!いい子してたか?」
「悪い子だったこと、ありますか?」
「ねぇな!お待たせ」
玲王が蛍を迎えにきて、自然な動きで抱き上げる。世の中のお兄ちゃんは2コ下の妹をその歳になるまで抱っこしないと思うんだけど。まぁ、蛍は小学生と言われても驚かないくらいチビだけどさ。
「このあとファミレスで勉強会やるけど、凪も来るか?」
蛍の顔を見る。どっちでもいいよーって顔。玲王は来て欲しそう。まぁどうせ玲王奢ってくれるしな。行ってもいいか。
「じゃあ行くー」
玲王は満足気に笑う。笑って、大事そうに蛍の手を握っていた。