プロトタイプ/落書き
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
『生まれる国を間違えただけ』
冴くんのインタビュー記事に、そう答えたと書かれているのを見つけた。柄にもなくショックを受けた。自分は、自分が思っているよりも日本が好きだったようだ。そして、私が糸師冴を見つけられたのは同じ日本人だったから。遠い国、知らない土地の子供の挑戦だったなら、多分応援はしていない。日本を背負って欲しい、とは思わないが、日本に生まれたことは誇って欲しいと思う。勝手なことだけれど。
「瑠璃さん、塩こぶ茶飲む?」
「いただくわ」
冴くんは家に帰ると、夕飯までの休憩に塩こぶ茶を飲む。毎日、飽きもせず。私の分も必ず淹れてくれる。毎日飲んでいるので、なんとなく私も好きになる。冴くんはソファーに座る私の隣にやってきて。私の顔を眺めながら、塩こぶ茶を飲む。じーっとずっと見てくるので、初めは戸惑ったが慣れた。
「0に戻ってる?」
「うん」
冴くんが塩こぶ茶を飲むのは、0の自分に戻るためなんだそうだ。0の自分。それってなんだろう。私を0にしたらなにが残るんだろう。たまに冴くんは、興味深くて難しいことを言う。
「冴くん」
「うん」
「インタビューの記事、読んだんだけど」
「くだらないことしか書いてないだろ」
「生まれた国を間違えただけ、ってちょっと悲しかったわ」
素直に感想を伝えると、ゆっくりまばたきをして。眉を下げて、首を傾げた。
「なんで?」
「日本に生まれてなかったら、冴くんと会えてないわ」
冴くんはいっそうまばたきを繰り返して。あーとぼんやりとした声を出す。
「そうかな。俺、どこで生まれたとしても瑠璃さんのことは見つける自信あるよ」
「最初に会うきっかけ作ったのはジローさんだし。見つけたのは私の方が先だわ?」
事実を述べると、冴くんはむっと眉を寄せて。ぐいっと塩こぶ茶を飲み干した。
「ちゃんと見つけるって」
「どうかしらね?きっとサッカーが楽しくて、私のことなんて気にも留めないわよ」
「…………もしもの話をしても、仕方ないだろ」
冴くんは不貞腐れて、私にもたれかかってきた。私は飲み残した塩こぶ茶を、もういらないので冴くんにあげる。冴くんは私の分の塩こぶ茶を飲みながら、深く呼吸をした。
「…………生まれた国は間違えたけど、瑠璃さんに会えたから悪くない」
「そう」
「ごめんなさい、悲しい思いをさせて」
冴くんが身体を起こして、私の頬に触れる。指の背でゆっくりと撫でる。眠たげな瞳はペリドットのようで綺麗。見つめ返していたら、まぶたを閉じて顔を寄せるので人差し指で制した。
「キスで誤魔化さないで」
「誤魔化してないだろ、ちゃんと謝ったし」
くすくすと笑えば、冴くんはため息を吐いて私の髪に指を通した。
「また俺で遊びやがって」
「ごめんなさいね?可愛いから」
冴くんはむーっと私のことを睨む。猛獣の子供が虚勢を張っているみたい。冴くんの頭を撫でて、額にキスを落とした。冴くんは額を手で抑える。また文句ありげな視線を向けられる。怖くないわ。
「瑠璃さんのバカ。イジワル」
「先に怒らせたのは冴くんだわ」
「ごめんってば。もう言わないから」
冴くんは私を抱き寄せて、宥めるように背中を撫でた。冴くんの匂いがする。いつからか、この匂いにとても安らぎを覚えるようになってしまった。0に戻るって、こういうことかしら。
「瑠璃さんに出逢えて、本当によかった。これは本音だから」
「うん、ありがとう」
冴くんが唇を寄せる。今度は拒まなかった。優しいキスの雨。この時間を、いつまで続けよう。別れが来ても、出逢えてよかったと言えるかな。綺麗な思い出になって、忘れずにいれるかしら。
冴くんのインタビュー記事に、そう答えたと書かれているのを見つけた。柄にもなくショックを受けた。自分は、自分が思っているよりも日本が好きだったようだ。そして、私が糸師冴を見つけられたのは同じ日本人だったから。遠い国、知らない土地の子供の挑戦だったなら、多分応援はしていない。日本を背負って欲しい、とは思わないが、日本に生まれたことは誇って欲しいと思う。勝手なことだけれど。
「瑠璃さん、塩こぶ茶飲む?」
「いただくわ」
冴くんは家に帰ると、夕飯までの休憩に塩こぶ茶を飲む。毎日、飽きもせず。私の分も必ず淹れてくれる。毎日飲んでいるので、なんとなく私も好きになる。冴くんはソファーに座る私の隣にやってきて。私の顔を眺めながら、塩こぶ茶を飲む。じーっとずっと見てくるので、初めは戸惑ったが慣れた。
「0に戻ってる?」
「うん」
冴くんが塩こぶ茶を飲むのは、0の自分に戻るためなんだそうだ。0の自分。それってなんだろう。私を0にしたらなにが残るんだろう。たまに冴くんは、興味深くて難しいことを言う。
「冴くん」
「うん」
「インタビューの記事、読んだんだけど」
「くだらないことしか書いてないだろ」
「生まれた国を間違えただけ、ってちょっと悲しかったわ」
素直に感想を伝えると、ゆっくりまばたきをして。眉を下げて、首を傾げた。
「なんで?」
「日本に生まれてなかったら、冴くんと会えてないわ」
冴くんはいっそうまばたきを繰り返して。あーとぼんやりとした声を出す。
「そうかな。俺、どこで生まれたとしても瑠璃さんのことは見つける自信あるよ」
「最初に会うきっかけ作ったのはジローさんだし。見つけたのは私の方が先だわ?」
事実を述べると、冴くんはむっと眉を寄せて。ぐいっと塩こぶ茶を飲み干した。
「ちゃんと見つけるって」
「どうかしらね?きっとサッカーが楽しくて、私のことなんて気にも留めないわよ」
「…………もしもの話をしても、仕方ないだろ」
冴くんは不貞腐れて、私にもたれかかってきた。私は飲み残した塩こぶ茶を、もういらないので冴くんにあげる。冴くんは私の分の塩こぶ茶を飲みながら、深く呼吸をした。
「…………生まれた国は間違えたけど、瑠璃さんに会えたから悪くない」
「そう」
「ごめんなさい、悲しい思いをさせて」
冴くんが身体を起こして、私の頬に触れる。指の背でゆっくりと撫でる。眠たげな瞳はペリドットのようで綺麗。見つめ返していたら、まぶたを閉じて顔を寄せるので人差し指で制した。
「キスで誤魔化さないで」
「誤魔化してないだろ、ちゃんと謝ったし」
くすくすと笑えば、冴くんはため息を吐いて私の髪に指を通した。
「また俺で遊びやがって」
「ごめんなさいね?可愛いから」
冴くんはむーっと私のことを睨む。猛獣の子供が虚勢を張っているみたい。冴くんの頭を撫でて、額にキスを落とした。冴くんは額を手で抑える。また文句ありげな視線を向けられる。怖くないわ。
「瑠璃さんのバカ。イジワル」
「先に怒らせたのは冴くんだわ」
「ごめんってば。もう言わないから」
冴くんは私を抱き寄せて、宥めるように背中を撫でた。冴くんの匂いがする。いつからか、この匂いにとても安らぎを覚えるようになってしまった。0に戻るって、こういうことかしら。
「瑠璃さんに出逢えて、本当によかった。これは本音だから」
「うん、ありがとう」
冴くんが唇を寄せる。今度は拒まなかった。優しいキスの雨。この時間を、いつまで続けよう。別れが来ても、出逢えてよかったと言えるかな。綺麗な思い出になって、忘れずにいれるかしら。