プロトタイプ/落書き
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「瑠璃さん、小さい箱並べてなにしてんの?」
冴くんが興味深そうに私の元へ寄ってくる。私はリビングの床一面に、トランプカードの納まる箱を並べていた。つい集めてしまうもののひとつ。トランプは表にも裏にも絵が描いてある。フェイスが一枚一枚凝っているもの、バックが綺麗なデザインのもの。トランプは54枚にたくさんの絵が詰まっている。
「トランプ、昔から好きなのよ」
「遊ぶのにそんなに必要なのか?」
「ううん、集めてるだけ。たまに広げて眺めるの」
「……楽しい?」
「絵を楽しんでるのよ。手の中に絵画が収まるような感覚がして、好きなの」
「そうなんだ。確かに全部普通のトランプじゃないな」
「そ。いつかね、自分の作ったトランプがお店に並ぶのが夢よ」
私がトランプをなんとなしにシャッフルするのを、冴くんは見つめている。そのうち、私の隣にあぐらをかいて座る。トランプの箱の数を数えて、ほーと感嘆の声をあげる。
「いい夢だな」
「夢にいいも悪いもないわよ」
「そうか?」
冴くんが私の手元を熱心に見るので、見たいものがあるなら触っていいよと声をかける。冴くんは遠慮がちにトランプの箱を丁寧に開けて、中を確認する。しばらく、トランプの鑑賞会をしていた。
「せっかくだから、遊ぶ?」
いつもは1人遊びだとか占いにしか使わない。誰かと遊ぶのも、たまには悪くないだろう。冴くんに好きなトランプを選んでもらって、シャッフルする。
「なにする?」
「…………なにがある?」
「2人ならババ抜きとか、スピードとか?」
「うん、どっちもルール知らない」
私が驚いて冴くんの顔を見るのを、冴くんは寂しく申し訳なさそうな顔で返した。本当に、サッカー以外のことは知らないのだ。私は冴くんの頭を撫でた、大丈夫だよを込めて。冴くんは少し安心した顔で、私の手に頭を委ねている。
「簡単なのは、ババ抜きかな?教えてあげる」
私の説明を冴くんは熱心に聞いて、分かったと頷いた。ジョーカーを1枚抜いて、53枚のカードを配る。
「俺のが1枚多い」
「奇数だからね、仕方ないね。でもジョーカーは私の方かもしれないし」
「そっか」
絵を合わせていく。冴くんは初めてのことなので、時間がかかっている。サッカー以外のことに一生懸命な貴方は、私しか知らないのだろうか。あどけなくて純真で、どこからどう見ても子供みたいで。可愛らしい。私だけ、と自惚れたくなくて。でも他の誰かの前でそんな姿を晒す貴方を、想像出来なくて。
「で、どうするの?」
「1枚1枚お互いの手札を引いて、合わせていくのよ」
「うん」
「最後にジョーカーを持っていた方が負けね」
私から冴くんの手札を引く。いきなりジョーカー。冴くんの顔を見れば、にんまりと笑う。
「俺なにもしてないよ」
「運の強いひと」
そこから、駆け引きして一度はジョーカーが冴くんの元に返ったが。冴くんは特になにもせずに手札を持っているだけなのに、私は何故だかジョーカーを引いてしまう。結局、最後までジョーカーは私の手元にあった。ジョーカーに目を落とす、嘲笑うような横顔。
「俺の勝ち?」
「そうね。おめでとう」
冴くんは子供みたいに嬉しそう。プレイを思い返す。冴くんからババを引いて、私の元に最後に残った。やっぱり、私にはジョーカーがお似合いか。ジョーカーもきっと、私を愛しているものね。
「もう一回やろ」
冴くんが私からジョーカーを引いて、トランプの山に放り込んだ。呆気に取られた。冴くんは不思議そう。
「もう一回は、嫌?」
「ううん、やりましょ」
混ざった山を整えて、シャッフルをする。シャッフルも、冴くんに一から教える。冴くんが楽しそうなら、嬉しそうなら、それでいい。そう一途に思えない自分が、どこまでも嫌いよ。誰かの決めた幸せの定理に、身を置くのが嫌だったから。自分はジョーカーとして残る人間だって思っていたの。貴方は私からジョーカーすら引き剥がすのかしら。なにも残らない私を、それでも愛してくれるのかしら。
冴くんが興味深そうに私の元へ寄ってくる。私はリビングの床一面に、トランプカードの納まる箱を並べていた。つい集めてしまうもののひとつ。トランプは表にも裏にも絵が描いてある。フェイスが一枚一枚凝っているもの、バックが綺麗なデザインのもの。トランプは54枚にたくさんの絵が詰まっている。
「トランプ、昔から好きなのよ」
「遊ぶのにそんなに必要なのか?」
「ううん、集めてるだけ。たまに広げて眺めるの」
「……楽しい?」
「絵を楽しんでるのよ。手の中に絵画が収まるような感覚がして、好きなの」
「そうなんだ。確かに全部普通のトランプじゃないな」
「そ。いつかね、自分の作ったトランプがお店に並ぶのが夢よ」
私がトランプをなんとなしにシャッフルするのを、冴くんは見つめている。そのうち、私の隣にあぐらをかいて座る。トランプの箱の数を数えて、ほーと感嘆の声をあげる。
「いい夢だな」
「夢にいいも悪いもないわよ」
「そうか?」
冴くんが私の手元を熱心に見るので、見たいものがあるなら触っていいよと声をかける。冴くんは遠慮がちにトランプの箱を丁寧に開けて、中を確認する。しばらく、トランプの鑑賞会をしていた。
「せっかくだから、遊ぶ?」
いつもは1人遊びだとか占いにしか使わない。誰かと遊ぶのも、たまには悪くないだろう。冴くんに好きなトランプを選んでもらって、シャッフルする。
「なにする?」
「…………なにがある?」
「2人ならババ抜きとか、スピードとか?」
「うん、どっちもルール知らない」
私が驚いて冴くんの顔を見るのを、冴くんは寂しく申し訳なさそうな顔で返した。本当に、サッカー以外のことは知らないのだ。私は冴くんの頭を撫でた、大丈夫だよを込めて。冴くんは少し安心した顔で、私の手に頭を委ねている。
「簡単なのは、ババ抜きかな?教えてあげる」
私の説明を冴くんは熱心に聞いて、分かったと頷いた。ジョーカーを1枚抜いて、53枚のカードを配る。
「俺のが1枚多い」
「奇数だからね、仕方ないね。でもジョーカーは私の方かもしれないし」
「そっか」
絵を合わせていく。冴くんは初めてのことなので、時間がかかっている。サッカー以外のことに一生懸命な貴方は、私しか知らないのだろうか。あどけなくて純真で、どこからどう見ても子供みたいで。可愛らしい。私だけ、と自惚れたくなくて。でも他の誰かの前でそんな姿を晒す貴方を、想像出来なくて。
「で、どうするの?」
「1枚1枚お互いの手札を引いて、合わせていくのよ」
「うん」
「最後にジョーカーを持っていた方が負けね」
私から冴くんの手札を引く。いきなりジョーカー。冴くんの顔を見れば、にんまりと笑う。
「俺なにもしてないよ」
「運の強いひと」
そこから、駆け引きして一度はジョーカーが冴くんの元に返ったが。冴くんは特になにもせずに手札を持っているだけなのに、私は何故だかジョーカーを引いてしまう。結局、最後までジョーカーは私の手元にあった。ジョーカーに目を落とす、嘲笑うような横顔。
「俺の勝ち?」
「そうね。おめでとう」
冴くんは子供みたいに嬉しそう。プレイを思い返す。冴くんからババを引いて、私の元に最後に残った。やっぱり、私にはジョーカーがお似合いか。ジョーカーもきっと、私を愛しているものね。
「もう一回やろ」
冴くんが私からジョーカーを引いて、トランプの山に放り込んだ。呆気に取られた。冴くんは不思議そう。
「もう一回は、嫌?」
「ううん、やりましょ」
混ざった山を整えて、シャッフルをする。シャッフルも、冴くんに一から教える。冴くんが楽しそうなら、嬉しそうなら、それでいい。そう一途に思えない自分が、どこまでも嫌いよ。誰かの決めた幸せの定理に、身を置くのが嫌だったから。自分はジョーカーとして残る人間だって思っていたの。貴方は私からジョーカーすら引き剥がすのかしら。なにも残らない私を、それでも愛してくれるのかしら。