プロトタイプ/落書き
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「ふたりきりでどこかへ逃げるなら、山?海?」
叶いもしない、望みもしない仮定を投げる。冴くんはパチクリまばたきして、あーと気の抜けた声を出す。サッカー以外のことは、わりとぼんやりとしている。強い言葉も燃やす闘志もない。チルの似合う人。知り得るとは思わなかった。コート上の彼を描き起こすだけで満足だった。サッカーをしている彼は鮮やかで美しく、カッコいい。等身大の彼を知ったら、なおのこと強く輝いて見える。ハマっていく、好きになっていく。だからね、逃げ出したくなるのよ。
「海のが好きだけど、俺逃げたくないな」
冴くんがはっきりとそう答えることに安心する。どこかへ私と逃げる彼など、げんなりしちゃう。君とならどこへでも、って紳士で情熱的な男がタイプと思ってたのだけど。好きなタイプと好きになる人は、案外違うものだ。
「あら残念。一緒に逃げてくれないのね?」
「瑠璃さんが逃げずに俺の側から離れなければいいじゃん」
冴くんは淡々と、計算結果を答えるみたいに言う。じーっとしばらく見つめ合う。私が微笑んで首を傾げれば、照れくさそうに視線を落とす。いつまで、こんな初心でいてくれるかしら。
「……瑠璃さんが逃げたら、探しには行くと思う」
「いつまで」
「見つかるまで」
冴くんが声のトーンを落として、真剣さが増した。ピリッとした空気にドキドキする。心地のよい刺激、緊張感。命綱を握られているような瞬間こそ、恋の醍醐味だ。
「瑠璃さんがどこへ逃げたって、必ず捕まえるよ」
「怖いお巡りさんね」
「……瑠璃さんが逃げたくなるようなことは、俺が全部壊す」
サッカーみたいに上手くいくかしらね?サッカー以外のこと、分からないお子様のくせに。大げさな強がりを言うのが証拠でしょ。でもね、信じたくなる私がいるのも本当よ。青臭い理想に、付き合ってあげてもいいかな。そんなこと思っちゃうのも、本音。
「自分の壁くらい、自分で壊すわよ」
これだって本音。貴方がいなくちゃなにも出来ない自分になど、興味はない。私は1人で生きていきたいの。1人で生きて、ろくでもない母親になるのだ。それは変えられないから。冴くんにだって、変えられないものがあるでしょう。一度交差しても、通り過ぎたらもう交わらないわ。人生なんて、そんなもの。
「……瑠璃さん、寂しそう」
「節穴の目だこと」
「誤魔化すなよ。嘘吐きは嫌いだ」
いつもの意趣返しをされて、少し怯む。冴くんは、真っ直ぐ冴えた瞳で私を射抜いていた。逃げられなかった。冴くんから目を離せなくなって。冴くんが近寄ってきて、私の顔の横に手を置く。恋の始まる角度だ。とっくに走り出しているけれど。
「瑠璃さんは、ずっと俺の隣にいて」
「束縛は嫌」
「束縛じゃない。瑠璃さんが望んでそうするなら」
冴くんのエメラルドの瞳が、祈るように揺れた。
「さあ、どうかしらね」
叶えたいのに、素直にはなれずに。それでも冴くんは、私の隣を離れようとしなかった。
叶いもしない、望みもしない仮定を投げる。冴くんはパチクリまばたきして、あーと気の抜けた声を出す。サッカー以外のことは、わりとぼんやりとしている。強い言葉も燃やす闘志もない。チルの似合う人。知り得るとは思わなかった。コート上の彼を描き起こすだけで満足だった。サッカーをしている彼は鮮やかで美しく、カッコいい。等身大の彼を知ったら、なおのこと強く輝いて見える。ハマっていく、好きになっていく。だからね、逃げ出したくなるのよ。
「海のが好きだけど、俺逃げたくないな」
冴くんがはっきりとそう答えることに安心する。どこかへ私と逃げる彼など、げんなりしちゃう。君とならどこへでも、って紳士で情熱的な男がタイプと思ってたのだけど。好きなタイプと好きになる人は、案外違うものだ。
「あら残念。一緒に逃げてくれないのね?」
「瑠璃さんが逃げずに俺の側から離れなければいいじゃん」
冴くんは淡々と、計算結果を答えるみたいに言う。じーっとしばらく見つめ合う。私が微笑んで首を傾げれば、照れくさそうに視線を落とす。いつまで、こんな初心でいてくれるかしら。
「……瑠璃さんが逃げたら、探しには行くと思う」
「いつまで」
「見つかるまで」
冴くんが声のトーンを落として、真剣さが増した。ピリッとした空気にドキドキする。心地のよい刺激、緊張感。命綱を握られているような瞬間こそ、恋の醍醐味だ。
「瑠璃さんがどこへ逃げたって、必ず捕まえるよ」
「怖いお巡りさんね」
「……瑠璃さんが逃げたくなるようなことは、俺が全部壊す」
サッカーみたいに上手くいくかしらね?サッカー以外のこと、分からないお子様のくせに。大げさな強がりを言うのが証拠でしょ。でもね、信じたくなる私がいるのも本当よ。青臭い理想に、付き合ってあげてもいいかな。そんなこと思っちゃうのも、本音。
「自分の壁くらい、自分で壊すわよ」
これだって本音。貴方がいなくちゃなにも出来ない自分になど、興味はない。私は1人で生きていきたいの。1人で生きて、ろくでもない母親になるのだ。それは変えられないから。冴くんにだって、変えられないものがあるでしょう。一度交差しても、通り過ぎたらもう交わらないわ。人生なんて、そんなもの。
「……瑠璃さん、寂しそう」
「節穴の目だこと」
「誤魔化すなよ。嘘吐きは嫌いだ」
いつもの意趣返しをされて、少し怯む。冴くんは、真っ直ぐ冴えた瞳で私を射抜いていた。逃げられなかった。冴くんから目を離せなくなって。冴くんが近寄ってきて、私の顔の横に手を置く。恋の始まる角度だ。とっくに走り出しているけれど。
「瑠璃さんは、ずっと俺の隣にいて」
「束縛は嫌」
「束縛じゃない。瑠璃さんが望んでそうするなら」
冴くんのエメラルドの瞳が、祈るように揺れた。
「さあ、どうかしらね」
叶えたいのに、素直にはなれずに。それでも冴くんは、私の隣を離れようとしなかった。